「刀には竜、花は咲かず」~孤独なおっさん武術家と毒舌アイドルの異世界タッグ~

アサバハヤト

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第〇章 刀の巻 プロローグ

0-21 追憶:名前

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 大会が終わった後、覆面格闘家は正体を明かし、実は項新高師父の友人であり、東京の空手道場「翔龍館」の道場主、山岡修二という方だった。山岡先生は、俺の成長を試すために、わざと敵役を演じていたことが分かった。

 驚くことに、師父も試合を見に来ており、準優勝の俺に温かい笑顔を向けた。「項、立派な弟子だな。」——そしたら、山岡先生の声がデカく響いた。「若造、どうだ?わしと一緒に東京に帰って、空手をやってみないか?」

 山岡先生は50代の日本人で、若い頃に沖縄で空手を学び、その後海外で修行を重ね、数々の空手大会で優勝を飾った経歴を持つ。帰国後、彼は東京に翔龍館を設立し、空手の普及と後進の育成に力を注いでいる。彼の道場は、古き良き日本の伝統と、現代の空手技術を融合させた独自のスタイルを築き上げており、多くの弟子が彼の指導を求めて翔龍館に集まってくる。

「お前、彦人って名前か?」——山岡先生は俺をじろじろ見ながら、顎をこすりながら考え込んだ。「いい素質持ってるぜ。強くなる器はある。だがな、実戦であんまり形而上なもんに頼りすぎだ。『大事な人を守る』だの、『負けられねえ理由』だの、そんな曖昧な精神論さ。武人が強いのは強ぇからだ。強さは強さ、それ以外に意味はねえ。実戦で頼れるのは、過去の修練、筋肉の持久力、体力、技術だ。それが勝負の99%、最後の1%が心ってもんだ。」

 俺が黙ってると、山岡先生が続けた。「項の教え方は古すぎる。少林寺出身だからって、詠春拳なんぞ女や子供の護身術を教えてる。あんなもん、お前の才能を腐らせてるだけだ。翔龍館は違う。天下の武を極め、集大成した強者の集まりだ。曖昧な形而上なんざ一切いらねえ。俺と組めよ、彦人。お前ならもっと強くなれる。」

 項師父が鼻で笑った。「山岡、お前さんの言い分はいつも無骨だな。武は力だけじゃねえ。心があってこその技だ。詠春が女や子供のものだと?笑わせるな。強さは使い方次第だ。」

 山岡先生がニヤリと笑った。「優しすぎる!項、お前らしい甘ぇ理屈だ。なら、こいつに名前をやるぜ。『浅羽隼人』だ!どうだ?いいだろ!」——肩を叩かれ、笑い声が響いた。

 俺の唇が動いた。「丁寧に断ります。この国で彼女と終身を誓った。項師父のもとで続けたい。」——声が落ち着いた。

 項師父が頷き、山岡先生が鼻を鳴らした。「数週間ここにいる。気が変わりゃ連絡しろ。困ってもな。」——名刺を渡してきた。笑顔が消え、続けて呟いた。「つまらねえ。幸せなんざ女や子供の権利だ。男なら戦場で志を立てるべきだ。」

 そしたら、項師父が一歩進み出て、山岡先生と向き合った。「山岡、お前の無骨なやり方は嫌いじゃねえ。だが、俺の弟子に手を出すなら、黙ってねえぞ。」——二人が握手を交わした瞬間、互いに力を込め始めた。

「項、お前こそ古臭ぇ教えで若造を縛ってんじゃねえ!」——山岡先生がグッと力を入れると、項師父も負けじと握り返した。二人とも顔が赤くなり、首筋に青筋が浮かんだ。リング脇の観客が「何だありゃ!?」と笑い出し、俺まで巻き込まれそうに苦笑した。



「山岡、お前、力だけじゃねえって証明してみせな!」——項師父が顔を真っ赤にして言い返すと、山岡先生が「項、言葉より拳で語れ!」と返す。二人の手がガッチリ絡み合い、まるで子供みてえに力比べしてた。観客の笑い声が響く中、俺は呆れて見てるしかなかった。

 それから、「戦争が終わったら故郷に帰って結婚する」と言うように、その後起こった俺が「人生最悪最大」と呼ぶ出来事が、俺の当時の決断を完全に覆した。

 家に帰った後、Kの安否を心配して、すぐに電話で連絡を取った。

 でも、Kの優しい声は聞こえなかった。冷たい声が電話線から響き、怒りが喉に詰まった。「だから、嘘ついたのね。あの試合に出たんでしょ?」

 「……」——言葉が出ず、喉が詰まった。

 「これが私が望む結果だと思うの?運が悪ければ、あなたもJみたいに入院しちゃうんだよ!」——Kの声が激しく響き、耳に刺さった。

 「でも、俺は無事だ。」——Kを落ち着かせようと唇が動いた。「無事だから、もう大丈夫。次はないよ、いい?」

 「……でも、あの新高中国武術館の練習は続けるんでしょ?」——Kの声が怒りを抑え、目が俺を見つめた。

 「……うん。」——Kの知恵に驚き、沈黙が流れた後、小さく答えた。

 「なんで!?」——Kの声が焦りを帯び、耳に響いた。「先輩、あなたは学者になるべき人じゃないの?あんな無骨な連中と毎日殴り合って、どんな意味があるの?」

 「わかってないんだ。」——俺の声が我慢を抑え、説明した。「師匠は俺を自己否定から救ってくれたんだ。それに、武術館の先輩たちは、ACG研究部の友達と同じくらい温かい良い人たちだ。」

 「あぁ、本当に?私が知る限り、柱ほど太い木を拳で打ち続けたり、足が瘀血だらけになるまで蹴り練習するなんて、温和な良い人がやる趣味じゃないわよ!」——Kの皮肉が響き、辛辣さが耳に届いた。

 怒りが胸に湧き、限界が喉を切り裂いた。「お前は俺がやっていることを理解しようとしていないんだな?」

 「私は理解しようとしてるのよ!実際に!項新高って人のユーチューブにある募集動画全部見たわ!」——Kの声が怒りに震え、電話線が軋んだ。「あなたは私の彼氏なの!私があなたに怪我してほしくないの!誰が分かってないの?」

 「師匠が俺に力を握る道を教えてくれた!まるで父親みたいだ!」——電話に向かって叫んだ。

 「でも、彼はあなたの父親じゃない!」——Kの叫びが耳に響いた。「私があなたを、あの愚かな勧誘試合で負けたからって、良い男じゃないと思うとでも?先輩、あなたには羨ましがられる才能がたくさんあるじゃない。文章も書けるし、絵も描けるし、いつも一緒にアニメ見たりゲームしたりして楽しそうだったじゃない。なのにどうして、暴力で自分を証明しようとするの?こんなに、まるで、まるで……」

 「……まるでDV男の息子みたいだってか?」——冷たく言い返した。

 「先輩!私……!」——電話の向こうからKの焦った声が聞こえた。

 彼女は何か言おうとしていたが、怒りに駆られた俺は電話を切ってしまった。
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