烏帽子岩と龍

海辺野海月

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龍の事

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 龍に、普段何をしてるのかを質問してみたわけだけど、なんだか要領を得ない。

「空を飛んでいる事もあれば、休んでいる事もある。穢れを見る事もあれば、その穢れを祓わねばならぬ事もある。人を含めた動物達を見守らねばならぬ事もあるし、見捨てねばならぬ事もある。」

 神様とは違うの?

「神とは見守るもの。手を出すことは世の理として許されぬ。我は神とは違い自由である。何をしても良いし、何もせずとも良い。世の理の範囲内ではあるがな。」

 世の理って?

運命さだめを変えてはならぬ。これは唯一にして絶対の理だ。」 

  なんか良くわかんないや。

 とりあえず死者は生き返せないし、僕が怪我しそうでもそれが運命なら横に居ても教えても助けてもくれないってこと?

「然り。運命は変えられぬ。変えてはならぬものだ。」

 もし変えてしまったら?

「さて?仲間で変えたものの話は聞かぬので、どうなるかは知らぬ。しかし、少なくとも代償として我は消えるであろうな。」 

 消える?死ぬって事?

「我は死なぬので死とは違うかのぅ。存在そのものが消える、とでも言おうか。我が我と感じておるものは無くなるであろうな。」 

 難しいね。

「他に何が起こるか分からぬ。それ故試す様な真似は出来ぬな。最悪この星が消滅する事もありえる。」

 なんだっけ、祖父ちゃんに聞いたことある、バタフライ理論?だっけ。蝶の羽ばたきが、地球の裏側でハリケーンになる。とかって話。
 大した事無いと思った行動が、見知らぬ誰かに大きな影響を及ぼすってやつだよね。

「然り。運命とは人だけでなく全てと繋がっておる。その程度、などとは考えてはならぬものだ。」 

 それって戦争とかテロで死んじゃう人も運命なの?それはなんだか納得出来ないけど。

「あれは人が起こす運命を曲げる行いだ。争い自体は仕方がないものだが、運命に無い結果を多くもたらすものだ。後が大変なので止めて貰いたいものだな。」

 何が大変なのかは教えてくれなかったけど、良い行いで無いことだけは確かなようだね。
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