ワンダリング・ワンダラーズ!!

ツキセ

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一章

コートを作ろう

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「……ぃよっとぉー」
「フーガくんの、重くない?」
「大丈夫だけど、どこかにぶつけないかだけ怖いな」

 カオリマツの伐採を終え、1.5mほどの長さに分割した枝の原木を脱出ポッドの内へと運び込む。
 ……この狭い脱出ポッドの中にそんなものを運んで大丈夫かって?
 そこで圧縮ストレージの出番ですよ、奥さん。
 1.5m大の丸太のような原木も、そのまままるごと入れてしまえる。
 しかも、ストレージ内に入れて置けば、この大きさのまま加工に使えるのだ。
 いやぁ、ほんとに製造装置さまさまだな!
 個人用の脱出ポッドにこんなものが搭載できるというのなら、母星アースの製造現場は果たしてどうなっているというのか。
 原料の搬入口を直接組み込む必要がない工場ライン?
 深く考えたら怖いことになりそうだな……。

 伐採に掛かった手間は現実のそれにそこそこ近いのだが、こういうところではゲーム的な利便性を考えてくれているのが本当にありがたい。
 山登りした後、帰りはゴンドラリフトでいい、みたいな感じだ。
 珍しい素材の発見と採取がクライマックスで、あとはご褒美タイムみたいな。

 そんなことを考えつつも、カノンと一緒に計9本、合わせて90kgほどのカオリマツの原木を圧縮ストレージに運び込む。
 ストレージ内部の壁面に立てかけて置けばいいだろう。
 これが現実なら、乾燥させるために雨ざらしにしておいた方がいいとかあるのかもしれないが……そのあたりは製造装置先生はきっとうまくやってくれるはずだ。

 作業ついでに、倒したカオリマツの上の方の枝に残っていた葉っぱも回収しておいた。
 精油がなかなか使い勝手よさそうだからな。
 今のところ防虫効果の方をまったく実感できていないが、香りは良い。

「ふぃー、お疲れさまでした、カノン。
 ……これでほんとに、木材の採取が完了だな」
「お疲れさま、フーガくん。
 けっこう、時間掛かっちゃったね」

 ダイブインしてから、既に4時間ほどは経っているか。
 セドナの時刻は、すっかり夜だ。

「木こり作業自体はとんでもなく早く終わったけどな。
 ……木材の採取という点で見れば、ここまでなかなか長い道のりだった、か?」

 カオリマツの枝を採取して柄を作り。
 花崗岩を採取して石刃を作り。
 石斧を使って木を切り倒し。

 言ってみればそれだけだが、なんだかんだと4日も掛かってしまった。
 まぁ、俺たちはいろいろ寄り道したり細かく見たりしていたから、他のプレイヤーよりはゆっくりしているだろうが……プレイ時間そのものはかなり長いからな。
 合わせて考えれば、概ね平均的といったところだろう。

 それを考えると、モンターナはかなり効率的なムーブで進めていたようだな。
 3日目の朝の時点で、もう木を切り倒すところまでは行っていたわけだ。

「もう運ぶもの、ない?」
「おう。お疲れさま、カノン。それじゃ早速製造に――」
「じゃあ、もう着替えても、大丈夫?」

 ん? ああ、探索着から普段着にってことか。
 カノンは拠点にいるときはだいたい普段着を好んで身に着けているが……もしかすると、初期装備一式は、カノンの体型に合ってないのかもしれないな。
 探索着も、なにかしら新調したほうが良いかもしれない。

「ああ。木くずも飛んでるだろうし、いっそ洗浄室を使ってしまおうか。
 このあとは製造一辺倒の予定だし。俺もカノンの後に使わせてもらおうかな」
「んっ。じゃあ、……先に、シャワー、浴びるね?」
「おっ……おう。お気兼ねなく……」

 カノン。その言い方はやめてくれ。
 なんか琴線に響くものがあるから。


 *────


「よっし、じゃあ本日の製造行くぞー」
「うんっ」

 洗浄室を使い終え、再びケープにチュニックとロングパンツの普段着モードに着替えたカノン。
 見飽きることはないが、もう少しバリエーションがあってもいいのではないかとも思う。
 過ごしやすそうなチュニックはともかく、上に羽織るものはいろいろあってもいいよな。
 カーディガンとかどうだろう。
 チュニックも、カラーバリエーションが選べるだけでも違うのではないか。

「カノン、新しい服とか欲しくない? 色違いとかでもいいぞ」
「えっ……今の、気に入ってる、けど。……今日、そういう予定、だっけ?」

 いやそんな予定はなかったが。

「わたしのより、先にフーガくんのコート、つくろ?」
「あっはい」

 まあ、確かに作るべきものはある。
 ここセドナが高地であると分かった以上、寒冷対策は早めに行っておくべきだ。
 雨の気配もあることだし、今回でコートは作るとしよう。

「いまある素材は……今回採取したカオリマツの原木90kg。
 カオリマツの葉が追加で5kg。
 岩壁で採取した花崗岩の岩塊5kgと、石斧の余り。
 玄武岩の岩塊5kg、岩塩入りの玄武岩塊5kg。
 岩壁で採取した謎の葉っぱ……って感じか。
 製造装置が補ってくれる合成生地と組み合わせれば、そこそこいろんなものが作れるな」
「んっ、なにから、作る?」
「椅子や道具類も作りたいが、……せっかくカノンが勧めてくれたし、まずはコートから考えてみよう」

 だが……ぱっと見でわかりやすくコートを強化できそうな素材はないな。
 もう諦めて初期仕様で普通に作ってしまおうか。
 カノンも精油で香りづけしただけのケープを好んで身に着けているし、下手に性能にこだわるよりも頻繁に取り替えるくらいの気持ちで作ったほうが良いのかもしれない。
 前作で装備をほとんど使ってなかったせいで、装備作製のタイミングがいまいち掴めない。

「じゃあ、とりあえず俺とカノンのコート作ろうか。
 拠点外でも使えるように、ウールよりも革で作ったほうが良いかな。
 いわゆるレザーコートってやつ」

 ウール製のを外に着て行ってもいいけど、ひっかけてほつれそうだしな。
 それに今回は耐寒性より強度を重視したい。気休めかもしれんが。
 それに防水性能に関しても、革ならウールや綿よりはマシだろう。

「……あ、でもカノン、革製でも大丈夫か?
 初期の革装備一式はあんまり着心地がよくないみたいだけど」
「えっ」
「えっ。……いや、拠点でもすぐそのチュニックに着替えてるし、カノン的には革素材の服があんまり合ってないのかな、と」
「それ、は……この服が、気に入ってるから、だから。
 ん、と……えと。……革の生地が、嫌いってわけじゃない、よ?」
「っと、そうなのか」

 じゃあレザーでもいいな。
 まぁ、ちゃんとカノンの体格に合わせて作れば大丈夫ってことかもな。
 革生地は使い込めば使い込むほど馴染むし、早めに作っとくか。

「よし、まずはレザーコート作ろう。
 合成革特有の匂いが消せるかもしれないし、精油の追加も検討しつつ」
「まずは、フーガくんの、だね?」
「カノンのも作るぞ。なんか雨降りそうだしな。
 撥水にはあんまり期待できないだろうけど、ないよりマシ程度には雨に強いはずだ」

 というわけでレザーコートを作るよ、製造装置先生。
 製造装置を起動し、衣類の項からコートを選択。
 素材は革。デザインは……あれだ、あの、腰下くらいまで丈があるレザーコート。

「こういうの、ちぇすたーこーと、って言うんだっけ?」
「……すまん。わからん」

 ええい、名前がわからなくても参考図を見ればわかるんだよ!
 カノン先生曰くちぇすたーこーと風のデザインを選び、フーガの体格に合わせて3Ⅾモデリングで整える。
 内ポケット増やして……あと前はちゃんと閉じられるようにして……
 任意の部分に石板や木板を仕込んで簡易プロテクターみたいなのをつけることもできるが、別に戦闘したいわけではないし今回は必要ないだろう。
 ただ重くなるだけだ。
 あとづけの素材については、例によってカオリマツの精油くらいしか足せそうなものがない。
 玄武岩や花崗岩を削って粉末にして表面に……みたいな使い方はできないみたいだ。
 いや、それをしたところでどうなるのか俺にはわからんけど。
 製造装置先生的にもその使い方はNGらしい。
 仕方ない。岩だもんな。

「……よしおっけー。……うん、いまだに大した強化はできないな!」
「でも、コート自体が、目的だし。これでいいと、おもうよ?」

 カノンのゴーサインも頂いたことだし、この仕様で確定させてしまおう。

 では、ポチっと。

  ウィーン――――

 ……。

「なあ、カノン」
「ん、なに?」
「この革って、なんの革なんだろうな」
「……なにかの、合成革?」
「合いびき肉みたいな?」
「それは、ちがうと、おもう」

 違うか。


 *────


「どうよ、カノン」
「わっ、……なんか、ロンドン、みたい」
「……それ、どっちについての感想?」

 出来上がったばかりでまだほんのり温かいレザーコートを羽織って見せたところ、カノンさんからよくわからない感想を頂く。
 このレザーコートがロンドン風だという意味か。
 それともレザーコートを着た俺の出で立ちがロンドン風という意味か。
 俺の容姿アバターは焦げ茶色の髪色に黄褐色の瞳だからな。
 後者の可能性の方が高いか。

「あっ……わかった。ロンドン、っていうより、
 ……ちょっとだけ、ホームズみたい、かも?」
「どのホームズだ」

 いっぱいいるよ。
 三次元に限定しても、たぶん100人くらいには演じられてるよ。
 そのなかにはレザーコートを着たホームズも一人は居るだろう。

「フーガくんに、似合ってる、よ?」
「……ありがと。着心地も悪くないし、いい感じだ」

 初期装備の革ベストの上に着られるように、合わせて作ったからな。
 どこかが張ったりだぼついたりもしていないし、いい感じだと思う。

「匂いも……うん、そこまできつくないな。
 いかにも革っていう匂いはしないし、拠点で着てても気にならないと思う」
「んっ、ちょっと嗅いでみてもいい?」

 いつかのようにカノンが匂いをきたがるので、自由にさせる。
 これまでの経験上、俺より鼻が利くみたいだからな、カノン。
 カノンが気にならないというのなら問題ないはずだ。

「どう? 気になる?」
「んっ……あんまり、わからなかった、かも」
「じゃあ問題ないってことだな」
「んっ……」

 なにやらひっかかる反応を見せる。
 ……気にならないのが気になるのか?
 まあいいか。カノンの表情を見るに、たぶんこれは深刻な話ではないだろう。

「よし、じゃあこのままカノンのコートも作ろう。デザインに希望はある?
 基本的には探索時に身に着けるから、チュニックとの親和性は気にしなくていいぞ」

 俺のレザーコートのデザインはそこまでメンズスタイルに寄っているわけではないが、カノンにも好みがあるだろう。

「……じゃあ、フーガくんのと、同じがいい」
「いいのか? 確かにこのデザインは安牌っちゃ安牌だけど」

 ジャケットスタイルよりは、このデザインの方が人を選ばないと思う。
 俺のファッションセンスがそこまであてにならない以上、ただの感想だが。

「んっ。それでお願いして、いい?」
「了解。じゃあ細部を詰めていこうか」

 といっても、俺のデザインから丈と袖の長さ、肩や胴回りの幅を変えるだけだ。
 ちょいちょいと弄って、あとはそのままで。
 カノンの確認も取って、ではポチっと。

  ウィーン――――

 ……。

「なあ、カノン」
「ん、なに?」
「ちぇすたーこーとのちぇすたーってなんだ?」
「……わかん、ない」
「なんか、ライフルの名前でもそんな感じの聞いたことある気がするんだよな……」

 違うか。
 あれはウィンチェスターか。


 *────


「ど、どう? フーガ、くん」
「……」

 チュニックの上に、俺と同じデザインのコートを羽織るカノン。
 腰下あたりまでの丈の、やや艶のある黒褐色のレザーコート。
 丈や袖は合っているようで、そのあたりに問題はない。
 ただ、やはりチュニックの上にレザーコートというのは……

「あっ」
「え、どうした、の?」
「カノン、コートの前閉じて、前。
 で、コートの上からいつものケープ羽織って」
「んっ。こ、こう、かな?」

 なんということでしょう。
 腰下あたりまでの丈のやや艶のある黒褐色のレザーコートに、首元をふわりと隠すウール地の黒いケープ。
 それはまるで、冬が開けたばかりでまだ寒い春先の街で見られそうな出で立ちで。

「なるほど。……ありだな」
「なに、が?」

 これはいい。
 小柄で細身なカノンにこのデザインのコートってどうなのだろうかと思っていたが、首元をふわりと覆うケープがすべてを解決してくれる。
 少々配色が地味だが、それもまた春の野花の淡い彩りに映えるだろう。
 背景には、桜や梅の白系というよりは、菜の花とかたんぽぽとか黄色系を……。
 もう少しケープの丈が長くてもいいかも……。

「あ、の……。フーガ、くん?」
「……はっ!? いや、すまんカノン。思った以上にしっくり納まったもんでな。
 よく似合ってるぞ。たぶん俺よりいい感じだ」
「ぁ、う……んっ。……ありが、と、ぅ……」

 自分勝手な話だが、やはり俺は自分が着飾るより、人が着飾るのを見るのが好きだ。
 今で言えばカノンだ。せっかくいろいろ作れるわけだし、一緒に楽しんでもらいたい。

「それで、着心地は大丈夫か? この革生地はちょいと薄いけど」

 レザーコート、というより革製品全般は、革の品質によって雲泥の差が出ると聞く。
 そう言う意味で言えば、俺たちに与えられている合成革は、決して良品ではないだろう。
 この惑星の獣を仕留めて、その革で作ったほうが、きっといいものができる。
 だが、良品ではなくとも粗悪品でもないように思う。
 この程度の品質の生地が最低限保証されているというのは、とても心強いことだ。

「んっ。いい感じ、かも。……結構、あったかい、ね」
「革生地は保温性がいいからな。重さも大丈夫?」
「だいじょうぶ。……でも、ちょっと動きづらくなる、かも」
「革はほとんど伸びないからな」

 激しい運動をしたり、繊細な作業を行ったりするときは脱いだほうが良いだろう。
 現状では、寒く感じる時や、雨の中をちょっと移動するときに使えればいい。

「よっし、これで寒さ対策も一応完了っと」

 製造に関して最初に建てた目標、衣食住の改善のうち、「衣」は良い感じに進んでいるといえる。
「衣」に関しては、カノンのケープと俺のコートってのがひとまずの目標だったからな。

「次は、なにつくる?」
「衣食住のうち、食に手を出してみるか。
 ……塩作ってみようぜ、塩!」

 あの岩塩入り玄武岩を砕くのだ!
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