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本編
戻ってくるのは非日常
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先ほどまでに盛り上がっていた会場は時間がたつにつれてその熱は段々と冷めていき、気づけば最終試合を終えた俺たちだけがロビーのベンチに座っているという状況になっていた。
俺は近くの自販機で買った水を飲みながら一息つく。
「やっと終わったか」
「そうね、やけに長い気がしたけれど」
「それについては同感だ」
全戦全勝という形でこの試験を終えることができたことに関してはもう拍手喝采の功績だ。だが、その対価というものが恐らく、クラスの上昇。そもそも上のクラスを目指す事に興味がない俺にとっては少し物足りない。
「全チームの得点が出そろいました。よって、15分後にステージへ集合してください」
このまま休みたかったが、学校側からのお呼出しだ。
俺たちは渋々立ち上がってステージへ向かう。
「久しぶり、と言ってもそんなに日にちはたっていないか」
ステージに着くなり、汗衫が俺に話しかけてきた。
「そうだな、だが、体感としては一週間ぶりくらいだな」
長い期間での試験だったので周りを見れば疲労を抱えている生徒が多々見受けられる。
「これでやっと日常に戻れるのか……」
「それは無理な話じゃないか、零。特にお前は今や注目の的だ」
「俺が何をやったって?」
「十分、実力を見せつけただろ。あれで自覚がないのなら病気だぞ」
「大げさじゃないか? 無能力に油断しただけだろ」
そこで会話を打ち切る。
これ以上追及されても、答えられるものはない。
数分の待機の後、教師がステージ上に上がる。
「全チームの結果が出そろった。詳しい順位は後に発表されるが、降格が関わる下位5組と上位3組のみ発表する」
先ずは下位5組から発表される。主にF、Eクラス中心のチームが出揃う。まあ予想通りだ。Fクラスの生徒は退学、という形で学校を去ることになる。
続いて上位3組。3位にAクラスで固めたチームが手堅くランクイン。2位は西園寺のチーム。俺たち以外に勝利をおさめる形となった。そして、1位は勿論、舞原のチーム。全戦全勝の圧倒的な実力差でもぎ取った頂点だった。
「続いて、本来は予定していなかったがやむなく、クラス上昇を行う生徒1人を発表する」
ざわり、と生徒間でどよめきが広がる。が、そんな中でも俺は溜息を洩らし、覚悟した。
「椿零。試験での活躍を認め、Aクラスへの昇格とする」
俺の日常はこの一言でぶち壊されることが決定した。
「憂鬱だ……」
学校への帰りのためのバスの中。俺は一人呟く。
「かなり贅沢なことを言っている自覚はあるか?」
隣に座った汗衫がそう言葉を掛けてくるが、あるわけないよなと一人で納得する。
聞こえてるからな?
「なんとでも言え。これからどうしろと……」
「どうするも何も、Aクラスの生徒として過ごしていくしかないだろ。ほかに選択肢なんかないぞ」
分かってる。分かってるさ。分かってるからこそ逃げ出したい現実があることを知らないのか。
「言っただろ。日常がそう簡単に戻ってくるものか」
汗衫が繰り返して言う。
だが、仕方ない。もともとの予定とは違う結末になってしまったのだから。そう割り切るしかない。
「Aクラス、か……」
試験では全員を相手取ったのだから実力などたかが知れてる。だが、それでも、
「足りない……」
「何がだ?」
舞原も西園寺も。この学校に入ってからはたったの1度も負けると思ったことはないし、まだ力を抑えても戦えるレベルだ。
まだ見ぬAクラスのレベル。果たして、どれだけの実力を用意してくるのか。
そこには少し興味がひかれるな。
学校に戻った俺は部屋に戻ると部屋中を見渡した。
「また移動か……」
Fクラスから一気にBクラスに上がり、寮生活が始まったのだが。Aクラスに上がるということは、またこの部屋がグレードアップするということだ。
「あんまり金のかかるような備品は好きじゃないんだけどな……」
シンプルな部屋になりますようにとお祈りしてベットに飛び込む。
これから始まる憂鬱な生活すべてをこの身のように投げ出したい気分だった。
そのまま眠りにつこうとしたのだが、突然にドアがノックされる。
眠りを妨げる奴は一体どこのどいつだ、と。
文句の一言ぐらい言わしてもらおうと、来訪者を迎える。
「突然すまないな、椿零」
「西園寺、俺はなぜ眠い瞼をこすりながらお前と話さなければならない」
「さぞかし疲れているだろうにな。あの試験でリタイアを挟まなかったのは唯一お前だけだ」
「そりゃ、全く誉め言葉にはなってない。で、お前の言い方からすると、用があるのはお前じゃないのか?」
「ああ、俺は言伝を頼まれただけだ」
「言伝……」
つまりは俺の連絡先を持っていない誰か。しかも、試験終了直後というタイミングからしてそこそこ急ぎの用なのかもしれない。
「それで、誰だ。用がある奴は」
俺は西園寺に先を促す。そして、西園寺の口から放たれたのは、
「学園長からだ。至急、学園長室へ来い。だそうだ」
「……」
「……」
「……は?」
俺は近くの自販機で買った水を飲みながら一息つく。
「やっと終わったか」
「そうね、やけに長い気がしたけれど」
「それについては同感だ」
全戦全勝という形でこの試験を終えることができたことに関してはもう拍手喝采の功績だ。だが、その対価というものが恐らく、クラスの上昇。そもそも上のクラスを目指す事に興味がない俺にとっては少し物足りない。
「全チームの得点が出そろいました。よって、15分後にステージへ集合してください」
このまま休みたかったが、学校側からのお呼出しだ。
俺たちは渋々立ち上がってステージへ向かう。
「久しぶり、と言ってもそんなに日にちはたっていないか」
ステージに着くなり、汗衫が俺に話しかけてきた。
「そうだな、だが、体感としては一週間ぶりくらいだな」
長い期間での試験だったので周りを見れば疲労を抱えている生徒が多々見受けられる。
「これでやっと日常に戻れるのか……」
「それは無理な話じゃないか、零。特にお前は今や注目の的だ」
「俺が何をやったって?」
「十分、実力を見せつけただろ。あれで自覚がないのなら病気だぞ」
「大げさじゃないか? 無能力に油断しただけだろ」
そこで会話を打ち切る。
これ以上追及されても、答えられるものはない。
数分の待機の後、教師がステージ上に上がる。
「全チームの結果が出そろった。詳しい順位は後に発表されるが、降格が関わる下位5組と上位3組のみ発表する」
先ずは下位5組から発表される。主にF、Eクラス中心のチームが出揃う。まあ予想通りだ。Fクラスの生徒は退学、という形で学校を去ることになる。
続いて上位3組。3位にAクラスで固めたチームが手堅くランクイン。2位は西園寺のチーム。俺たち以外に勝利をおさめる形となった。そして、1位は勿論、舞原のチーム。全戦全勝の圧倒的な実力差でもぎ取った頂点だった。
「続いて、本来は予定していなかったがやむなく、クラス上昇を行う生徒1人を発表する」
ざわり、と生徒間でどよめきが広がる。が、そんな中でも俺は溜息を洩らし、覚悟した。
「椿零。試験での活躍を認め、Aクラスへの昇格とする」
俺の日常はこの一言でぶち壊されることが決定した。
「憂鬱だ……」
学校への帰りのためのバスの中。俺は一人呟く。
「かなり贅沢なことを言っている自覚はあるか?」
隣に座った汗衫がそう言葉を掛けてくるが、あるわけないよなと一人で納得する。
聞こえてるからな?
「なんとでも言え。これからどうしろと……」
「どうするも何も、Aクラスの生徒として過ごしていくしかないだろ。ほかに選択肢なんかないぞ」
分かってる。分かってるさ。分かってるからこそ逃げ出したい現実があることを知らないのか。
「言っただろ。日常がそう簡単に戻ってくるものか」
汗衫が繰り返して言う。
だが、仕方ない。もともとの予定とは違う結末になってしまったのだから。そう割り切るしかない。
「Aクラス、か……」
試験では全員を相手取ったのだから実力などたかが知れてる。だが、それでも、
「足りない……」
「何がだ?」
舞原も西園寺も。この学校に入ってからはたったの1度も負けると思ったことはないし、まだ力を抑えても戦えるレベルだ。
まだ見ぬAクラスのレベル。果たして、どれだけの実力を用意してくるのか。
そこには少し興味がひかれるな。
学校に戻った俺は部屋に戻ると部屋中を見渡した。
「また移動か……」
Fクラスから一気にBクラスに上がり、寮生活が始まったのだが。Aクラスに上がるということは、またこの部屋がグレードアップするということだ。
「あんまり金のかかるような備品は好きじゃないんだけどな……」
シンプルな部屋になりますようにとお祈りしてベットに飛び込む。
これから始まる憂鬱な生活すべてをこの身のように投げ出したい気分だった。
そのまま眠りにつこうとしたのだが、突然にドアがノックされる。
眠りを妨げる奴は一体どこのどいつだ、と。
文句の一言ぐらい言わしてもらおうと、来訪者を迎える。
「突然すまないな、椿零」
「西園寺、俺はなぜ眠い瞼をこすりながらお前と話さなければならない」
「さぞかし疲れているだろうにな。あの試験でリタイアを挟まなかったのは唯一お前だけだ」
「そりゃ、全く誉め言葉にはなってない。で、お前の言い方からすると、用があるのはお前じゃないのか?」
「ああ、俺は言伝を頼まれただけだ」
「言伝……」
つまりは俺の連絡先を持っていない誰か。しかも、試験終了直後というタイミングからしてそこそこ急ぎの用なのかもしれない。
「それで、誰だ。用がある奴は」
俺は西園寺に先を促す。そして、西園寺の口から放たれたのは、
「学園長からだ。至急、学園長室へ来い。だそうだ」
「……」
「……」
「……は?」
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