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一話目:異世界これた早々に命の危機です。
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「長谷川マリ、なんて女性知りません…。」
友則は幾何学模様が描かれた冷たい石畳の上に正座する形で座り、
両手を後ろに縄で縛り上げられていた。
ほぼ、土下座の格好で体を折り曲げた姿は見下げれば背中を晒して空いた状態で
そこに上からのしりと柔らかな感触と人、一人分の体重が乗せられた。
ポンテージも差ながらのきわどい肌を露出させた格好で普段ならその格好に目が行き
鼻を押さえるだろう所だが、彼女に背中にのられた状態ではその姿を見ることはできず
それ以前に今はそんなことにも思考が及ばないほど友則は追い詰められていた。
なんだか分からないままに自分はどこか知らない場所につれてこられたらしい。
そして普段では絶対にお目にかかれないだろう美女たちが友則の前に
彼を待ち受けるように待っていた。
それだけならキャバクラか天国に来たようだが、次の瞬間、その中でも一番露出の高い
赤いボンテージのような服を着た子が友則に一歩近づき、挨拶もなしで
裏蹴りをして友則を転がせた。なんだ?!と面食らう間に後ろ手に縄で縛り上げられ
その場にいる全員に見下ろされる形で正座させられた。
そこからは友則がちょっと理解できないお国事情とうらみつらみの篭った罵詈雑言。
何度か頭を殴られて読めてきた事情は何ともお粗末なものだった。
友則が理解するに
・この国は友則以前に別の日本人、それも少女を巫女として召喚したらしい
・最初こそはその少女は国に貢献した立派な巫女に見えたらしいがとんでもない悪女だった
・自分が宿すチートの光の力を傘に権力を誇示しこの国の将来有望な男子たちを誘惑しこの国の乗っ取りを敢行し、あまつさえ失敗すると国宝を手に逃走し出奔したらしい。
で、盗んだものが国の中枢にとっても国民にとってもそのままに捨て置けない
重要なものらしく、しかしこの国にとっては異世界の面妖な術や論理やチートの
光魔法を駆使して一筋縄では捕まえられず、困り果てた国は異世界の人間の
不祥事なら同じ同郷の人間に始末させるのが一番いいかもしれないと再度の召喚を
行ったらしい。それに引っかかって召喚されたのが、今ここで土下座をする友則だと
帰結する。
…なんかこれってすげー俺、とばっちりじゃないか?
その言葉が頭を掠めて不満が顔に出るとあちらも察したようにイラつくのか
顔を歪めて友則の頭を小突いてくるのだ。
「…だから俺は」
何度目かの堂々巡りに責任の擦り付けに反抗しようと口を開いた友則の首に
冷たい鋭利なモノが押し当てられる。その嫌な感触にそれまでいきがっていた
友則の反抗心も鳴りを潜め、口を閉ざした。
「お前の御託や言い分など我らには必要ない。我らはお前の同胞に被害を受けた。
ならば同胞として責任を取れと言っている。それに反論など求めない。」
ちくりと刺す痛みに何かがにじみ出る感触がする。
押し当てられている剣先が僅かに食い込んだ感触に危機感がうなぎ上りにあがる。
こいつらに友則の正当性などどうでもいいのだ。
ただ同郷同士でぶつかり合わせ、少しでも相手へ報復できれば御の字なのかもしれない。
無理やりに召喚してとか人道的とかそんなものどうでもいいとばかりの
上流社会の人間の傲慢。理不尽に言葉が出ずにぐるぐると蟠る感情に
頭の理性がショートしそうになる寸前に別の女性の声でその場が一瞬静まる。
「騎士団長。彼を追い詰めるのもそこまでにしましょう。彼にもこの事態は災難でしょう。
そして私たちにも彼には行ってほしい事がある。ここはまず和解して手を取り合いましょう。一番の悪は彼ではなく我らから秘宝を奪った元聖女、ハセガワ・マリなのですから」
友則を召喚した連中の中で今まで一言もしゃべらず静かに傍観していた
しかし、その中で一番権力がありそうな女性がこの場にあって不似合いなほど
慈愛に満ちた微笑を浮かべて友則を見下ろして一瞥し、その後に
友則の近くまで歩いてくると膝を折ると屈んで友則と同じ視線の位置まで自分の視線を
下げてからまたふわりと笑った。
「私たちは大変困っているのです。同郷の日本人として貴方たちの恥となる行いを
働いた少女を懲らしめる協力をお願いできませんか?これは私たちとのその契約の印です。
差し上げますので身に着けてください。」
すっとまるで聖体を授ける聖職者のような清らかな淀みない仕草で彼女が持っていた
首飾りを彼女の手から友則の首につけられた。
その所作もすべて疑う余地もないほど優しげでその際に傍に寄った彼女から
伝わるユリのような花のあまやかな匂いも澄んでいるのに
首輪のようなネックレスを下げられた瞬間、ずん、となにか別の重力を帯びたような
ぞくりとする寒気を覚えた。
立ち上がった彼女が、彼女の手であしらわれた首飾りが友則の首にかかっているのを
見てまたふふ、と小さく笑った。
そしてその場にいた連中が皆、彼女に同調するかのように友則の首を見て
くすりと笑ったのを見て、なぜか取り返しの付かないミスをしたような
冷たい汗が友則の背中からジワリと流れた。
「長谷川マリ、なんて女性知りません…。」
友則は幾何学模様が描かれた冷たい石畳の上に正座する形で座り、
両手を後ろに縄で縛り上げられていた。
ほぼ、土下座の格好で体を折り曲げた姿は見下げれば背中を晒して空いた状態で
そこに上からのしりと柔らかな感触と人、一人分の体重が乗せられた。
ポンテージも差ながらのきわどい肌を露出させた格好で普段ならその格好に目が行き
鼻を押さえるだろう所だが、彼女に背中にのられた状態ではその姿を見ることはできず
それ以前に今はそんなことにも思考が及ばないほど友則は追い詰められていた。
なんだか分からないままに自分はどこか知らない場所につれてこられたらしい。
そして普段では絶対にお目にかかれないだろう美女たちが友則の前に
彼を待ち受けるように待っていた。
それだけならキャバクラか天国に来たようだが、次の瞬間、その中でも一番露出の高い
赤いボンテージのような服を着た子が友則に一歩近づき、挨拶もなしで
裏蹴りをして友則を転がせた。なんだ?!と面食らう間に後ろ手に縄で縛り上げられ
その場にいる全員に見下ろされる形で正座させられた。
そこからは友則がちょっと理解できないお国事情とうらみつらみの篭った罵詈雑言。
何度か頭を殴られて読めてきた事情は何ともお粗末なものだった。
友則が理解するに
・この国は友則以前に別の日本人、それも少女を巫女として召喚したらしい
・最初こそはその少女は国に貢献した立派な巫女に見えたらしいがとんでもない悪女だった
・自分が宿すチートの光の力を傘に権力を誇示しこの国の将来有望な男子たちを誘惑しこの国の乗っ取りを敢行し、あまつさえ失敗すると国宝を手に逃走し出奔したらしい。
で、盗んだものが国の中枢にとっても国民にとってもそのままに捨て置けない
重要なものらしく、しかしこの国にとっては異世界の面妖な術や論理やチートの
光魔法を駆使して一筋縄では捕まえられず、困り果てた国は異世界の人間の
不祥事なら同じ同郷の人間に始末させるのが一番いいかもしれないと再度の召喚を
行ったらしい。それに引っかかって召喚されたのが、今ここで土下座をする友則だと
帰結する。
…なんかこれってすげー俺、とばっちりじゃないか?
その言葉が頭を掠めて不満が顔に出るとあちらも察したようにイラつくのか
顔を歪めて友則の頭を小突いてくるのだ。
「…だから俺は」
何度目かの堂々巡りに責任の擦り付けに反抗しようと口を開いた友則の首に
冷たい鋭利なモノが押し当てられる。その嫌な感触にそれまでいきがっていた
友則の反抗心も鳴りを潜め、口を閉ざした。
「お前の御託や言い分など我らには必要ない。我らはお前の同胞に被害を受けた。
ならば同胞として責任を取れと言っている。それに反論など求めない。」
ちくりと刺す痛みに何かがにじみ出る感触がする。
押し当てられている剣先が僅かに食い込んだ感触に危機感がうなぎ上りにあがる。
こいつらに友則の正当性などどうでもいいのだ。
ただ同郷同士でぶつかり合わせ、少しでも相手へ報復できれば御の字なのかもしれない。
無理やりに召喚してとか人道的とかそんなものどうでもいいとばかりの
上流社会の人間の傲慢。理不尽に言葉が出ずにぐるぐると蟠る感情に
頭の理性がショートしそうになる寸前に別の女性の声でその場が一瞬静まる。
「騎士団長。彼を追い詰めるのもそこまでにしましょう。彼にもこの事態は災難でしょう。
そして私たちにも彼には行ってほしい事がある。ここはまず和解して手を取り合いましょう。一番の悪は彼ではなく我らから秘宝を奪った元聖女、ハセガワ・マリなのですから」
友則を召喚した連中の中で今まで一言もしゃべらず静かに傍観していた
しかし、その中で一番権力がありそうな女性がこの場にあって不似合いなほど
慈愛に満ちた微笑を浮かべて友則を見下ろして一瞥し、その後に
友則の近くまで歩いてくると膝を折ると屈んで友則と同じ視線の位置まで自分の視線を
下げてからまたふわりと笑った。
「私たちは大変困っているのです。同郷の日本人として貴方たちの恥となる行いを
働いた少女を懲らしめる協力をお願いできませんか?これは私たちとのその契約の印です。
差し上げますので身に着けてください。」
すっとまるで聖体を授ける聖職者のような清らかな淀みない仕草で彼女が持っていた
首飾りを彼女の手から友則の首につけられた。
その所作もすべて疑う余地もないほど優しげでその際に傍に寄った彼女から
伝わるユリのような花のあまやかな匂いも澄んでいるのに
首輪のようなネックレスを下げられた瞬間、ずん、となにか別の重力を帯びたような
ぞくりとする寒気を覚えた。
立ち上がった彼女が、彼女の手であしらわれた首飾りが友則の首にかかっているのを
見てまたふふ、と小さく笑った。
そしてその場にいた連中が皆、彼女に同調するかのように友則の首を見て
くすりと笑ったのを見て、なぜか取り返しの付かないミスをしたような
冷たい汗が友則の背中からジワリと流れた。
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