俺はどうやらアンチヒロインの後に異世界に来たらしい。

スプーン・フォーク

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五話目:閑話

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友則は光を知覚に感じてとじていた瞳を開いた。
するとそこは見たこともない景色だった。
その見たこともない景色に友則はすぐにこれは夢なんだと理解した。

自分の真上には一点の曇りもない青空がある。
そして自分が寝かされていたベッドと思ったものは真っ白な雲。
みれば自分の周り全てが雲海である。

そして友則を目覚めさせた暖かな光の存在を確かめる。
それは真っ白な翼が6枚もある美しい人間だった。
でも羽があるからきっと天使さまなんだろう。

夢に天使様だなんてどこかのお告げのようだ。
そんな預言者と天使の逸話みたいだなんて思っているとその天使が
やさしい微笑を浮かべて友則に助言を与えてくれる。

「ゲロを吐いている人を仰向けに寝かせてはいけません。喉に詰まらせます。」

はい、天使様。ゲロを吐いている人を仰向けに寝かせません…。
キラキラと後光の光る天使様のお言葉になんてありがたいお言葉をいただいたのだろうと友則は胸がほっこりした。

そしてそのまま、下界で誰かが自分を呼んでいる気がして
再び戻るためにゆっくりと友則はありがたいお言葉とともに目を閉じた。





☆★☆★


「…吐いて寝ちゃったよ…、え、もしかして僕がこの人を介抱するの?(面倒くさい)」

少年は牢屋で気を失った男にため息をついて近づいた。
とりあえず汚れた服くらい脱がせてやろうとして気づいた。

「あれ、脱がせずらい。なにこの服、見たことない。…何者?この人」

少年は獣化すれば暗闇でも闇が見渡せるが、それでは服が脱がせられない。
普段はそれでも獣化なしでもそれなりに獣の性のおかげで少しは夜目が聞くのだが
今は首から下げられた能力封じによって力が出せず普通の人間と同じ視力しかないため近づくまで気づかなかった。
この世界で主に着られる服は頭から被るような貫頭衣だ。
ボタンが沢山付いた服もないではないが、それは貴族が多くそうなるともっとひらひらが多くなる。

「あ、そう言えば名前も聞いてないや」

こんな牢屋に入れられるような人間の名前など確認する気にもならず
聞いていなかったが、それが今は後悔された。
今更、牢屋に入れられた貴族か?いや貴族ならこことは違う牢屋が。
顔も見たことがない。
年は若いだろう。顔は特徴のない顔をしている。
その他の特徴は髪は少しくせのある濃い茶髪。瞳も暗い茶色だった。
耳や尻尾などのない人族だろう。

何とか悪戦苦闘しながら上半身の服を脱がし、裸にすると
自分が寝ていたベッドとは反対の使っていないベッドに仰向けに転がし寝かせた。

そして剥いた服を洗面器に放り投げる。

うわゲロくさっ。
人一倍鼻が利く犬の嗅覚である鼻を押さえる。
実際は吐いたが胃にろくに食べ物がなかったのか量こそは少なかったのだが
つんとした胃液の匂いがたまらない。

でも、それとは別の匂いが…。

犬の鋭い嗅覚だからこそ嗅ぎ分けたといっていいその匂いは
最近はめっきり嗅ぐことのなくなった匂いだった。

「何でこいつから?…異世界の匂いがするんだ?」

首をかしげたが、それは少年が今一人で考えても答えが出ない。
とりあえず、今すべきことは
水でぬらしたタオルでこの気を失った得体の知れない新入りの体を拭いてやることだろう。

「あー、男の体拭いても楽しくない!」

そうぐちぐち愚痴りながらも元来面倒見のいい少年は意外にかいがいしい世話をしてみせた。















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