親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

60夢から覚めて

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 気がつくと現代の自分の部屋の中の机に突っ伏していた。

 一月近くムー大陸にいたはずなのだが、机の上のデジタル時計を見ると、神谷がムー大陸に出発したその日のままだった。

「気がついたかい」

 すぐ脇にアルハザードが立っていた。足元には巨大な猫の姿の邪神が体を横たえている。」

 魔人の顔はムー大陸に行く以前と同じように、端正だが少しぼやけている。

「ムー大陸はあの後どうなったの」

「それは神谷は知らない方がいいんじゃないかな」

「やっぱり海に沈んだの」

「そうだな、伝説は本当だったってことかな」

「ふーん、そうなのか」

 グラムダルクリッチやラ・ムーの顔が浮かんだ。

「でも、一万年も昔の話だ、それに僕のせいではないし、もちろん神谷のせいでもない。あの島のほとんどの住民がすでにもう何回も生まれ変わっている。気にすることはないよ」

「でも、君の体は」

「僕の体は残念ながら、あの島が崩壊した時に切り落としの状態に戻ってしまった。あの装置の効き目はあの島の中だけのものだったのだろう」

「そうか、それは残念だったね」

「でも、一万年前のムー大陸に行けたんだから、貴重な体験ができたと思うことにするよ」

 アルハザードが自嘲気味に言った。
 邪神が喉をゴロゴロと鳴らした。アルハザードがその頭に手を置いた。

「一番満足しているのはこいつだろうね、何といっても六千万人分の破滅が味わえたのだから」

 六千万人分の破滅、あの時視界が奪われ何も見えなくなったのは、やはり神谷の精神的なショックを和らげようという邪神のサービスなのだろうな、と思った。

「この次はどこに行こうかな」

「またどこかへ行くつもりなんだね」

「当たり前じゃないか、この体が元に戻までこの旅は終わらないよ」

 アルハザードの旅が終わる前に神谷の寿命が尽きてしまうのではないだろうか。

「そんなことはないよ、だって神谷は僕よりも千歳以上も若いんだからね」
 邪神の頭をなでながら、アルハザードがクスリと笑った。
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