57 / 100
第五十七話 「精心にて家業盛んなる事」
しおりを挟む根岸鎮衛著「耳嚢」 巻之三
「精心にて家業盛んなる事」より
江戸は四谷の松屋何某という刀の拵え(外装)を商売とする者があった。
彼の生い立ちを尋ねると、昔は武家奉公等をしていたが、どういう理由か町人となって、四谷の道端で古包丁、古小刀、その他古道具を筵の上に並べて商売をしていたという。
しかし元来器用な性分であるので、刀や脇差などの束を巻いたり、刀を研いだりすることを習い覚え、四、五年も経つと九尺店の拵え屋の店を出すまでになった。
ある時ふと思いついて、五匁の束巻代を三匁に、十匁の刀の研ぎ代を七匁へと値下げすることにした。
また、近所の武家へ引き札(チラシ)を配るなど熱心に宣伝もしたため、自然と注文が多くなり店は大いに繁盛することになった。
しかし、四谷や糀町の同業者達が大いに怒り「他の店の商売を邪魔している」という理由で奉行所へ訴え訴訟となった。
お奉行から呼び出されて吟味を受けた松屋何某は、
「格安の値段で注文を受けると、定めて荒い仕事、悪い仕上がりなのだろうとお思いでしょうが、出来が悪い、仕上げか粗悪な店にはお武家方からご注文は続きません。私共がこの値段で注文を頂いても随分利益が出るものでございます、理由もなく値段を高くすることはお得意様に損をさせることになります」
松屋何某は続ける。
「たとえ、今この場でお奉行所よりご注文を頂いても、私共はこの価格にて承ります」
それを聞いた町奉行も松屋に理があることと判断し、松屋の勝訴となったので、いよいよ商売に力を入れ、翌春の年始に以前一、二度注文を受けた四百件ほどの武家宅を回り、挨拶と宣伝をするなど営業活動も熱心に行ったため、その後は尾州家の家来からも注文が入るようになった。
そして、ついには尾州侯から直々に拵えを仰せつけられるまでになり、今は「尾州家御用達」の札も掲げ、弟子も四、五人抱える大きな拵え屋となったという。
商売の基本と言いましょうか、そう言えば大手百貨店「三越」の前身である、呉服屋の「越後屋」等も、当時としては全く斬新な販売方法である現金売買、定価販売、対面販売を打ち出し大繁盛しました。
また、今ではコンビニ等で当たり前に見られる「フランチャイズ」は、1,800年代にミシンの「シンガー社」が始めたビジネスモデルだとか・・・・。
ネット全盛時代、まだまだ斬新なビジネスモデルが現れる余地は有りそうです。
「yout〇be」なんて、あれが商売になるなんて誰が思ったでしょうか(笑)
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
新しい家族は保護犬きーちゃん
ゆきむらさり
エッセイ・ノンフィクション
〔あらすじ〕📝初めて🐶保護犬ちゃんを迎え入れる我が家。
過去の哀しい実情のせいで人間不信で怯える保護犬きーちゃん。
初日から試行錯誤の日々と保護犬きーちゃんがもたらす至福の日々。
◇
🔶保護犬ちゃん達の過去・現在の実情の記述もあります🐾
🔶日々の些細な出来事を綴っています。現在進行形のお話となります🐾
🔶🐶挿絵画像入りです。
🔶拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇♀️
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる