【短編エッセイ】 紙魚の海

糺ノ杜 胡瓜堂

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第二十七話 「鍛冶屋清八の事 ~タイムリープしてきて東京五輪に出て欲しい逸材!」

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 根岸鎮衛著「耳嚢」 巻之六


 「鍛冶屋清八が事」より

 泉州(今の大阪府南部)境の者で、紀州家より、どういう理由か知らないが二人扶持(一人扶持は一日五合分の米の給与)を頂いている男がいるという。

 その理由を聞くと、特に紀州家の御用のお勤めなどはしていないが、古今例がないほど驚異的な健脚で、堺から江戸へ三日で到着できるという。
 また、堺から近江の彦根まで三十六里(一里は約4km=144km)あるのを一昼夜で往復出来るとのことだ。

 ある時、彦根の城下から堺に買い出しに来ていた者が、堺の町で急病で亡くなってしまった。

 「はやく家族に知らせないと」

 周りの者が話していると、この清八が、

 「今夜中に私が家族のところに知らせに行きましょう」

 ・・・と引き受けた。

 飛脚賃として五両渡したのを受け取り、日の暮れかかった時分だったので、夜食などをとってゆっくりと準備を始めた清八、そのノンビリとした様子に、

 「・・・少しでも早く出発してください」

 と周りの者が催促するが、清八は笑って、

 「明日には帰ってきて皆さんにご一報いたしますよ、出発を急ぐことはありません・・・」

 そう言って夜になって堺を出発したが、翌日に彦根に着いて客死の事を家族に連絡し、その日の暮れ前には堺に帰ってきたという・・・・。

 文化元(1804)年子の年には五十二歳で、未だに存命だということだ。


 もの凄いアスリートです!

 鍛冶屋清八というからには、普段は鍛冶屋さんなのでしょうが、電報もメールもLI〇Eもない時代、いざ「事」が起こった時に、すぐに情報を伝える「情報伝達手段」は大変に重要かつ貴重なものでした。

 戦争などの場合は、この「情報戦」が勝敗の鍵を握る事も珍しくありません、これは現代でも変わりません。

 紀州家もいざという時のために、この清八さんみたいなアスリートと「契約」してお給料を払っていたということですね(笑)
 
 元々、「マラソン」自体も、古代ギリシアのポリス(都市国家)、アテナイ(アテネ)が「マラトン」半島でペルシア軍と戦った際、「42.195km」の道のりを完全武装で走り切って本国アテナイに勝利の報をもたらしたあと息を引き取った伝令の逸話が元になっている競技です。

 今年は東京五輪・・・コロナ騒動でどうなるか微妙ですが・・・・、この清八さんみたいな人がタイムリープしてきて五輪に出場してくれたら面白いのに、と思ったりします。

 



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