称号は『最後の切り札』

四条元

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準備完了、いざ出発!

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爺さんと仲間選びでゴタゴタしていた内に、俺の新しい身体は完成していた。
「うむ、コレは我ながら良い身体が出来た!」
爺さんは満面の笑みを浮かべる。
どうやらかなりの自信作みたいだ。
「さて、後はお主の魂を植え込むだけじゃ。」
「ソレは手間がかからんのか?」
「然程でもないわ。」
爺さんが手をかざすと、俺の新しい身体がスウッ…と消えた。
「えっ?アレっ?何で消しちまうのよ?」
「消したのではない。」
驚く俺に爺さんは答えた。
「身体を先にセカンディールに送り込んだのじゃ。」
「俺の魂の植え付けは?」
俺自身がまだ此処にいるから、植え付けはされていない筈だ。
「案ずる事は無い、植え付けは半分済んでおる。」
「半分?どういう意味だよ?」
爺さんの答に更に問いかける。
「今この場所で植え込むんじゃねぇのか?」
「此処では完全な植え付けは出来んのじゃ。」
「何でだよ?」
「此処はセカンディールの神である儂の住む世界、すなわち神界じゃ。」
「神界…。」
そういや此処が何処か聞いてなかったな。
「此処で魂の完全同化をすると、神の後継者もしくは新な神となる。」
「そりゃまたメンドクサイな…。」
「しかも此処で暮らさねばいかん。」
「あ、ソイツは勘弁だわ。」
こんな白だけの殺風景な場所、つまらなくて直ぐに飽きるな俺。
「ソレを避ける為には身体だけを先に送り、下界で魂を植え込みせねばならん。」
「下界でどうやって植え込むんだ?」
「だから、半分済んだ‥と言うたじゃろ?」
爺さんは胸を張った。
「後はお主が下界に行くだけじゃ。さすれば魂の同化が始まる。定着が終われば目覚めるじゃろう。」
「ふーん…。」
爺さんの説明で何となくは理解出来た。
後は俺が下界に行けば良いだけな様だ。

「ま、何にせよ生き返れるのはありがてえ。」
「じゃろ?」
「さて、そんじゃ早速行くとするわ。手間かけさせたね、爺さん。」
「なに、新しい住人の為じゃ。別に構わんよ。」
俺が立ち上がると「おお、そうじゃ!」と爺さんが話かけてきた。
「お主の世界には、国と国の偉い者同士が直接話し合う道具があるじゃろ?」
「ん?もしかしてホットラインの事か?」
「そう、それじゃ。」
爺さんは笑顔で言った。
「ソレと同じような物を、身体と一緒に送っておいたぞ。必要な時に使うと良い。」
「誰と話せるんだ?」
「儂じゃ。」
何でそんなモン送ったんだ?
「まあ、ありがたく受け取っておくわ。」
つかう事は無いと思うが‥。
「ちなみにゴッドラインと名付けた。」
「最後の最後に駄洒落かよ!!」
この突っ込みはしょうがないよな。


「さて、本当に行くわ。爺さん、サンキューな。」
「セカンディールは弱肉強食じゃが良い世界じゃ、食い物も美味いぞ。」
「へぇ~、ソイツは楽しみだな。」
「まあ、味の種類は少ないがの。」
背を向けた瞬間の言葉に俺の動きが止まる。
そして首だけを爺さんに向けた。
「…爺さん?」
「なんじゃ?」
「まさか俺に料理を広める期待とかしてねぇよな…?」
「無理かの?」
「無理!!」
キッパリと言い切る。
「殆んど料理なんてしたこと無いからな。」
「お主には記憶の目録があるじゃろ?」
「…あ。」
そういや親父が昔、料理本のセット買ってたな。
全然読まなかったが‥。
「ソレを翻訳するだけでも良いぞ。お主なら出来るじゃろ?」
レシピの書き写しか‥、それ位なら…。
「分かった、暇な時にやっとくわ。」
「よろしくの。では、さらばじゃ!」
爺さんの言葉と同時に、目の前が暗くなり俺の意識は消えた…。

目覚めた時、俺は森の中に寝そべっていた。
まあ当然だろう。
いきなり町の中に、意識の無い人間が現れたら騒ぎになる。
しかも全裸すっぽんぽんだしな!!
つかジジイ!!
裸はねぇだろ、裸は!!
俺、そんな趣味ねーから!!
【ピー】の大きさにも形にも自信ねーから!!
服位着せろよ、服位は!!
「ハア…、まあ、しょうがねぇか…。」
取り敢えず服だ。

無限収納から目録を取り出す。
あ、例のゴッドラインも入ってら‥。
…このまま長い眠りに就いて貰おう。
「どれにするか…って、まあお約束だな。」
虎縞迷彩の上衣に黒のTシャツ、黒のボクサーパンツに黒のジーンズ。
「ソックスはスニーカータイプ…いや、くるぶし迄のスタンダードだな。」
靴もスニーカーやジョギングは避けよう。
なら選ぶのは…。
米軍アメちゃんのジャングルブーツだな。」
森で動くなら実戦で履かれているコイツだ。
「後は武器えものと防具か…。」
さて何にするか…?

取り敢えず予備弾倉スペアマガジンのポケット付きのタクティカルベストだな。
そしてホルスターと銃剣、水筒を腰に着ける為の弾帯。
「さて武器は…。」
武器の項の頁を捲る、が…。
「…参ったな、どれにするか?取り回しを考えると自動小銃アサルトよりはSMGサブだが、威力が分からんしなぁ…。」
セカンディールの情報だと、獣や魔物は結構な値段で売れる。
先立つ物が無いから、売れる物は成るべく確保したい。
だから威力過多オーバーキルで二束三文になるのは避けたい。
「ん~…、どれにするか‥ん?」
仄かに光っている頁を見つけた。

急いで光る頁を捲る。
拳銃ハンドガンの項か‥。」
程なくソレを見つけた。
「…コイツは。成る程、三点連射三点バーストか。」
光っているのはコレを薦めているんだな?
コレを使うなら後は…。
「折り畳み式の専用フォールディングストックと30発弾倉ロングマガジンだな。」
ヨシ!
武装も決まりだ。
威力が足りない時は、その都度新しい武器を召還しよう。
後は水筒と銃剣か。
水筒はスタンダードな物を。
銃剣は…。
鞘付きシースタイプのジャングルキング1にしておこう。
「ヨシ、コレで良いだろう。武器は二丁を召還しとこう。」
二丁有れば両手撃ちダブルハンドショットも出来るからな。
一丁はウェストホルスターで弾帯に、もう一丁は手持ちだがショルダーホルスターも召還しとくか。
予備弾はロングを八個だな。
さて、召還だ。

召還する物をまとめてタップする。
本の筈なのになんかタブレットみたいだな、目録コレ…。
便利だから良いか。
深く考え無いでおこう。
最後に目録に魔力を流し、召還のアイコンを

「ポチッとな!」

うん、お約束は大事な美学だから。
「お?おおおおおっ…!?」
うおっ!?
グイグイ魔力が吸われるわ!!
こりゃ無駄に召還は出来んな。
お?
なんか目の前に光が集まり始めたぞ?

集まった光は大きくなり、やがて徐々に消えていく‥。
光が完全に消えた時、俺の目の前には選んだ衣服類に水筒に銃剣、そして鈍く光る二丁のベレッタM93Rが在った。 
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