73 / 73
ムー大陸編
60夢から覚めて
しおりを挟む
気がつくと現代の自分の部屋の中の机に突っ伏していた。
一月近くムー大陸にいたはずなのだが、机の上のデジタル時計を見ると、神谷がムー大陸に出発したその日のままだった。
「気がついたかい」
すぐ脇にアルハザードが立っていた。足元には巨大な猫の姿の邪神が体を横たえている。」
魔人の顔はムー大陸に行く以前と同じように、端正だが少しぼやけている。
「ムー大陸はあの後どうなったの」
「それは神谷は知らない方がいいんじゃないかな」
「やっぱり海に沈んだの」
「そうだな、伝説は本当だったってことかな」
「ふーん、そうなのか」
グラムダルクリッチやラ・ムーの顔が浮かんだ。
「でも、一万年も昔の話だ、それに僕のせいではないし、もちろん神谷のせいでもない。あの島のほとんどの住民がすでにもう何回も生まれ変わっている。気にすることはないよ」
「でも、君の体は」
「僕の体は残念ながら、あの島が崩壊した時に切り落としの状態に戻ってしまった。あの装置の効き目はあの島の中だけのものだったのだろう」
「そうか、それは残念だったね」
「でも、一万年前のムー大陸に行けたんだから、貴重な体験ができたと思うことにするよ」
アルハザードが自嘲気味に言った。
邪神が喉をゴロゴロと鳴らした。アルハザードがその頭に手を置いた。
「一番満足しているのはこいつだろうね、何といっても六千万人分の破滅が味わえたのだから」
六千万人分の破滅、あの時視界が奪われ何も見えなくなったのは、やはり神谷の精神的なショックを和らげようという邪神のサービスなのだろうな、と思った。
「この次はどこに行こうかな」
「またどこかへ行くつもりなんだね」
「当たり前じゃないか、この体が元に戻までこの旅は終わらないよ」
アルハザードの旅が終わる前に神谷の寿命が尽きてしまうのではないだろうか。
「そんなことはないよ、だって神谷は僕よりも千歳以上も若いんだからね」
邪神の頭をなでながら、アルハザードがクスリと笑った。
一月近くムー大陸にいたはずなのだが、机の上のデジタル時計を見ると、神谷がムー大陸に出発したその日のままだった。
「気がついたかい」
すぐ脇にアルハザードが立っていた。足元には巨大な猫の姿の邪神が体を横たえている。」
魔人の顔はムー大陸に行く以前と同じように、端正だが少しぼやけている。
「ムー大陸はあの後どうなったの」
「それは神谷は知らない方がいいんじゃないかな」
「やっぱり海に沈んだの」
「そうだな、伝説は本当だったってことかな」
「ふーん、そうなのか」
グラムダルクリッチやラ・ムーの顔が浮かんだ。
「でも、一万年も昔の話だ、それに僕のせいではないし、もちろん神谷のせいでもない。あの島のほとんどの住民がすでにもう何回も生まれ変わっている。気にすることはないよ」
「でも、君の体は」
「僕の体は残念ながら、あの島が崩壊した時に切り落としの状態に戻ってしまった。あの装置の効き目はあの島の中だけのものだったのだろう」
「そうか、それは残念だったね」
「でも、一万年前のムー大陸に行けたんだから、貴重な体験ができたと思うことにするよ」
アルハザードが自嘲気味に言った。
邪神が喉をゴロゴロと鳴らした。アルハザードがその頭に手を置いた。
「一番満足しているのはこいつだろうね、何といっても六千万人分の破滅が味わえたのだから」
六千万人分の破滅、あの時視界が奪われ何も見えなくなったのは、やはり神谷の精神的なショックを和らげようという邪神のサービスなのだろうな、と思った。
「この次はどこに行こうかな」
「またどこかへ行くつもりなんだね」
「当たり前じゃないか、この体が元に戻までこの旅は終わらないよ」
アルハザードの旅が終わる前に神谷の寿命が尽きてしまうのではないだろうか。
「そんなことはないよ、だって神谷は僕よりも千歳以上も若いんだからね」
邪神の頭をなでながら、アルハザードがクスリと笑った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる