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第八十五話 「虎の恩返し(?)」
しおりを挟む松浦静山著「甲子夜話続篇」
巻九十四、一八「虎、義心あること」より
私(静山)の家臣に、津島候の縁の者がいる。
その男から聞いた話だ。
朝鮮にある対馬の出張の在番所(和館:日本人居留地)に勤務していた者達がある年の春、行楽のために朝鮮の野山に行って皆で筵を敷いて弁当を広げて歓談していたところ、突然仔犬のような獣が現れたという。
人々はそれが何という獣なのか分らなかったが、ある者が肴を投げ与えると、その獣は喜んで食い始めた。
それを見て皆が次々と弁当を投げ与えた。
一人がふと辺り見ると、一、二町(100~200m)ほど先の小山の上に虎が座っているではないか。
その眼光は星のように鋭くこちらを睨んでいる。
行楽の日本人たちは、初めて気が付いた。
「この仔犬のような獣は虎の子供で、向こうにいるのが父虎なのだろう・・・もし怒らせでもしたら俺達は食われてしまう、はやく逃げよう」
人々は俄かに恐ろしくなり、弁当などもその場に置いて早々に逃げ帰った。
その夜の事である、和館の建物の外で物音が聞こえた・・・どうやら獣のようである。
その物音を聞いて、人々は思った。
「昼間の虎が怒って復讐にやってきたのかもしれない・・・」
皆は慌てて室内にあった武器を取り、あるいは刀を差して警戒していたが、獣の足音はしばらくすると聞こえなくなった。
一人が恐る恐る戸の穴から外を見ると、昼間に野山に捨て置いてきた弁当等を入れていた行李等が丁寧に並べてあり、その傍らには鴨が二羽添えてあった。
人々は不思議に思って論じ合った。
「これは恐らく、昼間の父虎が子供に食い物を与えてくれたことに感謝して、このような事をしたのではないか」
「・・・だとすれば、虎は獰猛ではあるが義心のある獣なのであろう」
この話は最近の出来事だという。
・・・「虎の恩返し」でした。
虎が「義」に生きる生き物だという事は、「タイガーマスク」を見ても分かります!(意味不明)
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