親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

34黒い玉の行き先

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 部屋に戻り、一人くつろいでいると、アルハザードが部屋に戻って来た。

「ラ・ムーが君のことを褒めていたよ、中々がんばってるって」

「がんばるといっても、寝転がってるだけだけどね。それよりも、今日は面白い物が見られそうだよ」

「それってやっぱり今日出かけて行った車に関係すること」

「そうだろうな、あの時間に出発したのなら、夕食後にワインを飲みながら見られるかもしれないな」

 アルハザードには彼の言う「面白い物」についての見当がついているのだろう。常人の神谷には想像もできるはずもないが。

 夕食後に部屋で赤ワインを飲んでいると、頭の中に赤い車の映像が浮かんだ。

「いよいよ始まるようだね」

 アルハザードが楽しそうに言った時、目の前に五十インチはあろうかというスクリーンが現れた。

「これって神様のサービス」

「そうだよ、必要なら録画もしようかって言ってるよ」

「いや、取り敢えず必要があればその時に頼むよ」

「それじゃあ、黙って見ているとしようか」

 スクリーンにヒラニプラの外で歩いた黒っぽい道が映っている。そこを赤色人の乗る赤い車が走っている。道路の周りに茂みしかないところをみると、初めに神谷たちがムー大陸に出現したあたりかもしれない。

 車が走っている映像が延々と続き、三十分ほど経った頃だろうか、景色は岩が茂みは姿を消し、周りが切り立った崖などの岩場が目立つようになってきた。もちろん道に街頭などなく、月明かりと車の前方から発せられる光のみの薄暗さだ。

 不意に車が止まった。

 車のドアが開き、赤色人が車から降りて来た。

 道路から浮き上がっていた車も静かに着地している。

 赤色人がトランクルームを開けて、黒い袋を取り出し、それを背負った。黒色人を警戒しているのだろうか、あたりを見回している。

 赤色人が車から離れたとことで、引きの映像となり、周りが見渡せるようになった、道路の周辺は大小の岩があるばかりで荒野と言う言葉がぴったりの光景だ。

 赤色人が袋を背負ったまま大きな石の影に隠れた。ほんの数秒後、現れた赤色人は右手に空の袋を抱えていた。中にあった玉は岩の影に捨てたようだ。

 何事もなかったかのように赤色人は車に戻るとUターンをして、来た道を引き返して来た。

 確かラ・ムーは一番近い国でも車で二日かかると言っていた。ということは、その半分の距離の場所に玉を捨てたということになる。

「黒い玉は荒野に捨てられるんだね」

「そのようだね、他の車に積み込まれた玉も、同じ扱いを受けているようだね」

 荒野に捨てられる黒い玉、何か嫌な感じがする。
「その予感は多分当たっているよ」

 アルハザードが言った途端に映像が途切れ、スクリーンも姿を消した。

 翌朝も九時に目が覚めると、すでにアルハザードが部屋の隅のテーブルの上に広げた紙を熱心に覗き込んでいた。邪神からの情報が何か書かれているのだろうか。

「起きたかい、僕の行っている訓練のことだけど、もう少し早く進める方法があるみたいだ」

「それは君だからできることなのかい」

「そうだな、他にやったことなある奴がいないから、何とも言えないけど、多分そういうことだろうね」

「それで、訓練が終わるまで後どのくらいかかるんだい」

「それは何とも言えないが、あの生体エネルギーに同調できるようになるくらいなら、一週間のあれば大丈夫じゃないかな」

 それがすごいことなのかどうかは、良く分からない。

「ならば、君の体の治療も早く始められるんじゃないのかい」

「そうだといいんだけどね」

 目の前に邪神が用意してくれた水の入ったグラスが現れた。

 アルハザードの手にしたグラスには赤い色のついた水が入っている、訓練に備えて栄養補給をしているのだろう。

 昼食後、アルハザードはグラムダルクリッチに伴われて訓練に出かけて行った。

 一人部屋に残った神谷は、そのうちラ・ムーからお呼びがかかるだろうと思っていると、不意に頭の中に中の広いMRIの中で横になっているアルハザードとそれを監視するように見つめている黄金人、そしてその傍らに立っているラ・ムーの映像が浮かんだ。

 どういう訳か、今日はアルハザードの訓練をラ・ムーが見学しているようだ。

 今日はラ・ムーからのお呼びはかからないかもしれない、と思って床に横になっていると、頭の中に車が走って王宮の入り口に入って来る映像が浮かんだ。車の色は赤だ、昨日スクリーンで見た赤色人の操縦する車が王宮に帰って来たようだ。

 いつもよりも二時間ほど遅くアルハザードがあ部屋に戻って来た。その間ラ・ムーからの呼び出しもなく、部屋でのんびり過ごすことができた。

「今日は時間がかかったんだね」

「うん、今日はなぜかラ・ムーがずっと立ち会っていてね、休憩を挟んで二回あの機械に入れられたんだ」

「一日一回が限界なんじゃなかったのかい」

「そのはずだけど、一回目の訓練が終わった時に黄金人がラ・ムーと話をして、良く分からないけどもう一回ということになったんだ」

「理由は分からないの」

「ああ、こいつが教えてくれないからね」

 アルハザードが足元の邪神を見た。

「でも、そのお陰でこんなことができるようになったよ」

 アルハザードが両掌を胸に当てた、今まで気がつかなかったが、そこには金色人やグラムダルクリッチがつけている文様を彫り込んだブローチのような小さいアクセサリーがついていた。

 頭の中にアルハザードの姿の映像が浮かんだ。

「今まではこいつの力を借りていたけど、今のは僕自身の力で神谷に映像を送ったんだ」

「へー、すごいね、そのブローチは」

「小さい簡易式の精神力増幅装置らしいよ、取り敢えず貸してくれたんだ、多分使えるだろうからって」

「ふーん、何かレンタルのスマホみたいだね」

「そうだな、正にその通りだ。しかし、これでこの王宮の装置を使える方向に一歩近づいた思うよ」

 体を丸めた足元の邪神が「フン」と鼻を鳴らした。
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