親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

26黄金色の飛行船に乗る2

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「では、そなたの体を見せてもらおうか」
 ラ・ム一がアルハザードに語りかけた。

 アルハザードが服を脱ぎだした。顔はすでに切り落としのものに変わっている。気を使って船室からでようとすると、後ろから「気を遣わなくてもいいよ」と声をかけられたが「気を遣っている訳じゃないよ、外の空気が吸いたいんだよ」と言い残して、部屋の外に出た。

 デッキの手すりに手をかけて、外の景色を眺めた。ラ・ム一の言うように、ヒラニプラの街のへは何本かの道路が通じているが、その外は緑の森が広がるばかりである。

 街の外で遭遇した車は時速五十キロ程度の速さだろう。その車で二日かかるということは、一番近くの街までは千キロ以上離れていることになる。
 この広大な大陸で王の統治している国がこのような森に囲まれているのも何か不思議な感じだ。

「神谷、もう済んだから中に入ってもいいよ」
 振り返るとアルハザードは服を着て、いつもの端正な顔に戻っていた。
 船室に入ると、二人は金色の椅子に向かい合って座っていた。
「結論から言うと、僕の体を元に戻すことは可能だそうだ」
 アルハザードが嬉しそうに言った。

「可能性があるが確実ではない、それだけは忘れずにな」
「その可能性というのはどのくらいなんだろうね」
「さあ、今までに試したことのない事例だから、何とも言えないみたいだね」
「でも可能があるってすごいじゃないか」
「そうだね、これも神谷のお陰かな」
「王宮に戻ったら早速治療の準備をすることにしよう。だが、せっかくこの飛行船でここまで来たのだ、暫く空の旅を楽しもうではないか」


 ラ・ムーの言葉は優しく語りかけてくるのだが、底には否と言わせない威厳があった。

 窓から外を見ると、少し離れたところに黄色い飛行船が飛んでいた。

「夫々の人種用の飛行船もあるんですね、皆精神力増幅装置で動いているんですか」

「そうだ、この国の動力は全てがその装置だ、国から外へ出る時の車もそうだ」

 アルハザードの問いかけにラ・ムーは眉も動かさず静かに答える。

「僕たちの頭の中に映像が送られてくるのも、その装置を経由してですか」

 神谷が会話に割って入った。

「あれは簡易式の増幅装置だ、ほら、これだよ」

 ラ・ムーが自分の胸を指差した。すると、そこには今までは洋服と同じ金色のために気づけなかったが、グラムダルクリッチと同じ花の文様の刺繍があった。

「これを使ってそなた達の心に映像を送っていたのだよ、だから、この装置を持たないそなた達は映像を受け取るだけで送ることはできないのだ」

「だから、僕たちがこの島の人間ではないことが分かったのですか」

「この刺繍は黄金人と王宮に仕えている白色人にしか与えられていない物だ、そなた達がこの島の者ではないことが分かったのは、脳の波動がこの島の住民と違っているからだ。だから、増幅器を使うことができないのだ。辛うじて映像を受け取ることができるようだがね」
 アルハザードの問いかけにラ・ムーは相変わらず淡々と答えている。

「では、僕たちは映像を受け取るだけですか」

「今のところはそうだ、しかし、一年ほど島に滞在して波動を会わせる訓練を積めばできるようになるのではないかな」

 そう言うとラ・ムーは席を立って窓から外を眺めだした。もう話は終わりということなのだろう。

 飛行船は約二時間ほどヒラニプラの上空を旋回し、王宮に戻った。その間ラ・ムーに精神力増幅器について色々と訊くつもりだったのだが、いずれ分かる、というばかりで、まるで取り合ってはくれず、神谷がギターを弾き、思いがけず空の上の演奏会となった。

 飛行船が王宮の最上階に降り立つと、大勢の白色人が部屋で待っていた。おそらくはラ・ムーが彼らの意識に「もうすぐ戻る」というメッセージを送ったのだろう。

 天井が閉じた部屋の床に降りると、白色人たちが船体の下部にあるふたを開けて床から伸びている透明なホースをそこに差し込んでいた。ホースの中には霧のような物が船体に注ぎ込まれていた。

「あれはエネルギー注入だね」

「あの霧みたいなのは例の増幅器で作ったやつだよね」

「そうだろうな、ラ・ムーによると他にエネルギー源はないそうだからね」

「あんな大きな船を何時間も動かせるんだから、そうとうの動力源だよね」

「そうだな、どんな風にそれを採取しているのかを見たいね」

 アルハザードの声がいつにも増して弾んでいた。無理もないもうすぐ長い放浪から解放されるかもしれないのだから。

 ラ・ムーが船から降りて二人に近づいて来た。

「二人とも、私の後について来るがいい」

 と言って背中を向けて歩き出した。いつもついているはずの伴の者はだれもいない。

 ラ・ムーは階段を降りて、建物の最下段と思われるフロアについた。

「ここは黄金人の中でも限られた者しか入れない部屋だ」

 それだけを言うと壁に手をついた。壁に人が通れる穴があき、三人は中に入るこことができた。

 部屋の中は証明設備がないのか、薄暗く、奥の壁一面が透明な板張りになっていた。

 その透明な板を通して隣の部屋の様子が見える。その光景に思わず息を飲んだ。

 隣の部屋はかなり広いようで、全てを見渡せる訳ではないが、見える範囲だけでも五十人以上の青色人が直立不動の姿勢をとって、其々が一人がやっと入れる大きさの透明な箱に収まっている。箱の上部には透明のホースが取り入つけられていて、全てが天井に繋がっている。ホースの中は青い霧状の物が天井に向かって動いていた。

 これって……。

「そうだ、これが精神力増幅装置のエネルギー源だ、今日は青色人の番のようだな」

 ラ・ムーが隣の部屋の様子を覗き込みながら言った。

「つまりは、人間の生体エネルギーを吸い取ってる訳だね」

 アルハザードがぼそりと呟いた。

「この装置は日によって中に入る人種が違う、今日は青色人、明日は赤色人いうようにね」

「なぜ日毎に人種が変わるんですか」

「人種によって精神の構造が少しずつ違うのだよ。例えば青色人は他の人種に比べて性格が荒っぽい、だから警備兵や戦士に向いているのだが、増幅器にかける時には、そのあらっぽいところを濾さなくてはならない、だからフィルターも他の人種の物とは違う。そのように人種によってフィルターの種類が違うのだよ」

「このシステムを先代のラ・ムーが発明したんですね」

「そうだ、我が偉大なる父の発明だ、この装置のお陰で、この国の文明は飛躍的に進歩したと言っていいだろう」
 ラ・ムーが口ひげをしごきながら、微笑んだ。
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