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第一章 竜の巻 ようこそ、異世界へ。
1-22 魔獣狩り:松尾真一郎視点
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月明かりに反射してギラつく矢の大群は、俺たちを無視して無慈悲にブッ潰し始めた。
夜空が黒く塗りつぶされる。
次の瞬間、ドシャアアアッ!! と金属混じりの豪雨が叩きつけられた。
だがそれは水じゃない。
鋭利な矢だ。
鉄と木と矢尻がぶつかり合う音が、ゴツゴツと絶望的な雨音を奏でる。
地面に突き立つ衝撃、金属片に弾かれる反響、肉を裂く鈍い音。
無差別だ。
味方も敵もない。
空からの処刑。
「ちくしょう!墓守の野郎どもが!」
ロキールが叫ぶ。
次の瞬間、奴は体をしならせ、まるで曲芸師のように後方へ跳んだ。
バク転。
いや、避けるのは分かる。だが、バク転する意味あるか?
でけえ図体のくせに、やけに身が軽い。
しかも着地は寸分の狂いもない。サーカスで炎の輪でもくぐって鍛えてきたのか、お前は。
土煙を蹴散らしながら、ロキールは鬼浅羽との距離を一気に引き離した。
次の瞬間、戦場は完全に崩れた。
「うわあああ!」
「矢だ!矢だって言ってんだろ!」
「どこから撃ってやがる!?」
誰かが味方を突き飛ばす。
転んだ男の背中に、別の男が踏みつける。
起き上がろうとした奴の顔面に、飛び散った泥と血が降りかかる。
「俺の目だ!目に刺さった!抜け、抜けってば!」
「触るな!折れる!折れたらもっと痛ぇぞ!」
裂爪獣の鎖を握っていた男が、悲鳴とともに宙へ引きずられる。
鎖が手から滑り、鉄が地面を擦る嫌な音が鳴る。
「止めろ!止めろォ!」
「俺じゃねえ!そいつが引っ張ったんだ!」
矢に怯え、鬼浅羽に怯え、裂爪獣に踏まれ、味方を殴りつける。
統制も隊列もない。
ただの群れだ。
雑魚は雑魚らしく、目の前の恐怖に反応するだけだ。
「ロキール様!どうすりゃいい!?」
「女だ!女を押さえろって言ってんだろ!」
「無理だ!あれ見ろよ、あれ!」
誰かが鬼浅羽を指差し、指が震えている。
さっきまで勝者面していた連中の顔から、血の気が抜けていく。
歯がカチカチ鳴ってる奴までいる。
まるで蟻の巣に火を落としたみたいだ。
だが、鬼浅羽は違った。
奴はゆっくりと頭を上げる。
空を覆う黒い矢の群れを真正面から見据え――
「……ガァアアアアアアアアアアア!!」
腹の底を引き裂くような咆哮を放った。
言葉ではない。
だが意味ははっきりしている。
音圧が衝撃波となって広がる。
くそ、両手があれば耳を塞いでたところだ。
残念ながら今の俺は、ふかふかの前足しかない。
鼓膜が破れそうな振動が、内臓まで震わせる。
その瞬間だった。
鬼浅羽を中心に、透明な壁のようなものが球状に膨れ上がった。
空気が歪む。
地面の砂粒が外へ弾かれる。
矢がぶつかる。
バキィィン!!
硬質な破砕音。
矢はまるで見えないコンクリート壁に衝突したかのように、途中でへし折れ、矢尻が粉々に砕け、弾き飛ばされた。
折れた木片がスローモーションのように回転し、月明かりを反射しながら落ちる。
一瞬前まで死を撒き散らしていた矢雨は、ただの木屑と鉄屑に変わり、カラン、カランと虚しく地面を叩いた。
「ははは、守ってくれたのか!こりゃ好都合だ!」
少し離れた場所でロキールが笑う。
額から冷汗が滝のように流れているくせに、口元はいやらしく吊り上がっている。
銃をポイッと投げ捨てる。
次の瞬間、腰の両側からマチェットを引き抜く。
キィン、と刃が擦れる音。
血で濡れた二本の刃が月光を受け、獣の牙のように光る。
ちくしょう!考えろよ、松尾真一郎!
頭回せってんだ!
何すりゃいいんだよ!考えやがれ!
「ロ、ロキール様!もうこれ以上無理だ、クソッタレ!」
「裂爪獣が何匹も逃げちまった!ロキール様!」
怒号と悲鳴が交錯する。
逃げ遅れた連中が、必死に残り五匹ほどの裂爪獣を押さえつけている。
鎖がギチギチと悲鳴を上げ、地面に爪が食い込む。
巨体が暴れ、男が地面を引きずられる。
靴底が削れ、火花が散る。
「落ち着け!あいつは化け物じゃねえ!あの女を守ろうとしてるだけだ!」
ロキールが怒鳴る。
「全員でかかれ!あの女を狙えば、あいつの動きを縛れる!それなら魔獣狩りなんざ朝メシ前だ!こっちは毎日命がけの生活を送ってるんだ、空人の突然変異種だろうが、これ以上怖いもんなんてねえ!」
次の瞬間。
ロキールが唇を尖らせる。
ヒュウゥゥゥゥンッ!!
金属を擦り合わせたような、耳を裂く高周波の口笛。
空気が震え、裂爪獣たちの耳がピクリと反応する。
目の色が変わる。
鎖を引き千切り、地面を蹴る。
「ロープを放せ!魔物相手には、先陣を魔物に任せろ!」
盗賊たちは一斉にロープと鎖を放り投げる。
解き放たれた五匹の裂爪獣が、低い姿勢で地面を蹴る。
ゴゴゴゴゴゴ……
地鳴り。
砂塵が舞い上がる。
巨体がトラックのような勢いで、鬼浅羽と倒れた瑚依へ一直線に突進する。
このままじゃ、わけのわからん鬼浅羽はともかく、気絶している瑚依がグチャグチャのミンチにされてしまう。
そのとき、頭に浮かんだのは――恵美。
小さな手。
笑った顔。
そして、血。
老いボケか?
やけに過去のことを思い出させやがる。
だが忘れられるわけがない。
地面に崩れた小さな体。
潰れた顔。
届かなかった俺の手。
くそ!今さら死ぬなんて怖くねえ!
一か八か、やってやる!
俺は地面を蹴った。
震える短い脚を必死に動かす。
四足が砂を蹴り上げ、火花を散らす。
心臓が破裂しそうだ。
だが止まらない。
俺は一直線に、瑚依へ向かって飛び出した。
夜空が黒く塗りつぶされる。
次の瞬間、ドシャアアアッ!! と金属混じりの豪雨が叩きつけられた。
だがそれは水じゃない。
鋭利な矢だ。
鉄と木と矢尻がぶつかり合う音が、ゴツゴツと絶望的な雨音を奏でる。
地面に突き立つ衝撃、金属片に弾かれる反響、肉を裂く鈍い音。
無差別だ。
味方も敵もない。
空からの処刑。
「ちくしょう!墓守の野郎どもが!」
ロキールが叫ぶ。
次の瞬間、奴は体をしならせ、まるで曲芸師のように後方へ跳んだ。
バク転。
いや、避けるのは分かる。だが、バク転する意味あるか?
でけえ図体のくせに、やけに身が軽い。
しかも着地は寸分の狂いもない。サーカスで炎の輪でもくぐって鍛えてきたのか、お前は。
土煙を蹴散らしながら、ロキールは鬼浅羽との距離を一気に引き離した。
次の瞬間、戦場は完全に崩れた。
「うわあああ!」
「矢だ!矢だって言ってんだろ!」
「どこから撃ってやがる!?」
誰かが味方を突き飛ばす。
転んだ男の背中に、別の男が踏みつける。
起き上がろうとした奴の顔面に、飛び散った泥と血が降りかかる。
「俺の目だ!目に刺さった!抜け、抜けってば!」
「触るな!折れる!折れたらもっと痛ぇぞ!」
裂爪獣の鎖を握っていた男が、悲鳴とともに宙へ引きずられる。
鎖が手から滑り、鉄が地面を擦る嫌な音が鳴る。
「止めろ!止めろォ!」
「俺じゃねえ!そいつが引っ張ったんだ!」
矢に怯え、鬼浅羽に怯え、裂爪獣に踏まれ、味方を殴りつける。
統制も隊列もない。
ただの群れだ。
雑魚は雑魚らしく、目の前の恐怖に反応するだけだ。
「ロキール様!どうすりゃいい!?」
「女だ!女を押さえろって言ってんだろ!」
「無理だ!あれ見ろよ、あれ!」
誰かが鬼浅羽を指差し、指が震えている。
さっきまで勝者面していた連中の顔から、血の気が抜けていく。
歯がカチカチ鳴ってる奴までいる。
まるで蟻の巣に火を落としたみたいだ。
だが、鬼浅羽は違った。
奴はゆっくりと頭を上げる。
空を覆う黒い矢の群れを真正面から見据え――
「……ガァアアアアアアアアアアア!!」
腹の底を引き裂くような咆哮を放った。
言葉ではない。
だが意味ははっきりしている。
音圧が衝撃波となって広がる。
くそ、両手があれば耳を塞いでたところだ。
残念ながら今の俺は、ふかふかの前足しかない。
鼓膜が破れそうな振動が、内臓まで震わせる。
その瞬間だった。
鬼浅羽を中心に、透明な壁のようなものが球状に膨れ上がった。
空気が歪む。
地面の砂粒が外へ弾かれる。
矢がぶつかる。
バキィィン!!
硬質な破砕音。
矢はまるで見えないコンクリート壁に衝突したかのように、途中でへし折れ、矢尻が粉々に砕け、弾き飛ばされた。
折れた木片がスローモーションのように回転し、月明かりを反射しながら落ちる。
一瞬前まで死を撒き散らしていた矢雨は、ただの木屑と鉄屑に変わり、カラン、カランと虚しく地面を叩いた。
「ははは、守ってくれたのか!こりゃ好都合だ!」
少し離れた場所でロキールが笑う。
額から冷汗が滝のように流れているくせに、口元はいやらしく吊り上がっている。
銃をポイッと投げ捨てる。
次の瞬間、腰の両側からマチェットを引き抜く。
キィン、と刃が擦れる音。
血で濡れた二本の刃が月光を受け、獣の牙のように光る。
ちくしょう!考えろよ、松尾真一郎!
頭回せってんだ!
何すりゃいいんだよ!考えやがれ!
「ロ、ロキール様!もうこれ以上無理だ、クソッタレ!」
「裂爪獣が何匹も逃げちまった!ロキール様!」
怒号と悲鳴が交錯する。
逃げ遅れた連中が、必死に残り五匹ほどの裂爪獣を押さえつけている。
鎖がギチギチと悲鳴を上げ、地面に爪が食い込む。
巨体が暴れ、男が地面を引きずられる。
靴底が削れ、火花が散る。
「落ち着け!あいつは化け物じゃねえ!あの女を守ろうとしてるだけだ!」
ロキールが怒鳴る。
「全員でかかれ!あの女を狙えば、あいつの動きを縛れる!それなら魔獣狩りなんざ朝メシ前だ!こっちは毎日命がけの生活を送ってるんだ、空人の突然変異種だろうが、これ以上怖いもんなんてねえ!」
次の瞬間。
ロキールが唇を尖らせる。
ヒュウゥゥゥゥンッ!!
金属を擦り合わせたような、耳を裂く高周波の口笛。
空気が震え、裂爪獣たちの耳がピクリと反応する。
目の色が変わる。
鎖を引き千切り、地面を蹴る。
「ロープを放せ!魔物相手には、先陣を魔物に任せろ!」
盗賊たちは一斉にロープと鎖を放り投げる。
解き放たれた五匹の裂爪獣が、低い姿勢で地面を蹴る。
ゴゴゴゴゴゴ……
地鳴り。
砂塵が舞い上がる。
巨体がトラックのような勢いで、鬼浅羽と倒れた瑚依へ一直線に突進する。
このままじゃ、わけのわからん鬼浅羽はともかく、気絶している瑚依がグチャグチャのミンチにされてしまう。
そのとき、頭に浮かんだのは――恵美。
小さな手。
笑った顔。
そして、血。
老いボケか?
やけに過去のことを思い出させやがる。
だが忘れられるわけがない。
地面に崩れた小さな体。
潰れた顔。
届かなかった俺の手。
くそ!今さら死ぬなんて怖くねえ!
一か八か、やってやる!
俺は地面を蹴った。
震える短い脚を必死に動かす。
四足が砂を蹴り上げ、火花を散らす。
心臓が破裂しそうだ。
だが止まらない。
俺は一直線に、瑚依へ向かって飛び出した。
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