親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

10アラブの魔人の食事事情

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 二人でどこまでも続く一本道を歩き続けた。
 相変わらず景色といえば、前方の空に浮かぶ気球だけだった。

「さっきの黒色人は何処かで集団生活をしているのかな」
「このあたりで家族ごとに住みついているらしいね。木の上やほら穴に簡単な寝床を作って、生活しているのだそうだ」
「あんな凶暴な性格なのにきちんと家族は養ってるんだ」
「そうだよ、ライオンや虎と同じだね。知性がなくても自分の妻や子供という認識はあるんだろうね」

「人を襲うのは金品を強奪するためなのかな」
「それもあるね。凶暴で知性がない、まともな仕事ができるとは思えないからね、強盗ぐらいしかできないんだろうね。人を傷つけ、殺すことに何の躊躇もない、むしろそれを楽しんでいる。ああいう人種に会ったのは初めてだね」

 アラブの魔人でも理解できない人種がこの世にはいるということなのか。
「この世といっても一万二千年前の世界だからね、常識が通用しないこともあるさ」

 アルハザードのロから常識という言葉が出ると、ひどく違和感を感じる。
「神谷は神谷の常識があるように、僕には僕の常識がある。それが他人とはかけ離れていてもね、常識とはそんなもんだよ」

 腕時計を見ると間もなく十二時になろうとしていた。
「そろそろ、昼御飯だね」

「君は昼にも食事をするのかい」
「えっ、昼ご飯食べないの」
「食事は朝と晚の二回じゃないのかい」
「へ一、君の国ではそうなんだ」
「僕もいろいろな国を周ったけど、僕の知っている範囲では食事は早めの昼食と夕食の二回、これが常識だよ」

 そういえば、日本でも江戸時代には食事は朝と晚の二回だったと何かの本で読んだ記憶がある。ましてやアルハザードの生きていた時代のエジプトや中東など、裕福な階級以外の庶民に充分な食事が用意できるとは思えない、アルハザードの言うことの方が正しいのだろう。
「朝昼晩三回食事をするのは、かなりきつい肉体労働をする者くらいじゃないかな、現代に肥満が流行っているのは、ろくに体を動かさないのにバカバカ食べるからだろうね」

 肥満は流行りではないのだが、当面アルハザードと一緒の時は一日二食となりそうだ。これならば、朝食のサンドイッチをもう一人分お替りしておけば良かった。

「昼食がない代わりに夕飯はサービスすると言ってるよ」
 アルハザードの肩に乗っている邪神が小さく欠伸をして体を丸めた。

「もう黒色人の生息地は過ぎたようだね」
「それじゃあ、もうあの恐ろしい奴らには会わずにすむんだね」

 初めからそういう場所を選んでくれれば良かったのではないか。

「こいつは戦いを見るのがすきなのさ。僕と黒色人の戦いを観戦したかったんだろうね」
「それだけの理由?」
「それだけの理由さ」

 相手が人間だから良かったものの、獰猛な動物だったら大変なことだ。
「この島にはそういうライオンのような動物はいないそうだ。あの黒色人が一番獰猛で危険な生き物らしいよ。それに相手が獰猛な動物でも大して変わりはしないけどね」

 アラブの魔人にとって、人間もライオンも戦う相手としては大差がないということらしい。
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