69 / 73
ムー大陸編
56魔人の酸性雨対策
しおりを挟む
アルハザードが再び黒鳥を退治して三日経過したが、王宮の上空で黒い飛行物体を見ることなくなった。
前回は退治した翌日には姿を見せていたというのに。
「なぜか黒鳥が飛んで来ないね」
夕食後にワインを飲みながらアルハザードに話しかけた。
「ああ、この国の神が黒い玉から生まれる生命の比率を変えたからね」
「どういうこと」
「あの玉から生まれる生物の割合は、この国の神の力により決められていると前に話したろう。蜥蜴のような生き物の生まれる割合を増やして、黒鳥はほんの僅かにしたんだ。だから、この国に飛来する黒鳥はいないんだよ」
「それじゃあ、ラ・ムーが心配していたようにあの鳥のためにこの国が滅ぶことはないんだね」
「多分としか答えようがないけど、そうかな」
「初めからこうすれば良かったんじゃないのかな」
「神谷は会社員の経験がないから分からないんだろうけど、組織には面倒な決まりがあるのだよ、この案件で言えば、上司の決済印をもらうのに時間がかかっただけのことだよ」
「上司というのは、この国の神様の上位の神様ってこと」
「そういうことだね」
神様の世界も人間の会社組織のように面倒な手続きが必要なようだ。この国の神様は、さしずめ中間管理職といったところなのだろうか。
「いや、もっと下の方、平社員だね」
では、決済印が中々もらえないのも致し方ないのだろう。
「この時代、地球は旧石器時代だからね、上位の神様は天界にいて、部下に人間社会の管理をさせているんだよ。もう少し文明が発達した時代になると、自分たちが直接ちょっかいを出してくるんだ、繁栄という名のもとにね」
「平社員はお役御免という訳かい」
「そうだね、神ではなく、精霊と呼ばれたり、人として生まれて上司からの指導で人々を導いたりするんだろうね」
「それじゃあ、この島の王ラ・ムーも神様の経験があるの?」
「いや、ないよ。あったら他人の命を削って自分の寿命を延ばしたりはしないだろう。この島は天上界にとって実験的な場らしい、だからこの時代にここだけが他の場所とは全く違った文明の発達の仕方をしているんだ、そして監督をまかされている神も新米なのさ」
「それじゃあ、あの増幅器も神の意図していたことなのかな」
「いや、あの機械は神も考えていなかったイレギュラーな装置だよ。先代のラ・ムーはおそらくは天才だったんだろう。天上界でも考えつかない装置を造ってしまったんだから」
「でも、そのせいでこの島が滅ぶとしたら、責任は先代のラ・ムーということになるのかな」
「先代の王はあの装置を開発したために千年以上生きた、しかし、その像が何度も天災で破壊されてしまうということはどういうことか分かるだろう」
「天上界が怒っているってことだよね」
「そういうことだね、そして現王のラ・ムーもまたその装置を使い続けているということは同罪ということになるね」
では、その装置で体を治そうとしている君は……そこで何とか思考を停止した。
「同罪だろうね、そんなこと気にもかけていないけどね」
アルハザードはそれきり口を開こうとはしなかった。この話題は神谷の口を挟むことではないのかもしれない。仮にも相手はアラブの魔人と呼ばれた男だ。常人の倫理観など当てはまる訳はないのだ。
「もう殆ど元に戻ったよ、神谷には完全に戻ってから見せるけど、後二回で完全体だね」
治療から戻ったアルハザードの涼やかな声が弾んでいた。邪神は相変わらず彼の足元で体を丸めている。
「何とか間に合いそうだね」
間に合うとは……、あまり深く考えない方が良さそうだ。
「神谷は深く考える必要はないよ。この島にいるのも後わずかだ。観光気分でと言っても、何も見るところなどないか。とにかく気楽にしていてよ」
最後に見たいもの、と思っていると頭の中にラ・ムーの映像が浮かんだ。間もなくグラムダルクリッチが来るのだろうと思っていると、すぐに部屋の壁に穴が開いて、無愛想な白色人が入って来た。
「ラ・ムー様がお呼びです、一緒にどうぞ」
相変わらずグラムダルクリッチの言葉には愛想のかけらもない。
後について最上階の部屋に入ると、ラ・ムーは窓の外を眺めていた。先日とは違い黒鳥は一匹も飛んでいない。
「ここ数日あの黒鳥はこの国に飛んでは来ないようだな」
ラ・ムーの声は静かに威厳に満ちていた。
「理由は分からぬが、そなた黒鳥を退治してもらう必要はなくなったようだな」
「そのようですね」
「しかし、他にも問題がない訳ではない」
「問題と言いますと」
「実はこの国だけではなく、この島全体の植物が枯れてしまいつつあるのだよ。黒鳥がこの国に飛来するようになったのも、元々は猛毒の木の実が成る木が枯れてしまったことが原因だ。その他に食料となる野菜もどんどん枯れてしまっている、このままでは近い将来食料不足になることは間違いない。困ったことだ」
「どういう状況で植物が枯れてしまうのですか」
「それが雨が降るたびに枯れてしまうようなのだよ」
そこまで分かっているのならば、対抗策はあるのではないか。
「では、植物が雨にかからないようにすれば良いのではないですか」
「うむ、しかし植物というものは太陽の光と水がないと育たぬものだ、雨に当たらないようにすると、どの道育たぬのではないか」
アルハザードが口を閉ざし考え込んだ。あの黒鳥を捕らえた仕掛けのように、何かの対抗策を考えているのだろう。
「僕に考えがあります。少し時間をください、部屋に戻ってその考えを整理してみます」
「そうか、それはありがたい、では頼んだぞ」
ラ・ムーの部屋を辞し、部屋に戻るとアルハザードは、邪神の出した紙の束に鉛筆で、何かの図柄をとてつもない早さで描き始めた。
邪魔をしないように静かに見守っていると「神谷、BGMを頼むよ」と紙から目を離さずにアルハザードが言ったので、邪神へのサービスも兼ねて、軽快な曲を弾いた。
十分ほどでアルハザードの作業が終わった。
「こんなのどうかな」
アルハザードが手にした紙をこちらに向けた。
そこには何か建物の図面らしきものが描かれていた。
「今のは図面だけどこちらが完成予想図だ」
二枚目に描かれていたのは中に放水設備のあるビニールハウスだった。
「この島の地下水はまだ酸性化していない、この島にはビニールはないから、王宮の窓にも使われている透明な板で周りを囲み、地下水を放水すれば植物は育つだろう」
現代の大規模なハウス栽培の建物なのだが、地下水を汲み上げる設備はどうするのだろうか。まさか、この時代にはあり得ないモーターなどは使えないだろう。
「手押し式のポンプを使えばいいだろう。日本だって昔は井戸水を汲み上げるのに使ってたんだよ」
アルハザードが三枚目の紙を見せた、それはポンプ式の汲み上げ機の設計図だった。
「これを作るのはもちろんこいつだけどね」
アルハザードが足元で丸まっている邪神を指差した。
前回は退治した翌日には姿を見せていたというのに。
「なぜか黒鳥が飛んで来ないね」
夕食後にワインを飲みながらアルハザードに話しかけた。
「ああ、この国の神が黒い玉から生まれる生命の比率を変えたからね」
「どういうこと」
「あの玉から生まれる生物の割合は、この国の神の力により決められていると前に話したろう。蜥蜴のような生き物の生まれる割合を増やして、黒鳥はほんの僅かにしたんだ。だから、この国に飛来する黒鳥はいないんだよ」
「それじゃあ、ラ・ムーが心配していたようにあの鳥のためにこの国が滅ぶことはないんだね」
「多分としか答えようがないけど、そうかな」
「初めからこうすれば良かったんじゃないのかな」
「神谷は会社員の経験がないから分からないんだろうけど、組織には面倒な決まりがあるのだよ、この案件で言えば、上司の決済印をもらうのに時間がかかっただけのことだよ」
「上司というのは、この国の神様の上位の神様ってこと」
「そういうことだね」
神様の世界も人間の会社組織のように面倒な手続きが必要なようだ。この国の神様は、さしずめ中間管理職といったところなのだろうか。
「いや、もっと下の方、平社員だね」
では、決済印が中々もらえないのも致し方ないのだろう。
「この時代、地球は旧石器時代だからね、上位の神様は天界にいて、部下に人間社会の管理をさせているんだよ。もう少し文明が発達した時代になると、自分たちが直接ちょっかいを出してくるんだ、繁栄という名のもとにね」
「平社員はお役御免という訳かい」
「そうだね、神ではなく、精霊と呼ばれたり、人として生まれて上司からの指導で人々を導いたりするんだろうね」
「それじゃあ、この島の王ラ・ムーも神様の経験があるの?」
「いや、ないよ。あったら他人の命を削って自分の寿命を延ばしたりはしないだろう。この島は天上界にとって実験的な場らしい、だからこの時代にここだけが他の場所とは全く違った文明の発達の仕方をしているんだ、そして監督をまかされている神も新米なのさ」
「それじゃあ、あの増幅器も神の意図していたことなのかな」
「いや、あの機械は神も考えていなかったイレギュラーな装置だよ。先代のラ・ムーはおそらくは天才だったんだろう。天上界でも考えつかない装置を造ってしまったんだから」
「でも、そのせいでこの島が滅ぶとしたら、責任は先代のラ・ムーということになるのかな」
「先代の王はあの装置を開発したために千年以上生きた、しかし、その像が何度も天災で破壊されてしまうということはどういうことか分かるだろう」
「天上界が怒っているってことだよね」
「そういうことだね、そして現王のラ・ムーもまたその装置を使い続けているということは同罪ということになるね」
では、その装置で体を治そうとしている君は……そこで何とか思考を停止した。
「同罪だろうね、そんなこと気にもかけていないけどね」
アルハザードはそれきり口を開こうとはしなかった。この話題は神谷の口を挟むことではないのかもしれない。仮にも相手はアラブの魔人と呼ばれた男だ。常人の倫理観など当てはまる訳はないのだ。
「もう殆ど元に戻ったよ、神谷には完全に戻ってから見せるけど、後二回で完全体だね」
治療から戻ったアルハザードの涼やかな声が弾んでいた。邪神は相変わらず彼の足元で体を丸めている。
「何とか間に合いそうだね」
間に合うとは……、あまり深く考えない方が良さそうだ。
「神谷は深く考える必要はないよ。この島にいるのも後わずかだ。観光気分でと言っても、何も見るところなどないか。とにかく気楽にしていてよ」
最後に見たいもの、と思っていると頭の中にラ・ムーの映像が浮かんだ。間もなくグラムダルクリッチが来るのだろうと思っていると、すぐに部屋の壁に穴が開いて、無愛想な白色人が入って来た。
「ラ・ムー様がお呼びです、一緒にどうぞ」
相変わらずグラムダルクリッチの言葉には愛想のかけらもない。
後について最上階の部屋に入ると、ラ・ムーは窓の外を眺めていた。先日とは違い黒鳥は一匹も飛んでいない。
「ここ数日あの黒鳥はこの国に飛んでは来ないようだな」
ラ・ムーの声は静かに威厳に満ちていた。
「理由は分からぬが、そなた黒鳥を退治してもらう必要はなくなったようだな」
「そのようですね」
「しかし、他にも問題がない訳ではない」
「問題と言いますと」
「実はこの国だけではなく、この島全体の植物が枯れてしまいつつあるのだよ。黒鳥がこの国に飛来するようになったのも、元々は猛毒の木の実が成る木が枯れてしまったことが原因だ。その他に食料となる野菜もどんどん枯れてしまっている、このままでは近い将来食料不足になることは間違いない。困ったことだ」
「どういう状況で植物が枯れてしまうのですか」
「それが雨が降るたびに枯れてしまうようなのだよ」
そこまで分かっているのならば、対抗策はあるのではないか。
「では、植物が雨にかからないようにすれば良いのではないですか」
「うむ、しかし植物というものは太陽の光と水がないと育たぬものだ、雨に当たらないようにすると、どの道育たぬのではないか」
アルハザードが口を閉ざし考え込んだ。あの黒鳥を捕らえた仕掛けのように、何かの対抗策を考えているのだろう。
「僕に考えがあります。少し時間をください、部屋に戻ってその考えを整理してみます」
「そうか、それはありがたい、では頼んだぞ」
ラ・ムーの部屋を辞し、部屋に戻るとアルハザードは、邪神の出した紙の束に鉛筆で、何かの図柄をとてつもない早さで描き始めた。
邪魔をしないように静かに見守っていると「神谷、BGMを頼むよ」と紙から目を離さずにアルハザードが言ったので、邪神へのサービスも兼ねて、軽快な曲を弾いた。
十分ほどでアルハザードの作業が終わった。
「こんなのどうかな」
アルハザードが手にした紙をこちらに向けた。
そこには何か建物の図面らしきものが描かれていた。
「今のは図面だけどこちらが完成予想図だ」
二枚目に描かれていたのは中に放水設備のあるビニールハウスだった。
「この島の地下水はまだ酸性化していない、この島にはビニールはないから、王宮の窓にも使われている透明な板で周りを囲み、地下水を放水すれば植物は育つだろう」
現代の大規模なハウス栽培の建物なのだが、地下水を汲み上げる設備はどうするのだろうか。まさか、この時代にはあり得ないモーターなどは使えないだろう。
「手押し式のポンプを使えばいいだろう。日本だって昔は井戸水を汲み上げるのに使ってたんだよ」
アルハザードが三枚目の紙を見せた、それはポンプ式の汲み上げ機の設計図だった。
「これを作るのはもちろんこいつだけどね」
アルハザードが足元で丸まっている邪神を指差した。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
書籍化の打診が来ています -出版までの遠い道のり-
ダイスケ
エッセイ・ノンフィクション
ある日、私は「書籍化の打診」というメールを運営から受け取りました。
しかしそれは、書籍化へと続く遠い道のりの一歩目に過ぎなかったのです・・・。
※注:だいたいフィクションです、お察しください。
このエッセイは、拙作「異世界コンサル株式会社(7月12日に電子書籍も同時発売)」の書籍化の際に私が聞いた、経験した、知ったことの諸々を整理するために書き始めたものです。
最初は活動報告に書いていたのですが「エッセイに投稿したほうが良い」とのご意見をいただいて投稿することにしました。
上記のような経緯ですので文章は短いかもしれませんが、頻度高く更新していきますのでよろしくおねがいします。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる