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しおりを挟む桜のような花びらが空から舞い、新入生たちが楽しそうに笑い声を上げながら大きなざわめきをつくる。
その花びらのような、淡いピンクの色の髪を持つ令嬢、フラウリーゼ=ブロッサムはこれから学ぶ様々なことに思いを馳せながら大きな木を見上げた。ふと影ができ、誰かと思い振り向くと、見上げた先にはなんとも美しい男子生徒がこちらをじっと見ているではないか。
ホワイトブルーシルバーの髪は櫛でとく必要のないくらいサラサラで、同じ色の目はまるで宝石かと思うくらいに美しい。きゅっと閉められた唇は可憐な乙女のような艶のある色をしておりすっと通った鼻は程よい大きさで絶妙なバランスをとっている。
フラウリーゼはこの生徒のことを知っていた。公爵家三男のリリー=ホワイトローズ・・・社交界で“氷のプリンセス”と呼ばれている人物であり、悪役令息的存在とされている。その美しさは皆認めているものの、誰も彼の声を聞いたことがない。話すことができないという訳ではなく兄弟や家の者とは普通に会話を交わすのらしいが、なんでも誰が挨拶をしても冷たい目を向け颯爽と立ち去ってしまうのだとか。だからついた浮名が冷たさを感じさせる“氷”と、気高く傲慢な態度であることを揶揄って“プリンセス”となったのだ。
彼の悪評は数多く、現にフラウリーゼの兄や従兄弟、幼馴染みは皆彼を嫌っているようで、会うと毎回愚痴を零している。だが、フラウリーゼは彼のことを悪い人だとはどうしても思えなかった。
「あの・・・・・・?」
ふっと手を伸ばされ咄嗟に目を瞑ると、ふわりとした感触が頭に感じられる。目を開けてみると、彼はピンクの花びらを摘まんでそれを眺めていた。彼の繊細な指に挟まれたそれは、きっと今自分の髪に乗っていたものだろう。シュボッと音を立てるように、フラウリーゼは自分の顔が赤くなるのがわかった。
「おいっ、お前フラウリーゼに何をっ!?」
「アラン、彼は私の髪についていた花びらを取ってくださっただけよ!!すみません!ありがとうございます」
リリーがフラウリーゼの側にいるのを目ざとく見つけ、怒鳴りながら走って近づいてきた幼馴染みのアランの誤解を慌てて解くと、振り返ってリリーに頭を下げ感謝の意を述べた。
「っ、おいっ!!」
だがリリーは聞こえなかったかのように視線を外し、指から花びらを離してさっさと行ってしまった。
「っんだよあいつ!!ムカつく~~!!」
「まぁまぁアラン、私は大丈夫だから」
「リーゼ!今ホワイトローズが近くにいたが、奴に何かされたのか!?」
「やれやれ・・・ほんとお前フラウリーゼのことになると・・・・・・って、まぁ俺も気になったけど。大丈夫か?」
「はい・・・、みんな、ありがとうございます」
憤るアランを宥めていると、自分たちの様子を見ていたのか二つ上の兄のフラウと兄の同級生で従兄弟のセイがフラウリーゼの下へ駆け寄ってきた。
心配してくれた彼らに礼を言いながら、フラウリーゼは先ほどの彼の美貌を頭に思い描いていたのだった。
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