36 / 73
ムー大陸編
23精神力増幅器とその管理人
しおりを挟む
「精神力増幅器というからには、精神力を提供する者がいるということですね」
「そうだが……、それは教える訳にはいかないな。偉大なる王ラ・ムーの許可でもあれば別だがね」
「ならば、この機械だけでも存分に見せてもらってもいいですか」
アルハザードは言いながら、部屋の中央部に設置されている機械をぐるりと見て回った。
神谷もそれに追従した。
機械の上部からは透明なホースが天井に向かって伸びていて、その中を絶えず霧のような物が上に向かって運ばれているようだ。そして、機械の横からは床に向かってホースが伸びているが、こちらは灰色をしていて中を窺うことはできない。
「この天井に伸びているホースの中身がエネルギーですか」
「そうだよ、これがこの王宮の全てのエネルギー源だ」
またしても、訊いたことだけに答えてくれた。
機械の周りを一回りした。部屋の大きさはざっと三十畳くらいだろうか、天井の高さは優に十メートルはあるだろう。その空間の殆どを中央部に置かれた機械、精神力増幅器が占めている。
天井に繋がっているのが王宮を運営しているエネルギーだとすると、床に繋がっている物は何なのだろうか。
「それは訊いても教えてくれないらしいよ」
アルハザードが小声で呟いた。
「それと、このエネルギーが何からできているのかもね」
精神力増幅装置なのだから、文字通り人間の精神力を増幅する装置だ。ならば、そのエネルギー源は人間に決まっている。それとも、この島には人間以外に理性のある生命体が存在するのだろうか。
「いや、この島でも理性のある生命体は人間だけらしいよ、但し、黒色人は別だけどね」
確かにたった二人にしか遭遇していないが、二人からは理性のかけらも感じ取れなかった。できれば二度と会いたくはない人種だ。
「この装置は何年くらい前から存在しているのですか」
アルハザードが黄金人に訊ねた。黄金人見ていたメーターから目を上げた。
「この装置は先代の王ラ・ムーがおよそ二千年前に開発したものだ」
先代の王が二千年前? 一体何年生きたのだ。
「この島の王は代々ラ・ムーを名乗っているのだ。先代のラ・ムー様はおよそ千五百年生きたと言われている。そして現王のラ・ムー様は八百歳だ」
黄金人が神谷の心の言葉が聞こえたかのように答えた。
この島の人間はそんなに長寿なのか。
「いや、人間の寿命はどの時代も大して変わらないよ。唯黄金人、特に王の寿命は特別に長いんだよ。理由は自分で調べろって言ってるけどね」
肝心なところを教えてくれないのはいつもの通りだ。しかし、精神力増幅器を開発したことと千五百年生きたことが無縁とは思われない。
「もちろん、無縁ではないだろう、そこは詳しく調査しないとね」
そこまで長寿が可能ならば、アルハザードの体を元に戻すことぐらい簡単なことかもしれない。アルハザードの同じことを考えたのだろう目が輝いている。
「そうだね、希望が出てきたよ」
「ところで、君が背負っているのは、昨日大広間で演奏したギタラという楽器ではないのかね」
「ええ、そうですが」
神谷が答えると「昨日の曲が耳に残っていてね、もう一度聴かせてはもらえないだろうか」今までの高圧的とも取れる態度から一変、優しい語り口となった。
「ええ、構いませんよ、昨日と同じ曲でいいんですね」
神谷の言葉に黄金色の顔が更に輝きを増した。
「昨日と同じ曲をお願いする、ああ、何と嬉しいことだ」
この黄金人は、白色人と比べると感情を表に露にする術を知っている。そういえば、昨日の大広間のひな壇に乗っていた他の黄金人も感情を表に現していた。
「では、何か腰かける物をお願いできますか」
黄金人が機械の裏に消え、すぐに白い箱を持って現れた。
「昨日と同じ大きさの椅子だが、これでいいかね」
「充分です」
アルハンブラ宮殿の想い出一曲だけなら指慣らしの必要もない、チューニングの確認だけをしてゆっくりと弾き出した。
最後の和音を弾き終わると、黄金人はいたく感動したようだった。
「素晴らしい音の出る楽器だな。この島にも楽器はあるのだが、このような美しい音は聴いたことがない」
「他の楽器というのはどのよう物なのですか」
「そうだ、君たちは客人として王宮に滞在しているのだったな。それならば晩餐会に招待してもらうといい、私からラ・ムー様にお願いしておこう」
思いがけず、異国の音楽を耳にする機会を得たようだった。
「そうだが……、それは教える訳にはいかないな。偉大なる王ラ・ムーの許可でもあれば別だがね」
「ならば、この機械だけでも存分に見せてもらってもいいですか」
アルハザードは言いながら、部屋の中央部に設置されている機械をぐるりと見て回った。
神谷もそれに追従した。
機械の上部からは透明なホースが天井に向かって伸びていて、その中を絶えず霧のような物が上に向かって運ばれているようだ。そして、機械の横からは床に向かってホースが伸びているが、こちらは灰色をしていて中を窺うことはできない。
「この天井に伸びているホースの中身がエネルギーですか」
「そうだよ、これがこの王宮の全てのエネルギー源だ」
またしても、訊いたことだけに答えてくれた。
機械の周りを一回りした。部屋の大きさはざっと三十畳くらいだろうか、天井の高さは優に十メートルはあるだろう。その空間の殆どを中央部に置かれた機械、精神力増幅器が占めている。
天井に繋がっているのが王宮を運営しているエネルギーだとすると、床に繋がっている物は何なのだろうか。
「それは訊いても教えてくれないらしいよ」
アルハザードが小声で呟いた。
「それと、このエネルギーが何からできているのかもね」
精神力増幅装置なのだから、文字通り人間の精神力を増幅する装置だ。ならば、そのエネルギー源は人間に決まっている。それとも、この島には人間以外に理性のある生命体が存在するのだろうか。
「いや、この島でも理性のある生命体は人間だけらしいよ、但し、黒色人は別だけどね」
確かにたった二人にしか遭遇していないが、二人からは理性のかけらも感じ取れなかった。できれば二度と会いたくはない人種だ。
「この装置は何年くらい前から存在しているのですか」
アルハザードが黄金人に訊ねた。黄金人見ていたメーターから目を上げた。
「この装置は先代の王ラ・ムーがおよそ二千年前に開発したものだ」
先代の王が二千年前? 一体何年生きたのだ。
「この島の王は代々ラ・ムーを名乗っているのだ。先代のラ・ムー様はおよそ千五百年生きたと言われている。そして現王のラ・ムー様は八百歳だ」
黄金人が神谷の心の言葉が聞こえたかのように答えた。
この島の人間はそんなに長寿なのか。
「いや、人間の寿命はどの時代も大して変わらないよ。唯黄金人、特に王の寿命は特別に長いんだよ。理由は自分で調べろって言ってるけどね」
肝心なところを教えてくれないのはいつもの通りだ。しかし、精神力増幅器を開発したことと千五百年生きたことが無縁とは思われない。
「もちろん、無縁ではないだろう、そこは詳しく調査しないとね」
そこまで長寿が可能ならば、アルハザードの体を元に戻すことぐらい簡単なことかもしれない。アルハザードの同じことを考えたのだろう目が輝いている。
「そうだね、希望が出てきたよ」
「ところで、君が背負っているのは、昨日大広間で演奏したギタラという楽器ではないのかね」
「ええ、そうですが」
神谷が答えると「昨日の曲が耳に残っていてね、もう一度聴かせてはもらえないだろうか」今までの高圧的とも取れる態度から一変、優しい語り口となった。
「ええ、構いませんよ、昨日と同じ曲でいいんですね」
神谷の言葉に黄金色の顔が更に輝きを増した。
「昨日と同じ曲をお願いする、ああ、何と嬉しいことだ」
この黄金人は、白色人と比べると感情を表に露にする術を知っている。そういえば、昨日の大広間のひな壇に乗っていた他の黄金人も感情を表に現していた。
「では、何か腰かける物をお願いできますか」
黄金人が機械の裏に消え、すぐに白い箱を持って現れた。
「昨日と同じ大きさの椅子だが、これでいいかね」
「充分です」
アルハンブラ宮殿の想い出一曲だけなら指慣らしの必要もない、チューニングの確認だけをしてゆっくりと弾き出した。
最後の和音を弾き終わると、黄金人はいたく感動したようだった。
「素晴らしい音の出る楽器だな。この島にも楽器はあるのだが、このような美しい音は聴いたことがない」
「他の楽器というのはどのよう物なのですか」
「そうだ、君たちは客人として王宮に滞在しているのだったな。それならば晩餐会に招待してもらうといい、私からラ・ムー様にお願いしておこう」
思いがけず、異国の音楽を耳にする機会を得たようだった。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる