称号は『最後の切り札』

四条元

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新たな街セカルドル

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ジャズを走らせる事四時間ほど。
俺はセカルドルの街の前にいる。
とはいっても完全に真ん前では無い。
門から200m程離れた場所だ。
何故そんな所にいるか…?

なんかスッゲー人並んでるんですけど…。

 ‥まあ、しょうがない。
郷に入れば郷にへつらえ‥ってヤツだ。
とりあえずジャズは収納にしまおう。
「しかしマジで人並んでんな~。何人いるんだ?」
ざっと見で100?
いや、それ以上か?
こりゃ当分、順番来ないな。
ま、飯食いながら気長に待つか‥。
収納から予め召還しておいたパーコレーターと粗挽きのコーヒー豆とステンレスのマグカップ、アウトドア用のガスコンロと水とハムエッグサンドを取り出す。
パーコレーターの蓋を開け、中の金具(なんて名前なんだろう?)を取り出す。
本体に水、金具に豆を入れ本体へ。
蓋をしてコンロに乗せ着火!
水が沸騰してコポコポと音がしてきたな。
蓋の摘まみはクリアパーツで中の湯の色が見える。
色がコーヒー色になれば出来上がり♪

マグカップからコーヒーの香りが漂う。
ウム、我ながら良い出来だな。
俺の前の何人かが見てるが気にしない。
サンドを頬張りコーヒーを啜る。
…ウメェ。
なんかカウボーイになった気分だ。
ソレにしても、何でパーコのコーヒーは薄味に感じるんだ?
粗挽きだから濃い味に感じてもよさそうなんだが…。
もしやメリケンの人が貧乏洋茶アメリカンコーヒーが好きなのは、ソレが理由なんだろうか‥? 
そういや知人の一人が
「アレはおそらく開拓時代に出涸らしのコーヒー飲んでた名残だ。」
とか言ってたな。
…何故だろう?納得しそうだ。

‥待つ事30分。
そろそろ俺の順番だ。
パーコレーターの中は既に空。
コレ1L近い容量なんだが…。
腹がチャポチャポ鳴ってるわ。
「次の方どうぞ。」
「あ、お願いします。」
前に進むと軽装だが腰に剣を提げた青年が二人いる。
マントを着けてるし騎士だろう。
「名前は?」
「ハヤテです、ハヤテ・タカツキ。」
「この街に来た目的は?」
「冒険者ギルドで登録する為に。」
「身分証は有りますか?」
「すいません、持って無いです。」
「では、あちらの魔道具に触れて下さい。」
「はい。」
出たね、真実の板クライムボード
この辺はファスターと同じか。
「犯罪歴は無し‥。結構です。では仮入場許可証をお渡しします。あそこの窓口で入場料5000ディンをお支払い下さい。」
「分かりました。」
ディンはセカンディールの通貨だ。
1ディンが日本円で一円。
硬貨のみで紙幣は無い。
窓口で小銀貨五枚を払い、仮入場証を受け取る。
コレでセカルドルに入場完了だな。

街に入り辺りを見回す。
「中々広いな‥。」
当然ながらファスターよりもかなり広い。
ま、ファスターは村だしセカルドルは街だ。
当たり前だな。
「…だが拡張の余地は丸で無しか。」
セカルドルは街を丸ごと石の壁で囲んでいる。
防犯対策の一つだろう。
「コレだけデカけりゃ木の柵程度じゃ済まんか。」
拡張性を取るか防犯を取るか…。
この街規模なら後者は当然か。
「おっと、のんびり見物してる場合じゃねぇか。」
先ずは腹ごしらえのつもりだったが、順番待ちの間に飯食ったしな。
ギルドに登録に行くか。

冒険者ギルドは簡単に見つかった。
まさか目の前に在るとは思わんかったわ。
道を聞いた人に自分の真ん前を指差される恥ずかしさ…。
昔、ある店に電話して道を聞いたら

「今どこに居るんですか?ああ、ソコですか。すいません、後ろ向いて貰えますか?ソコがうちの店です。」

と言われた時並みに恥ずかしい…。
「良いのよ良いのよ‥。人生恥かいてナンボなのよ‥。人間は恥をかき続けて生きていく定めなのよ…。」
…誰に言い訳してんだ俺?
イカンな、こんなモチベーションじゃイカン。
もっと明るく前向きに行かねば。
只でさえ爺さんに身体を悪目立ち仕様にされてるんだ。
気持ちを切り替えないとうつ病になりかねん。
気を取り直し、いざ登録だ。

ギルドの扉を開け中を覗きこむ。
わりと広いエントランスの奥にカウンターがある。
アレが受付か?
入って直ぐの壁には黒板状の物が有り、多数の紙らしき物が張られている。
「アレが依頼ボードか?想像力って凄いね、ラノベのまんまだわ…。」
反対側にはフードコートの様にテーブルと椅子が置かれている。
ギルドが直接経営してる飯屋か酒場か?
「本当にラノベのまんま‥。」
あの店、身長2mのモヒカンマッチョなオネエのママが居たら恐怖しかねぇな…。
しかし冒険者らしき人が居らんな。
あ、まだ昼頃だから依頼の真っ最中なのか?
 おっと、登録を済ませなきゃ。
カウンターに誰か居るかな?

カウンターに近付くと誰か居るのが見える。
あ、結構可愛い嬢ちゃんじゃん。
ヨシ、あの娘に聞いてみよう。
「えっと、すいませんが…。」
「あ、冒険者ギルドへようこそ!何か御依頼ですか?」
明るくハキハキ喋る娘だね。
感じ良いわ。
「いえ、依頼じゃなく冒険者登録したいのですが‥。」
「登録ですか?少々お待ち下さい。」
嬢ちゃんは何かを取りに行くみたいだ。
歳は15・6ってトコか?
可愛いねぇ‥。
言っておくがエロい意味じゃねぇぞ。
アレだ、叔父さんが姪っ娘を無条件で可愛がるのと同じだ。
「お待たせしました。この用紙に名前を記入して下さい。文字はお分かりになりますか?」
「あ、大丈夫です。」
爺さんに文字も植え込みして貰って良かった。

「コレで良いですか?」
嬢ちゃんは用紙を見る。
「お名前はハヤテ・タカツキ様ですね。では、こちらの登録の板メンバーズ・ボードに触れて頂けますか?」
「分かりました。」
登録の板に触れると、一瞬光った後に紙とカードが出て来た。
「登録が完了しました。それでは確認させて頂きます。」
嬢ちゃんは一緒に出て来た紙を読み上げる。
「お名前はハヤテ・タカツキ様ですね。種族は人族。魔法は‥全属性ですか、凄いですね!」
…それ、わざわざ読み上げるのか?
今は人居ないから良いけど、個人情報漏洩じゃね?
「得意な武器は……近代兵器全般?特技は………近代車輌及び航空機・艦船の操縦???」
あ、そういや二次大戦の各種兵装や近代兵装の操作マニュアル、全部読んでたな俺。
アレも記憶に残ってるのか。
つか、そんな情報まで書かれてんの!?
「ス‥特殊能力スキルは神の能力『記憶の目録メモリーカタログ』!?」
あ、絶対大事になるわコレ。
…もう誤魔化すのは手遅れだよなぁ。
「か…神からの称号ニックネーム最後の切り札ラストカード』保持者!?異世界からの転生移住者ァッ!?!?!?」
なんだその称号って?
初めて聞いたぞ?
つかそろそろ叫ぶか…。

情報全部駄々漏れじゃねぇかジジイ!!!!!!!!



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