地球の天使、ルミエールと行く、三百年後の未来

Taka123M

文字の大きさ
12 / 13

第12章: 下層民の救済

しおりを挟む
ミカミ財団の専用車でルミエールとタクミ、ミカミの三人は、東都の下町にある貧民街を訪れていた。後ろには、物資や機械を載せた財団のトラックと技術者たちがずらっと並んでいる。

ルミエールが引き締まった声でタクミに告げる。「今は、ミカミさんのSMAIがこのエリアの全システムを管理しているけど、それだけですべてがうまくいくほど甘くはない・・ここの人たちを救うのが私達の最後の任務になるわ」

タクミがうなずく。「ここに暮らしているのは人間だ…AIでもコンピュータでもない。・・公平さん!こちらのアナウンスに応じて、タクミ財団下町支部のシェルターに避難してくれた人は、どれくらいいますか?」タクミが公平にたずねる。

「全住民の半数程度です・・後は、耳が聞こえなかったり体が動けなくなっている人、上層階級にへつらってこの町を支配していた連中の残党、および独自のグループを作って暗躍していた愚連隊たち、それと・・ゾンビ、じゃなかった、デコヒーの方たちです」

「…どうする、ルミエール?」

「とりあえず、3つの班にわけましょう。公平さんは、避難できなかった人たちを救い出す「救護班」と、残党や愚連隊と対峙する「戦闘班」を財団の方で編成してください。」

「了解いたしました、ルミエールさん」公平が力強くうなずく。

「で、タクミと私は、「デコヒー班」…公平さん、デコヒーの方々の受け入れ体制は整っていますね?」

「もちろんです!お二人が捕獲した「デコヒー」の方々は、こちろですぐに、タクミさんに作っていただいた「コヒー化装置」で元に戻していいきます。」

「じゃ、早速、それぞれに分かれて任務を遂行しましょう!」全員が、ハイ!と言ってそれぞれの持場に散っていく。

「・・ルミエール。ボクのマインド座標で、彼らの位置を特定できたよ!」タクミがルミエールを見た瞬間、彼の耳たぶがキラリと光った。

「タクミのマインド座標、デコヒーの内面まで見抜くんだ…」と言った後、ルミエールが笑いはじめる。

「はあ?何かおかしいの?」タクミがむっとして聞き返す。

「そのイヤリング!あまりに似合ってるのがおかしすぎて」ルミエールがゲラゲラ笑い出す。

「なにそれ!てか、これしかないんだよね?腕時計とか指輪とか、他にいくらでもありそうなんだけど」タクミがむっとして言い返す。

「いいじゃない!私とおそろいなんだし…それとも、それになにかご不満でも?」

「いえ…ありません」タクミがいそいで否定する。

「じゃ、そろそろ行こう…あの方たち、早く救ってあげないとね。もうみんな任務について作業始めてるし」

「うん。」タクミは、ゲーム理論のベイジアン戦略によって捕獲作戦を進めていく。現状を事前のシュミレーション結果と照合するために、ルミエールのイヤリングが役に立った。ルミエールはタクミの後についていく。二人がはじめにたどりついたのは、一番小さなデコヒーの群れだった。

群れが潜む古い倉庫の前で、タクミは立ち止まる。イヤリングをひねってホログラムを呼び出し、内部のセンサリングを行う。すると、タクミのマインド座標に、エッジの重みが一番大きいノードが青い点で浮かび上がる。このデコヒーが、この群れの「リーダー」だ。タクミは、その結果をルミエールのイヤリングに送る。

「ターゲットはこの青い点ね…で、どうやって捕獲エリアに誘導するの?」

「ドローンに誘引物を乗せて、その後を追わせる…」タクミが少し、ためらいがちに言う。

「それはわかってるけど…その誘引物が何か、までは聞いてないよ?」ルミエールがタクミに聞き返す。

「彼らは、心の奥底では、コヒー化を願っている・・だから、元々コヒー化している人間や天使を本能的に追い回すんだよ。」

「え?てことは…」ルミエールはいやな予感がした。

「うん。僕たちがドローンに乗って、青い点との距離をギリギリに保ちながら、最短経路で捕獲エリアまで誘導する」

「そんな!」ルミエールの顔がムンクの叫びになる。

「ゴメン。他に方法がないか探ってみたんだけど、これしかなかった」タクミがすまなそうに言う。

「…そこまでタクミが考えてくれたならいいよ。大丈夫。タクミと一緒なら、私、耐えて見せるから」ルミエールが強がりの笑顔を作る。

「ホントに大丈夫?…いきなりデコヒーの群れを全滅させたりしない?」

「しないわよ!…けど、私、途中で気を失うかもしれないよ」

「そのときは、ボクがルミエールを守るよ」タクミがきっぱり言う。

「ありがとう!」ルミエールがタクミの頬にキスをする。


タクミとルミエールはドローンに乗り込み、倉庫の前で準備を整えた。タクミはイヤリングを操作し、ホログラムのディスプレイにデコヒーたちの位置と動きを表示させた。

「準備完了。いくよ、ルミエール。」タクミが合図を送ると、ドローンは静かに浮上し、倉庫の中に向かって飛び立った。

倉庫の中は薄暗く、埃っぽい空気が漂っていた。デコヒーたちは無秩序にうごめいており、彼らの目は虚ろで、力強い叫び声が響いていた。タクミはホログラムディスプレイを確認しながら、青い点のリーダーに狙いを定めた。

「そこだ!」タクミが小さな声でつぶやき、ドローンをリーダーに向けて進めた。リーダーは突然、タクミとルミエールの存在に気付き、興奮したようにこちらに向かってきた。

「ついてきている…ルミエール、スピードを上げるよ。」タクミが指示すると、ドローンは一気に加速した。デコヒーたちは本能的に追いかけ、倉庫の外へと飛び出してきた。

タクミとルミエールはドローンを操作し、デコヒーたちを巧みに誘導しながら、捕獲エリアへと進んでいった。途中で、ルミエールが振り返ると、デコヒーたちの群れが激しい勢いで迫ってくるのが見えた。

「タクミ、後ろにたくさん来てるわ!」ルミエールが不安げに叫んだ。彼らのオーラでルミエールはめまいがしていた。タクミがいなかったら、失神していてもおかしくなかった。


「大丈夫。もうすぐ捕獲エリアだ。」タクミは冷静に答え、ドローンをさらに加速させた。

捕獲エリアに到着すると、タクミはイヤリングを操作し、エリア内に設置されたコヒー化装置を起動させた。装置が青い光を放ち、デコヒーたちの動きを止める。

「これで終わりだ!」タクミが叫ぶと、装置が高周波の音を発し、デコヒーたちをコヒー化の光に包み込んだ。彼らの体は徐々に正常な状態に戻り、虚ろな目も次第に生気を取り戻していった。

「成功したわね!」ルミエールが安堵の表情を浮かべる。

「うん」タクミが微笑んで答える。

捕獲エリアに到着したデコヒーたちは次々と元の姿に戻り、人間の意識を取り戻していった。彼らは混乱した表情を浮かべながらも、タクミとルミエールに感謝の言葉をかけた。

「ありがとう…本当にありがとう。」最後のデコヒーが涙を流しながら言った。

ルミエールとタクミは、肩を寄り添えて立っていた。

「私達、ついにやったのね」ルミエールが頭をタクミの肩にのせた。

「うん…任務完了だね」タクミがルミエールの肩を抱き寄せた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...