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ムー大陸編
53食物連鎖の崩壊
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アルハザードが午後の治療から部屋に戻ってきた。
「少しずつだけど体が元に戻ってきたよ」
「そうなのかい、すごいじゃないか」
「ああ、まだ素顔を見せる気にはならないけど、あと十日くらいで完全に元に戻るんじゃないかな」
心なしか魔人の声が弾んでいる。
「それじゃあ、現代に帰れる日も近いってことでいいのかな」
「ああ、そうだね。それについては、今日ラ.ム一からまた体が元に戻ってもこの国に住まないかと言われたけどね」
「それで何と答えたんだい」
「考えさせてくれと言ったら、もしこの国に住むのならば、千•年くらい寿命を与えようかと旨ゎれたよ。神谷に五百年ギタラを弾かせたいように、僕に千年間黒鳥を退治させたいんじゃないかな」
「まったく、自分の都合しか考えていないんだね」
「高い地位にいる人間なんてどの時代も同じさ、自分たち以外の存在なんか自分たちのためにあると思っている」
「でも、十日もあったら後一回くらいこの王宮で黒鳥退治をするかもしれないよ」
「そのくらいは構わないさ、体を治してもらっているんだからね、少しくらいは役に立ってあげないとね。運動にもなるしね」
「命がけの運動だね」
「あのくらいのことで命にかかわることはないよ」
アルハザードにとって黒鳥退治などは、普通の人間にとってのジョギング程度のことなのかもしれない。
その日は夕方から雨が降り出し、夜半にはかなり強い雨脚となった。
「結構降ってきたみたいだね」
いつものようにワインを飲みながらアルハザードが話し始めると、目の前に何度か目にした五十インチのスクリーンが現れた。
映像はヒラニプラの外の様子を上空から映した物のようだ。
「雨の映像なんか、意味があるのかな」
「こいつが見せているんだから、何か意味があるんだろうね」
アルハザードが傍らで丸くなっている邪神の頭をなでた。
映像は神谷たちがム一大陸に現れた場所と同じく黒っぽい道が延々と続いている。
「こんな所を見ても何もないよね」
神谷が言った途端に画面の隅に黒い人影が写った。二度と会いたくない人種、黒色人だ。
「黒色人の生息地らしいね」
画面の中央付近に黒色人が三人、大人の男女と子供、カップルとその子供だろうか、道を歩きながら何かを指差してしきりと話をしている。
黒色人たちが指をさしている先の映像がアップになった。それは道の脇に生えている雑草だった。
画面を凝視していると、草がみるみる萎れているのが画面を通しても分かる。
「これって、やっぱり酸性雨のせいだよね」
「もちろんそうだよ。彼らにはそんな知識などないから、どうして枯れているのか不思議なんだろうね」
「彼らは草を食べる訳じゃないよね」
「草は食べないそうだ。基本は黒い蜥蜴のような生物を生のまま丸飲みにするらしい、その他に森の中の木の実なんかも食べるみたいだけどね」
蜥蜴を生で丸のみ、考えただけでも身の毛がよだつ光景だ。
「邪悪な生き物が邪悪な生き物を食料としている、別に特別なことではないよ。でも、その生き物が生まれる過程はかなり特殊だね」
画面が切り替わり、森の中と思われる杉のような木が何本も生えている場所になった。すでに木々の葉は殆どなくなくなり、細い木などは枯れているのだろう地面に横倒しになっている
「森の木も全て枯れてしまうのかな」
「まあ、時間の問題だね」
「問題はあるのかい」
「差し当たっての問題は、黒色人が食べるトカゲは木の葉を食料にしているから、それがなくなると死んでしまうかもしれないね。もちろん黒色人が偶に食べる木の実もなくなるね」
「食料とそれを食べる捕食者のバランスが崩れるってことだね」
「そういうことになるね」
「だとすると、黒色人がヒラニブラを襲う、なんてこともありうるかな」
「この国を襲う以前に他の国が襲われるだろうね。黒色人や青色人の国なんて何の防備もしてないだろうしね」
「そうなると、各国からの貢物に影響が出るんだろうね」
「そうだね、この国の農作物の収穫が全滅状態の上に貢物がなくなると王族も困るだろうね」
「ラ・ムーはこのことを知ってるのかな」
「まだ知らないだろうが、王宮で栽培している植物や国の外のオレンジ色の実の成る木が枯れてしまったことから、薄々分かってはいるんだろうね。ヒラニブラの神もまだ原因について教えていないようだから、それも分かっていないね」
「早く教えてあげればいいのにね」
「それを教えるということは精神力増幅器の存在を否定することだ。いいかい、この国の動力源はあの装置しかないんだ、あの装置がなければ、この時代の地球の他の大陸と同じ旧石器時代と同じ生活をしなければならないんだ。一度こういう生活を味わった人間が原始的な生活に戻れると思うかい」
まあ、無理かなと思う。特にラ・ム—などはこのままの生活を後千年は続けるつもりでいるのだ。
「だから、黒鳥が出たらそれを退治する、黒色人とは戦う、そんな対処療法しかないんだよ」
「根治ができないということだね」
「あの装置がある限りはね」
しかしその装置のお陰で体が元に戻るかもしれないアルハザードから次の言葉が出ることはなかった。
「少しずつだけど体が元に戻ってきたよ」
「そうなのかい、すごいじゃないか」
「ああ、まだ素顔を見せる気にはならないけど、あと十日くらいで完全に元に戻るんじゃないかな」
心なしか魔人の声が弾んでいる。
「それじゃあ、現代に帰れる日も近いってことでいいのかな」
「ああ、そうだね。それについては、今日ラ.ム一からまた体が元に戻ってもこの国に住まないかと言われたけどね」
「それで何と答えたんだい」
「考えさせてくれと言ったら、もしこの国に住むのならば、千•年くらい寿命を与えようかと旨ゎれたよ。神谷に五百年ギタラを弾かせたいように、僕に千年間黒鳥を退治させたいんじゃないかな」
「まったく、自分の都合しか考えていないんだね」
「高い地位にいる人間なんてどの時代も同じさ、自分たち以外の存在なんか自分たちのためにあると思っている」
「でも、十日もあったら後一回くらいこの王宮で黒鳥退治をするかもしれないよ」
「そのくらいは構わないさ、体を治してもらっているんだからね、少しくらいは役に立ってあげないとね。運動にもなるしね」
「命がけの運動だね」
「あのくらいのことで命にかかわることはないよ」
アルハザードにとって黒鳥退治などは、普通の人間にとってのジョギング程度のことなのかもしれない。
その日は夕方から雨が降り出し、夜半にはかなり強い雨脚となった。
「結構降ってきたみたいだね」
いつものようにワインを飲みながらアルハザードが話し始めると、目の前に何度か目にした五十インチのスクリーンが現れた。
映像はヒラニプラの外の様子を上空から映した物のようだ。
「雨の映像なんか、意味があるのかな」
「こいつが見せているんだから、何か意味があるんだろうね」
アルハザードが傍らで丸くなっている邪神の頭をなでた。
映像は神谷たちがム一大陸に現れた場所と同じく黒っぽい道が延々と続いている。
「こんな所を見ても何もないよね」
神谷が言った途端に画面の隅に黒い人影が写った。二度と会いたくない人種、黒色人だ。
「黒色人の生息地らしいね」
画面の中央付近に黒色人が三人、大人の男女と子供、カップルとその子供だろうか、道を歩きながら何かを指差してしきりと話をしている。
黒色人たちが指をさしている先の映像がアップになった。それは道の脇に生えている雑草だった。
画面を凝視していると、草がみるみる萎れているのが画面を通しても分かる。
「これって、やっぱり酸性雨のせいだよね」
「もちろんそうだよ。彼らにはそんな知識などないから、どうして枯れているのか不思議なんだろうね」
「彼らは草を食べる訳じゃないよね」
「草は食べないそうだ。基本は黒い蜥蜴のような生物を生のまま丸飲みにするらしい、その他に森の中の木の実なんかも食べるみたいだけどね」
蜥蜴を生で丸のみ、考えただけでも身の毛がよだつ光景だ。
「邪悪な生き物が邪悪な生き物を食料としている、別に特別なことではないよ。でも、その生き物が生まれる過程はかなり特殊だね」
画面が切り替わり、森の中と思われる杉のような木が何本も生えている場所になった。すでに木々の葉は殆どなくなくなり、細い木などは枯れているのだろう地面に横倒しになっている
「森の木も全て枯れてしまうのかな」
「まあ、時間の問題だね」
「問題はあるのかい」
「差し当たっての問題は、黒色人が食べるトカゲは木の葉を食料にしているから、それがなくなると死んでしまうかもしれないね。もちろん黒色人が偶に食べる木の実もなくなるね」
「食料とそれを食べる捕食者のバランスが崩れるってことだね」
「そういうことになるね」
「だとすると、黒色人がヒラニブラを襲う、なんてこともありうるかな」
「この国を襲う以前に他の国が襲われるだろうね。黒色人や青色人の国なんて何の防備もしてないだろうしね」
「そうなると、各国からの貢物に影響が出るんだろうね」
「そうだね、この国の農作物の収穫が全滅状態の上に貢物がなくなると王族も困るだろうね」
「ラ・ムーはこのことを知ってるのかな」
「まだ知らないだろうが、王宮で栽培している植物や国の外のオレンジ色の実の成る木が枯れてしまったことから、薄々分かってはいるんだろうね。ヒラニブラの神もまだ原因について教えていないようだから、それも分かっていないね」
「早く教えてあげればいいのにね」
「それを教えるということは精神力増幅器の存在を否定することだ。いいかい、この国の動力源はあの装置しかないんだ、あの装置がなければ、この時代の地球の他の大陸と同じ旧石器時代と同じ生活をしなければならないんだ。一度こういう生活を味わった人間が原始的な生活に戻れると思うかい」
まあ、無理かなと思う。特にラ・ム—などはこのままの生活を後千年は続けるつもりでいるのだ。
「だから、黒鳥が出たらそれを退治する、黒色人とは戦う、そんな対処療法しかないんだよ」
「根治ができないということだね」
「あの装置がある限りはね」
しかしその装置のお陰で体が元に戻るかもしれないアルハザードから次の言葉が出ることはなかった。
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