98 / 100
第九十八話 「善悪二題」新著聞集より
しおりを挟む新著聞集 神谷養勇軒編 寛延二(1749)年より
善「正直弥六郎田地をうく」
南部大膳大夫(盛岡藩領主)殿の家臣の八戸弥六郎の領地に、大変正直な百姓がいた。
この百姓は、「正直」という異名で呼ばれていた。
弥六郎もその二つ名には理由がある事だろうと心に留めて、ある日その男の夫役を免除してやろうと伝えると、かの百姓は、
「大変有難い仰せでございます・・・しかしながら、私が夫役を免除された分を他の百姓が負うことになります。これは他の者達の迷惑となりますので、わたくしは今までどおりで結構でございます」
と、丁寧に辞退してきた。
弥六郎はいよいよ感心し、鷹野に出た際に彼を呼び出してこう言った。
「おまえは大変優しい男だ、これまで耕作していた二十五石の田地は今後おまえの所有物としよう、収穫は全て自分ものとせよ。夫役はおまえの言う通り公のことであるから、今までどおり勤めよ」
悪「不孝の男士死厠尸に至る」
大和の国、高市郡鳥や村に、甚七という親不孝な百姓がいた。
この男は普段から母を邪見に扱っていたが、ある時、畑仕事から帰ると、母がまだ飯の支度を終えずに茶を沸かしていたことに腹を立て、釜の中の茶袋や残りの茶を引き出して便所へ捨ててしまった。
男はこのような悪行を日々続けていたが、ついに熱病に罹り死んでしまった。
人々が葬儀の準備のために男の死骸を安置していると、死骸がいきなり立ち上がって便所へと駆け出してゆく。
人々が驚いて追ってゆくと、死骸は便所の前でうずくまって動かなくなった。
これを元に戻して葬儀を始めると、空は綺麗に晴れ渡っていた。
人々が「このような大悪人の葬儀の日に晴天とは不思議なものだ・・・」と噂し合っていたが、死骸を火葬にしようとした時、一天にわかに掻き曇り、大雨が降り雷鳴が轟いた。
ようやくの事で火葬にして、翌日灰を集めようと火葬場に行くと、真黒な炭となった男が穴の中から立ち上がっていた。
それを見た人々は恐怖に顔をひきつらせた。
その後、死骸の周りに再び薪を大量に積んで燃やし、二日がかりでやっと灰にしたという。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
新しい家族は保護犬きーちゃん
ゆきむらさり
エッセイ・ノンフィクション
〔あらすじ〕📝初めて🐶保護犬ちゃんを迎え入れる我が家。
過去の哀しい実情のせいで人間不信で怯える保護犬きーちゃん。
初日から試行錯誤の日々と保護犬きーちゃんがもたらす至福の日々。
◇
🔶保護犬ちゃん達の過去・現在の実情の記述もあります🐾
🔶日々の些細な出来事を綴っています。現在進行形のお話となります🐾
🔶🐶挿絵画像入りです。
🔶拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇♀️
島猫たちのエピソード2025
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。
石垣島は野良猫がとても多い島。
2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。
「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。
でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。
もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。
本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。
スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる