称号は『最後の切り札』

四条元

文字の大きさ
上 下
19 / 19

胃痛がマッハで加速する…

しおりを挟む
「しょ、しょしょ‥少々お待ち下さーーい!!」
嬢ちゃんは吃りながら叫び、カウンターの奥の通路を走っていった。
ああ、フラグ立ったわ…。
大事確定だわコレ…。
戦時中の幼女に転生したおっさんなら
「どうしてこうなった!?」
とか叫んでるよ。
つーか俺が叫びたいよ。
大体、収納が容量無限とか魔法が詠唱無しだけでもヤバいのに。
神のスキル?
神からの称号?
何なんだよソレ?
俺自身が初耳だよ?
「祟られてる‥。絶対祟られてるよ、コレ…。」
ドンゴス達の恨みがコレか?
だとしたら随分と行動早ぇ怨霊だな、オイ!
もうバックレちまうかな‥?
あ、遅かった。
嬢ちゃん戻って来たわ…。

「あ‥あのハヤテ・タカツキ様。お時間を取らせて申し訳御座いませんが、当支部のギルド・マスターが是非お会いしたいと申しております。御迷惑で無ければ御足労願いたいのですが…?」
嬢ちゃん、声上ずってるよ。
そんだけ大事な訳ね‥。 
ああ、俺の新しく平穏な人生(予定)は今いずこ…?
「…分かりました、行きます。」
人生、諦めが肝心だったっけ…。
何かこの世界で生きるのを諦めたい気がしてきた…。

通路を進んだ突き当たりの扉。
ソレには執務室と書かれていた。
ああ、ここがギルド・マスターの居る部屋か。
何だろね、この死刑台に登る様な気分は…?
逃げてぇ…。
コンコン‥。
嬢ちゃんが扉をノックした。
「ギルド・マスター。ハヤテ・タカツキ様をお連れ致しました。」
「入って貰ってくれ。」
男の声だ。
声の感じから歳は4・50歳位か?
「失礼します。」
嬢ちゃんが扉を開け、仕草で俺に入るように促す。
仕方ない、毒食らわば皿迄‥だ。
「お邪魔します。」
ギルド・マスターは執務室の奥の机の横に立っていた。
上背は無いががっしりとした体つきだ。
髪は少々寂しいが、その辺はご愛敬っていうヤツだ。
身体中からチンピラ程度じゃ相手にならない雰囲気が洩れている。
殴り合いはしたくないなぁ‥。

「こんな場所に御足労頂き、誠に申し訳ありません。私は当支部でギルド・マスターを務めている、ジェフリー・パターソンと申します。」
パンクラチオンでもやってそうな名前だな…。
「ご丁寧な挨拶、致みいります。冒険者志望のハヤテ・タカツキです。以後宜しく御願い致します。」
丁寧に挨拶されたからなぁ。
こっちもなるべく丁寧に喋らんとな‥。
苦手だけど。
「立ち話もなんですから、どうぞ椅子にお掛け下さい。」
「それでは失礼して遠慮なく‥。」
ああ、舌噛みそうだ。
取り敢えず座ろう。
「メリッサ、すまないが飲む物を持ってきてくれないか?」
ギルド・マスターが嬢ちゃんに声をかけた。
そうか、嬢ちゃんの名前はメリッサか。
「はい。直ぐに持って参ります。」
頭をさげメリッサが退室した。

「さて、ハヤテ・タカツキ様に御足労頂いた理由ですが…。」
ギルド・マスターは椅子に座り、組んだ両手の親指をクルクル回している。
あ、こりゃアレだ。
俺と同じだ。
「その前に、ギルド・マスターに少々御願いが有るのですが‥。」
「私に頼み‥ですか?」
ギルド・マスターは目を丸くしている。
まあ、当たり前か。
いきなり頼みだからな。
「失礼ながらギルド・マスターは自分と同じタイプとお見受けしました。」
「私がタカツキ様と同じタイプと…?」
「ええ、そうです。ですから言葉を元に戻しませんか?」
ギルド・マスターは俺を鋭い目で見ている。
「何時気づかれましたか?」
「自己紹介の辺りから。」
ギルド・マスターは大きく息を吐いた。
「ふぅー‥。上手く話してるつもりだったがなぁ。」
「中々堂にいってたすよ。俺は偶々気づけただけ。」
「ま、堅苦しい会話は得意じゃ無いからな。改めて、ギルド・マスターのジェフリー・パターソンだ。」
「俺はハヤテ・タカツキ。ハヤテで良いっすよ。」

「失礼します、お茶をお持ちしました。」
タイミング良くメリッサが戻って来た。
「ああ、入ってくれ。」
ドアを開き、メリッサが入ってくる。
「どうぞ御召し上がりください。」
「有難う。」
俺とギルド・マスターの前に紅茶を置き、メリッサはギルド・マスターの横に立つ。
アレ?メリッサも同席すんの?
つか、自分のお茶どしたの?
「さて、ハヤテを此処に呼んだ訳はだな…。」
「えっ?ぎ‥ギルド・マスター!?その言葉使いは‥!」
「ああ、良いんだ。本人の要望だ。」
ギルド・マスターが手でメリッサを制して答える。
「えっ!?えっ!?」
「堅苦しいなぁ苦手なんだよ、メリッサ嬢ちゃん。」
俺とギルマスを交互にみるメリッサに話しかける。
「だからメリッサ嬢ちゃんもハヤテと呼んでくれ。様や殿は要らねぇよ。」
「は、はぁ…。」
やっと納得したかな?
「さて、ハヤテを呼んだ訳はだな‥。」
「ボードが出したプロフィールの確認でしょ?」
「まあ、内容が内容だけにな…。」
だよなぁ、俺なら機械の故障を疑うわ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...