親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

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「また、お前の体を治してくれる者には出会えなかったようだな」

 アルハザードの頭上からネチャネチャと泥をへらでかき混ぜるような声が響いた。

「ああ、テレビといううさん臭い物からの情報だから、あまりあてにはしていなかったけどね」

「だが、あのカミラという楽器弾きは中々の腕前だな。ニャルラトテップも大分気に入っていたようではないか」

「うん、だから彼の部屋の押し入れにあの魔道書を置いて、この世界との入り口を造ったんだけどね」

 アルハザードの足元には巨大な黒猫の姿に戻ったニャルラトテップが横たわっていた。

「今度はもう少し下調べをしてから行く世界を決めようと思うんだ」

「また、あの楽器弾きを連れてかね」

「うん、そのつもりだよ。何かと役に立つからね。特にあの音色にはどんな者も魅了する力があるからね。それにあのギタラという楽器は持ち運びが便利だ。肩に担いで持ち運べる。そこもいいところだね」

「そうか、では次に行く所は決まっているのか」
「そのことなんだけど、偉大なる邪神クトウルフよ、一つだけ教えて欲しいことがある」
「何かね、神を最も呪う者よ、今日の私は気分がいい、一つだけというのであれば答えようではないか」
 アルハザードが頭上を見上げてクスリと笑った。

「では、クトウルフよ、太古の文明の中で最も文明が進化していた時代を御存じかな」
 ダフ、グフ、ダフ、クトウルフの笑い声が地を這った。
「そうだな、地球上では人類が繁栄を滅亡を何度か繰り返している。その中でお前の望むような文明の進んでいるうちの一つは、ムー大陸かな」
「その大陸が発達したのは、いつの時代のことかな」
「確か質問は一つのはずではなかったのかな、まあ良い、確か二万年ほど前に文明が栄え、一万二千年ほど前に海中に没したはずだ」
「ありがとう、クトウルフよ、それだけ分かれば充分だ」
 アルハザードが足元の黒猫、ニヤルラトテップを見下ろした。

 黒猫はサファイア色の瞳を輝かせ、アルハザードをじっと見つめている。
「また、あの楽器弾きの出番らしいな」
「そうだね、こいつに気に入ってもらえるといいけど」

「さあな、お前の言うとおり、神などというものは気まぐれなものだからな。おっと、そう言う私もその一人であったな」

 ダフ、ダフ、グフ、再びクトウルフの笑い声が響いた。
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