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もう一度、「守りたい」と誓うために…
制裁
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俺は男の腕を掴み、ひねり上げると、そのままの勢いで男の足を掬い上げるように足を引っ掛け、地に沈める。この動作は約5秒。ほんの一瞬の出来事だった。風原でさえもあっけに取られる。男の方は理解が追い付いていない様子だった。そんな男に、俺は言った。
「女を守れなければ存在価値がないだって?ふざけるなよ?」
怒気をはらんだ声で続ける。
「守りたくても守れなかった奴だっているんだぞ!」
そうだ。これは俺だから言える言葉。伝えられる想い。
「だったら、お前はどうなんだよ。お前はみどりの彼氏でありながら、事故で死なせてしまった。お前は彼女を守れなかったんだ。何だっけ、女を守れなければ存在価値がないだっけ?その流れでいくとお前の存在価値がないんだが。つまり、もうお前に存在価値はないんだろ?」
俺は男の胸倉をつかみ上げる。男が苦しそうな声を出すが関係ない。そのまま俺は続けた。
「だったら、お前のこと、どうこうしていいってことだよな?」
そして、俺は右手を振りかぶって、そのまま振り下ろそうとした。だが、その握られた俺の拳を、そっと優しく包み込む誰かがいた。言わずもがな、風原香織だ。
「もういいよ」
風原は少し悲しそうな顔をしながら、
「帰ろう」
「ああ、そうだね…」
気付けば、駅前を歩く多くの人の視線を集めていた。その、痛々しい視線を肌で感じながら、俺たちは帰路を辿るのだった。
「……ねえ……」
家に着き、ソファーに腰掛けると、風原が話しかけてくる。
「ん?どうしたの」
風原は少し迷いながらも、言葉を紡ぐ。
「……さっきの言葉、みどりさんのことだよね。掘り返しちゃってごめんね。だけど、これだけは聞いておきたくて……」
俺は一拍を置いて、言った。
「ああ、そうだよ」
俺は少し視線を落とし、
「確かに、俺はみどりの彼女でも何でもない。あいつにとってはただの幼馴染。ただ、俺が一方的に好意を寄せていただけ。だけど、例え彼女じゃなくても、みどりを助けてやりたかった。別に、事故の現場にいたわけじゃない。俺なんかに止められたのかも分からない。けど、助けたかった。生きててほしかった。だから、」
俺は拳を固めて、
「守れなかった者を馬鹿にするやつは許さない。俺も守れなかった者の一人だから言えることなんだ」
「……そう……」
部屋が神妙な空気でいっぱいになる。だが、俺の言葉でそれら全てを払拭する。
「ごめんね。今のは忘れて。今日はデートだっただろ。そっちの話をしよう」
「うん。そうだね。デート…か。あ、そうだ。言いたいことがあったんだ」
風原はそう前置きを入れて、
「私の事、名前で呼んでよ」
「へ?」
名前で…呼ぶ?
「駅前の時、私の事『風原』って呼んだでしょ。なんで他人行儀なのさ」
「え?でも、流石に下の名前で呼ぶのは気が引けるというか…」
「みどりさんは呼んでるのに、私はダメなの?」
「うぐっ……」
目を宝石のように潤し、上目遣いでこちらを見てくる。その時、俺の中で、方程式が成り立つ。
潤った目×上目遣い+美しい容姿=最強
その方程式がたった今、断ることなどできるわけもなく、
「分かった、分かったから」
「本当に?」
「嘘ついても仕方ないでしょ?」
「そうだね」
風原…いや、香織はやわらかく微笑んだ。
「え~と、その、か、香織」
「ん?何?」
「いや、何でもない」
俺は窓の外を見る。今日は何だかんだあったが、意味のある一日だった。みどりがいなくなってから、初めて、心の底から楽しいと感じられた。今日の夜空はとても澄んでいるように見えた。
「女を守れなければ存在価値がないだって?ふざけるなよ?」
怒気をはらんだ声で続ける。
「守りたくても守れなかった奴だっているんだぞ!」
そうだ。これは俺だから言える言葉。伝えられる想い。
「だったら、お前はどうなんだよ。お前はみどりの彼氏でありながら、事故で死なせてしまった。お前は彼女を守れなかったんだ。何だっけ、女を守れなければ存在価値がないだっけ?その流れでいくとお前の存在価値がないんだが。つまり、もうお前に存在価値はないんだろ?」
俺は男の胸倉をつかみ上げる。男が苦しそうな声を出すが関係ない。そのまま俺は続けた。
「だったら、お前のこと、どうこうしていいってことだよな?」
そして、俺は右手を振りかぶって、そのまま振り下ろそうとした。だが、その握られた俺の拳を、そっと優しく包み込む誰かがいた。言わずもがな、風原香織だ。
「もういいよ」
風原は少し悲しそうな顔をしながら、
「帰ろう」
「ああ、そうだね…」
気付けば、駅前を歩く多くの人の視線を集めていた。その、痛々しい視線を肌で感じながら、俺たちは帰路を辿るのだった。
「……ねえ……」
家に着き、ソファーに腰掛けると、風原が話しかけてくる。
「ん?どうしたの」
風原は少し迷いながらも、言葉を紡ぐ。
「……さっきの言葉、みどりさんのことだよね。掘り返しちゃってごめんね。だけど、これだけは聞いておきたくて……」
俺は一拍を置いて、言った。
「ああ、そうだよ」
俺は少し視線を落とし、
「確かに、俺はみどりの彼女でも何でもない。あいつにとってはただの幼馴染。ただ、俺が一方的に好意を寄せていただけ。だけど、例え彼女じゃなくても、みどりを助けてやりたかった。別に、事故の現場にいたわけじゃない。俺なんかに止められたのかも分からない。けど、助けたかった。生きててほしかった。だから、」
俺は拳を固めて、
「守れなかった者を馬鹿にするやつは許さない。俺も守れなかった者の一人だから言えることなんだ」
「……そう……」
部屋が神妙な空気でいっぱいになる。だが、俺の言葉でそれら全てを払拭する。
「ごめんね。今のは忘れて。今日はデートだっただろ。そっちの話をしよう」
「うん。そうだね。デート…か。あ、そうだ。言いたいことがあったんだ」
風原はそう前置きを入れて、
「私の事、名前で呼んでよ」
「へ?」
名前で…呼ぶ?
「駅前の時、私の事『風原』って呼んだでしょ。なんで他人行儀なのさ」
「え?でも、流石に下の名前で呼ぶのは気が引けるというか…」
「みどりさんは呼んでるのに、私はダメなの?」
「うぐっ……」
目を宝石のように潤し、上目遣いでこちらを見てくる。その時、俺の中で、方程式が成り立つ。
潤った目×上目遣い+美しい容姿=最強
その方程式がたった今、断ることなどできるわけもなく、
「分かった、分かったから」
「本当に?」
「嘘ついても仕方ないでしょ?」
「そうだね」
風原…いや、香織はやわらかく微笑んだ。
「え~と、その、か、香織」
「ん?何?」
「いや、何でもない」
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