親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

23精神力増幅器とその管理人

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「精神力増幅器というからには、精神力を提供する者がいるということですね」

「そうだが……、それは教える訳にはいかないな。偉大なる王ラ・ムーの許可でもあれば別だがね」

「ならば、この機械だけでも存分に見せてもらってもいいですか」

 アルハザードは言いながら、部屋の中央部に設置されている機械をぐるりと見て回った。
神谷もそれに追従した。

 機械の上部からは透明なホースが天井に向かって伸びていて、その中を絶えず霧のような物が上に向かって運ばれているようだ。そして、機械の横からは床に向かってホースが伸びているが、こちらは灰色をしていて中を窺うことはできない。

「この天井に伸びているホースの中身がエネルギーですか」

「そうだよ、これがこの王宮の全てのエネルギー源だ」

 またしても、訊いたことだけに答えてくれた。

 機械の周りを一回りした。部屋の大きさはざっと三十畳くらいだろうか、天井の高さは優に十メートルはあるだろう。その空間の殆どを中央部に置かれた機械、精神力増幅器が占めている。

 天井に繋がっているのが王宮を運営しているエネルギーだとすると、床に繋がっている物は何なのだろうか。

「それは訊いても教えてくれないらしいよ」

 アルハザードが小声で呟いた。

「それと、このエネルギーが何からできているのかもね」

 精神力増幅装置なのだから、文字通り人間の精神力を増幅する装置だ。ならば、そのエネルギー源は人間に決まっている。それとも、この島には人間以外に理性のある生命体が存在するのだろうか。

「いや、この島でも理性のある生命体は人間だけらしいよ、但し、黒色人は別だけどね」

 確かにたった二人にしか遭遇していないが、二人からは理性のかけらも感じ取れなかった。できれば二度と会いたくはない人種だ。

「この装置は何年くらい前から存在しているのですか」

 アルハザードが黄金人に訊ねた。黄金人見ていたメーターから目を上げた。

「この装置は先代の王ラ・ムーがおよそ二千年前に開発したものだ」

 先代の王が二千年前? 一体何年生きたのだ。

「この島の王は代々ラ・ムーを名乗っているのだ。先代のラ・ムー様はおよそ千五百年生きたと言われている。そして現王のラ・ムー様は八百歳だ」

 黄金人が神谷の心の言葉が聞こえたかのように答えた。

 この島の人間はそんなに長寿なのか。

「いや、人間の寿命はどの時代も大して変わらないよ。唯黄金人、特に王の寿命は特別に長いんだよ。理由は自分で調べろって言ってるけどね」

 肝心なところを教えてくれないのはいつもの通りだ。しかし、精神力増幅器を開発したことと千五百年生きたことが無縁とは思われない。

「もちろん、無縁ではないだろう、そこは詳しく調査しないとね」

 そこまで長寿が可能ならば、アルハザードの体を元に戻すことぐらい簡単なことかもしれない。アルハザードの同じことを考えたのだろう目が輝いている。

「そうだね、希望が出てきたよ」

「ところで、君が背負っているのは、昨日大広間で演奏したギタラという楽器ではないのかね」

「ええ、そうですが」

 神谷が答えると「昨日の曲が耳に残っていてね、もう一度聴かせてはもらえないだろうか」今までの高圧的とも取れる態度から一変、優しい語り口となった。

「ええ、構いませんよ、昨日と同じ曲でいいんですね」

 神谷の言葉に黄金色の顔が更に輝きを増した。

「昨日と同じ曲をお願いする、ああ、何と嬉しいことだ」

 この黄金人は、白色人と比べると感情を表に露にする術を知っている。そういえば、昨日の大広間のひな壇に乗っていた他の黄金人も感情を表に現していた。

「では、何か腰かける物をお願いできますか」

 黄金人が機械の裏に消え、すぐに白い箱を持って現れた。

「昨日と同じ大きさの椅子だが、これでいいかね」

「充分です」

 アルハンブラ宮殿の想い出一曲だけなら指慣らしの必要もない、チューニングの確認だけをしてゆっくりと弾き出した。

 最後の和音を弾き終わると、黄金人はいたく感動したようだった。

「素晴らしい音の出る楽器だな。この島にも楽器はあるのだが、このような美しい音は聴いたことがない」

「他の楽器というのはどのよう物なのですか」

「そうだ、君たちは客人として王宮に滞在しているのだったな。それならば晩餐会に招待してもらうといい、私からラ・ムー様にお願いしておこう」

 思いがけず、異国の音楽を耳にする機会を得たようだった。
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