召喚弱者は静かに暮らしたい!!

ハク・レイホウ

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洗礼式前日5~エンカウント~

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緑色の醜悪な生き物は数えて4匹。
親子の周りを囲むように布陣しており、逃げ出そうにも隙間がない。

「ぬかったな、採取に夢中で気がつかなかった」
お父さまぁ~しっかりしてくださいよぉ~めちゃくちゃ囲まれてますけどぉ~

おそらくこの生き物はゴブリンというものだろう。
前世の知識とまったく遜色ない、その出で立ちに疑う要素がない。
しかも、このゴブリンどもご丁寧に装備品まで着けてやがる。タイマンなら村人でも勝てる相手だか4匹な上に皮の装備を着け、こん棒のようなものを持っている、こちらは戦力としては父さんとノー装備の俺の二人だけ……
勝てるかぁーい
いや、まてよ……これが俺の勇者としての覚醒イベントなら……来たぞ!これは勝つる!!
さぁかかってこいよ、ゴブリンども!!

「くっ、せめてアサヒだけでも……」
フラグ止めんかーい、それは死亡フラグだから!
建てなくていいから、今から俺がちゃちゃっと片付けるから

互いににらみ合いが続くなか痺れを切らしたゴブリンAが父さん目掛けて突っ込んできた。
「一対一なら!」
剣でこん棒を受け止める。
何度か攻防が続き、埒が空かないと判断したゴブリンAは一度仲間の元へと下がり、B、C、Dへとグギャグギャ鳴いて指令をだしている。

「まずいなぁ、一度に来られると相手にできないぞ」
父さんの額から汗が流れ落ちる。
「父さん!下がって」
颯爽と前へと飛び出し、そこら辺で拾った木の棒をゴブリン達へと向ける。
「アサヒ!遊びじゃないんだぞ下がるんだ。」 
まぁまぁ俺のこの聖剣(木の棒)が華麗にゴブリン共を駆逐する様を目に刻みこむんだなぁ!
ゴブリン達へと飛びかかろうとした瞬間、横から現れた影がゴブリン達を爆発四散させる光景が目に入ってきた。

ふぇー俺のターン終了みたいです。

「ふぅ~危なかったですね~もう少し遅かったらどうなっていたか」
そう言い、額の汗を拭うような動作をした人物はどこからどうみてもこの場にふさわしくない格好をしていた。

そう、完全にシスター服なのである。
それも現在はゴブリンの血が所々に付いており、とても怖い。
更にその恐怖を加速させるのが先程、ゴブリンを爆発四散させた得物の正体である。
両腕の肘あたりまでを覆う手袋のような形のガントレットである。それも鉄製であり、見るだけで重そうな。
それをその華奢な身体で平気そうに着けているあたりを見ると相当の手練れである事が窺える。

「ダリスさん、アサヒくん怪我はないですか?」
「あぁ、シスターアルマ。助かりましたありがとうごさいます」
どうやらシスターで合っていたようだ。
そして何気に父さんの名前がダリスということも知った。

「よかったぁ、明日の洗礼式の準備で丁度森に入っていたので今回は助けられましたが次からはきちんと私に声を掛けてくださいね」
「すみません、息子に格好いい所を見せようと無理をしてしまいました」
えぇっ!洗礼式の準備って教会がしてくれるの!
わざわざ森に入らずとも明日はこの身一つで良かったわけね
まぁでも森へ入れたからよしとしよう。
残念ながら勇者覚醒イベントは潰れたけど……

「帰りは私がきちんと責任を持って送り届けますね!」
胸を張り、ドンッとガントレット付きの手で胸元を叩いて見せるシスターアルマに帰りの護衛を任せ、また来た道を戻るのであった。

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