能力者主義の世界で俺は無能なチート能力者

高桐AyuMe

文字の大きさ
27 / 55
本編

呼び出し参戦

しおりを挟む
 一回戦、二回戦と順調に勝ち進めていく中、俺は徐々にに疲れがたまっているのを感じる。
「はあ……、疲れた」
「半分自業自得だからね」
 この疲労は一人で三人を相手し続けた結果の状況だ。
 普通なら舞原も前線で戦ってくれるのだが、俺が今朝無理矢理リタイアさせたためいない。
「なら、もう半分は誰のせいだ?」
「え? こんな時にけがをした千歳に決まってるじゃない」
 半分はお前のせいだよ。と、心中で間違いを正す。
「まあ、自業自得ってなら、俺が最後まで責任持たないとな」
「そうよ。しっかりしてよね……」
 で別にお前が責任持ったってバチは当たらないんだぞ……。
 愚痴をこぼしながら向かう三戦目。
 相手はまたもやAクラスのメンバーで固められたチーム。
 やっかいなことになるのは間違いなし、か。
 そしてさらに、
「ボーナスチャンスを要求します」
 もちろん、俺たちからの申告ではない。
   相手側からの申告。
 これにて俺たちは誰か一人助っ人を呼ぶ権利を得ることになったが、
「まずいな……」
 俺も疲れがたまっている。
 一回戦目と同じ動きができるかと聞かれれば、俺はNoと答える。
 完璧主義の舞原の提案により、西園寺などのAクラスの生徒には助っ人は頼まないという決まりがある。
 何としてでも、今の3人で勝ち上がり、実力を示したいからだそうだが、状況的にはそんな決まり事を守っている場合でもないように見える。
 背に腹はかえられないと、西園寺を呼ぼうとしたのだが、残念ながら隣のステージで試験中だ。
 さて、どうしたものか。
「一人助っ人を要求します」
 仕方ない。二度目の登場をしてもらおうか。

「本当に俺でいいのか? 間違ってないか?」
「何度言えばわかる。俺はお前を呼んだ」
「わかった。零がいいのなら全力を尽くすさ」
 俺が助っ人として呼んだのは、同じクラスの汗衫。はっきり言って、西園寺、舞原を除いた選択肢はこれしか見当たらなかった。
 それに、汗衫はAクラスではなくBクラスの生徒。決まりは破っていない。
   二人に比べれば多少実力は見劣りするが、それでも十分な戦力だ。
「で、俺はどう動けばいいんだ?」
「そうだな、一人を抑えてくれればそれでいい。2対1の状況なら何とかできる。3人相手にするのはかなりきついからな」
  汗衫は首を縦に振って首肯の意を示すと、相手に向き直る。それを横目に俺も改めて相手と対峙する。
  不気味な沈黙が、6人の中で流れる。
  そんな緊迫した空気を破ったのは、こちら側。
  汗衫と同時に動き出し、5メートルあった相手との距離を一瞬にして縮める。   そのまま地を蹴り、相手の眼前にとびかかるようにして、空中で蹴りの準備をするが、俺のはフェイクだ。
  空中の動作を調整して、蹴りの準備を停止。最前線に出ていた生徒のの横を通り過る。瞬間、鈍い音が背後でなった。
  俺の動きに気を取られた生徒が、俺の後ろに隠れていた汗衫の攻撃に反応できず、汗衫の蹴りをもろに食らった音だ。
  俺はそのままその奥にいる、完全に油断しきった生徒を勢いのままに殴りつけた。
  一撃で二人を鎮めると、上がれるような動作で、未だ状況を理解しきれていない最後の生徒にハイキックを放つ。と同時、飛び込んできた汗衫の膝蹴りが頬に突き刺さった。
  一瞬のうちに迫った強烈な二つの攻撃に対応できるわけもなく、抵抗なくそれを受けた生徒はその場に崩れ落ちた。
  僅か10秒にも満たない出来事だった。

「別にわざわざ汗衫じゃなくてもよかったんじゃない? 相手動けてなかったわよ」
 試合が終わり、一度休憩を入れるためロビーのベンチに座っているとミサがそう言ってくる。
「他に思いつかなかったんだ。まあ、すぐに終わったし、結果オーライじゃないか?」
 結局、楽したいとか言いながら普通に動いてしまった。
 狙い通りとはいかなかったが、まあ時間短縮して休憩時間を多く確保できたとプラスに考えるか。
 それに今日は後二戦。パッパッと終わらせて睡眠時間も多く確保しますかな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...