汚物食い転生──それは食えば食うほど強くなる禁断の力

カウンテン

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泣いたジュウゾウ

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人気のない路地裏で二人は相対していた。
胸のあたりで腕を組んでいたキャスが、きつい口調でジュウゾウに問い質す。
「なんで、肥壺なんかに隠れていたのよ。目的は何?レイプ?強盗?」
「い、いや、お、俺の目的は女のウンコだっ」
ややどもりながらもジュウゾウはキャスに答えた。

「ウンコ?」
「そ、そうだ、ウンコだ……俺は病を患っていて……わ、若い女のウンコを食わないといけなかったんだっ」
キャスはジュウゾウの言葉に嘘はないと思った。
何よりジュウゾウの吐瀉物で汚れた口の周りと、糞便まみれの両手を見れば、誰だって察しがつく。

「なるほど、そういう事なら見なかったことにしておくわ……」
ジュウゾウの言葉に納得したキャスは、それ以上事を荒立てる気はないのか、
踵を返し、じゃあねという言葉を残して立ち去っていった。

こうしてジュウゾウは難を乗り切ったのだ。



河川敷の茂みから拾ってきた穴だらけのテントの中で、ジュウゾウはひとり考えていた。
汚物を苦もなくスムーズに食べられて、かつ大幅にパワーアップ出来る方法はないかと。
そんなジュウゾウの心を見透かすように妖精──シルフィーが飛び回りながら一言。

「何の苦もなく強くなりたいなんて思わないほうがいいわよ」

そんな妖精の物言いにジュウゾウが言い返す。
「うっせえなっ、んな事、言われなくてもわかってるよっ」

「そうかしら?はっきり言えば、ベルゼブブから与えられたあんたの能力だって相当な代物なのよ。
あんたの貰った能力が欲しくて欲しくてたまらない奴なんて、それこそいくらでもいるんだからね」

「はあ?こんな文字通りのクソみたいなチート能力がかよ?」

「そうよ、あんたがクソだ、クソだと貶すその能力は、
自分や家族の魂を売ってでも喉から手が出るほど欲しいっていう人間はゴマンといるのよ。
むしろ、あんたには勿体無いくらいね。
それこそ芋虫に反物質をくれてやるようなもんよ。
それにあんただって、少しは能力が増えたでしょう」

苛立ったジュウゾウが奥歯を強く噛み締め、ギリギリと歯軋りをする。
確かに妖精の言うとおり、自分の力が強くなったのがわかったからだ。

そんな現在のジュウゾウのステータスはこんな具合になっている。

STR=3

VIT=3

DEX=3

AGI=3

INT=3

これでようやく人並といった所だ。
結局、娘の排泄物は吐き出してしまったが、それでも少しは効果があったらしい。

「……何とか我慢して汚物を食っていけば、その内、無双やハーレムも出来るようになるんだろうが、
それにはどれだけ掛かるんだ……」

「手っ取り早く能力をアップさせたいなら、強いモンスターや人間の腐った死体を食べるとかすればいいわよ。
後はそれよりは劣るけど、その排泄物を食べるとかね。
他にも親密になった相手の排泄物を食べると、関係が深いだけ、ボーナス分、能力がアップするわ。
でも、今のあんたには関係ないわね。親しい相手なんていないんだし」

ジュウゾウは頭を抱えた。
そもそも強いモンスターや人間の腐乱死体なんてどこにあるんだと。
手っ取り早く腐った死体を手に入れたければ、モンスターを倒して放置すればいい。

しかし、それはある種のジレンマを抱えていた。
そうだ、食わなければ強くはなれず、強くなければ食うことはできない。
同じように強いモンスターの死骸を探し出せるような力も持ち合わせてはいなかった。

ジュウゾウは溜息を一つつくと、地面にゴロリと寝転がった。
「何でこんなチート貰っちまったんだよ、俺……」
そんなジュウゾウの周りを飛びながらシルフィーが言う。
「文句ばっかりいってても、何も始まらないわよ」


今日もジュウゾウは町にある酒場や食堂をまわって残飯を漁った。
ジャガイモの兄弟の欠片やナスの親戚のヘタ、キャベツの友人のいとこの芯などを袋の中に投げ入れる。
「お、食いかけのチーズ発見、ラッキーっ」

ジュウゾウはポリバケツから見つけたチーズをその場で口に放り込んだ。

ちょっと塩気がきつい気がするが、それでもうまいチーズだった。

「もっとねえかな」
ジュウゾウは更に残飯の中に手を突っ込み、ガサゴソと探っていると店の裏口から、
店主が飛び出してきた。

「こらっ、いつも店の裏口を汚しやがって、今日は勘弁ならねえぞっ」
普段は一目散に逃げるジュウゾウだが、この時ばかりは違った。
「やれるもんならやってみろっ、不味い飯ばっか作りやがってっ」
「……テメエっ、残飯漁りの癖しやがってっ」

能力が少しばかり上がったことで、ジュウゾウは強気になっていた。
ジュウゾウの肩に座っていた妖精のシルフィーが、逃げたほうがいいわよとジュウゾウに囁く。
だが、そんなシルフィーの忠告を無視し、ジュウゾウは店主に殴りかかった。

「死ねっ、おらッ」
掛け声と共に店主の鼻柱目掛けてストレートパンチを放つ。
しかし、ジュウゾウのパンチは虚しく空を切るだけだった。

襲いかかるパンチを半身になって避けた店主が、ジュウゾウの股間を膝で蹴り上げる。

激痛にジュウゾウは一瞬、息が詰まった。そのまま地面に膝をつく。
そこへ店主はジュウゾウの顎にフックの一撃をお見舞いした。
頭から後ろへと倒れこむジュウゾウ。

激高している店主は仰向けに倒れたジュウゾウの脇腹を何度も蹴り付け、顔面を踏みつけた。
「二度とツラ見せるんじゃねえぞっ、このクソ野郎っ」
ジュウゾウに唾を吐いた店主が、裏口へと消えていく。

「だから逃げろって言ったのに」

シルフィーがジュウゾウに治癒の魔法をかける。
すると、たちまち痛みが消え去り、ジュウゾウの傷口が塞がっていった。



「ぜってえ許せねえっ、あのオヤジ……っ」
ジュウゾウはボロのテントの中でいきり立っていた。
「ふーん、でも、今のままじゃ厳しいんじゃないかしらね。こっちは武器もないんだし」
「強くなりてえ……強くなりてえよ……ッ、これじゃあ、あまりにも惨めだ……ッッ」

ジュウゾウの両眼からポロポロと涙が溢れ出てくる。
「あんたが強くなる方法は一つしかないわよ。汚物を食べなさい、ジュウゾウ。
それがベルゼブブが貴方にあげた力なんだから。
そうね、ちょっと待ってなさい」

そういうとシルフィーがテントから外へと出ていく。
そして、少しすると、どこからか見つけてきた腐った蛇の死体をジュウゾウの前に放り投げた。
「……」

「何黙ってるのよ。強くなりたきゃ食べなさいな。ただの蛇の死骸だから、
そこまで強くはなれないけど、それなりに食べていけば店主のオヤジくらいぶっ飛ばせるようにはなるわよ」

ジュウゾウは眼球が白濁し、異臭を放つ蛇の亡骸を手に取ると、その頭を齧った。
途端に吐き気がこみ上げてくる。
それでも必死で我慢し、蛇の頭部を咀嚼しては飲み込んだ。

これなら、あの時に食べた美少女の排泄物の方が、まだマシだった。
いや、確かに吐いてしまったが、しかし、変な高揚感も感じていたのだ。
ジュウゾウは目をつぶり、これはアイドルの出した物だと念じながら、腐敗した蛇を少しずつ前歯で千切りながら嚥下した。


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