11 / 11
もう一度、「守りたい」と誓うために…
Epilogue これから綴る物語
しおりを挟む
あれから月日は流れるように経ち、俺は卒業となった。今は卒業式も終わり、解散となった直後だ。俺は一流とまではいかないが、中々にいい大学へと入学する。
あの時、夏織の担当医に言われた朗報。それは、夏織の病気が手術で治る可能性があったことだ。勿論簡単なことじゃない。成功する確率は二けたにも満たない。そんな一か八かの手術だった。圧倒的に生き残る可能性は低い。それでも彼女は生きることを諦めなかった。直ぐに手術をすることを決め、彼女は一発逆転をかけた。
夏織がベットの上で俺の手を握りながら、手術室へ向かう情景は昨日のように思い出せる。
「今頃、何してるのかな?」
雲一つない澄んだ空を見上げながら、俺は無意識にそう呟く。口には出してみたものの、夏織が今どこで何しているかなど、簡単に予想できる。
「さて、帰りますか」
廊下には既に多くの生徒が玄関へと向かっていた。俺はその流れに身を任せる。
玄関では各々が感情を分かち合っていた。友人と抱き合うやつ。恋人と一緒に帰るやつ。感動を抑えきれず、玄関で友人と泣いているやつなど様々だ。だが、俺にはそのような存在は残念ながらいないため、長居は無用と判断し、俺は靴を履き替えようとした時だった。
「永遠北さん」
突然後ろから、担任に声をかけられた。
「はい」
「まずは卒業おめでとう」
「いえ、ありがとうございます。それで、何か?」
担任が俺に話しかけてくることなんて、今までなかったはずだ。それなのに今になって何の用だと思考を巡らせていると、簡単な答えを担任が口にする。
「やはり、二年生の時より明るくなりましたね。何かありましたか?」
なんだそんなことか。俺は少し遠くを見ながら言った。
「そうですか。別にこれと言ってありませんでしたが、自分の生きる理由が見つかった。そんな気がします」
「そうですか」
担任はそれ以上踏み込むことはなく、
「頑張ってくださいね」
と言って、去っていった。
「明るく…か」
やはり傍からみたらそんな風に見えるのか。と、先程の会話を思い返しながら、俺は靴を履き替え、玄関を出た。
校門を潜り、俺は一人歩く。だが、俺は途中で立ち止まり、微笑した。
「ったく、家で待ってろって言ったろ?」
俺が声を掛けた彼女は、何のことやらととぼけた表情を見せる。
「いつまでそこに立っているつもりだ。行くぞ、夏織」
夏織は手術に成功し、俺と今を生きている。こうやって笑顔で。
俺は夏織のお陰で成長することが出来た。絶望に叩き落された俺がここまで幸せを感じられるなんて、あの時は想像も付かなかっただろう。夏織には言葉じゃ言い表せないほど助けられた。だが、俺は何もせず日々を過ごすわけじゃない。誓ったんだ。もう一度、守りたいと。だから、これから綴る俺の人生という物語は、「守りたいと誓う」物語じゃない。そう、これから綴るんだ。
「もう二度と『失わない』と決めた」物語を……。
あの時、夏織の担当医に言われた朗報。それは、夏織の病気が手術で治る可能性があったことだ。勿論簡単なことじゃない。成功する確率は二けたにも満たない。そんな一か八かの手術だった。圧倒的に生き残る可能性は低い。それでも彼女は生きることを諦めなかった。直ぐに手術をすることを決め、彼女は一発逆転をかけた。
夏織がベットの上で俺の手を握りながら、手術室へ向かう情景は昨日のように思い出せる。
「今頃、何してるのかな?」
雲一つない澄んだ空を見上げながら、俺は無意識にそう呟く。口には出してみたものの、夏織が今どこで何しているかなど、簡単に予想できる。
「さて、帰りますか」
廊下には既に多くの生徒が玄関へと向かっていた。俺はその流れに身を任せる。
玄関では各々が感情を分かち合っていた。友人と抱き合うやつ。恋人と一緒に帰るやつ。感動を抑えきれず、玄関で友人と泣いているやつなど様々だ。だが、俺にはそのような存在は残念ながらいないため、長居は無用と判断し、俺は靴を履き替えようとした時だった。
「永遠北さん」
突然後ろから、担任に声をかけられた。
「はい」
「まずは卒業おめでとう」
「いえ、ありがとうございます。それで、何か?」
担任が俺に話しかけてくることなんて、今までなかったはずだ。それなのに今になって何の用だと思考を巡らせていると、簡単な答えを担任が口にする。
「やはり、二年生の時より明るくなりましたね。何かありましたか?」
なんだそんなことか。俺は少し遠くを見ながら言った。
「そうですか。別にこれと言ってありませんでしたが、自分の生きる理由が見つかった。そんな気がします」
「そうですか」
担任はそれ以上踏み込むことはなく、
「頑張ってくださいね」
と言って、去っていった。
「明るく…か」
やはり傍からみたらそんな風に見えるのか。と、先程の会話を思い返しながら、俺は靴を履き替え、玄関を出た。
校門を潜り、俺は一人歩く。だが、俺は途中で立ち止まり、微笑した。
「ったく、家で待ってろって言ったろ?」
俺が声を掛けた彼女は、何のことやらととぼけた表情を見せる。
「いつまでそこに立っているつもりだ。行くぞ、夏織」
夏織は手術に成功し、俺と今を生きている。こうやって笑顔で。
俺は夏織のお陰で成長することが出来た。絶望に叩き落された俺がここまで幸せを感じられるなんて、あの時は想像も付かなかっただろう。夏織には言葉じゃ言い表せないほど助けられた。だが、俺は何もせず日々を過ごすわけじゃない。誓ったんだ。もう一度、守りたいと。だから、これから綴る俺の人生という物語は、「守りたいと誓う」物語じゃない。そう、これから綴るんだ。
「もう二度と『失わない』と決めた」物語を……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
お人形令嬢の私はヤンデレ義兄から逃げられない
白黒
恋愛
お人形のように綺麗だと言われるアリスはある日義兄ができる。
義兄のレイモンドは幼い頃よりのトラウマで次第に少し歪んだ愛情をアリスに向けるようになる。
義兄の溺愛に少し悩むアリス…。
二人の行き着く先は…!?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
人質王女の恋
小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。
数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。
それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。
両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。
聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。
傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる