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異なる世界?
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ひんやりとした夜風が頬に心地よい。
子供達と手を繋いでの、三人横並びで歩く夜道。
それは幼いクルシュにはあまりにも遅い時間。
よたよたと歩いていた幼子は、家に戻るまでに、道の真ん中にへちょんっと座り込んで寝てしまった。
弟を背負おうとした兄を制して、私が彼を抱っこする。
クルシュは驚くほどに軽かった。
この世界ではこれが普通なのかもしれないけど、栄養状態の悪さが原因に違いなかった。
「僕が抱きますよ」
ウィルシェは倒れた私を気遣ってくれているのでしょう。
実際、今また突然倒れたら、クルシュに怪我させちゃうし。
「遠慮しないで、もう大丈夫。それにほら、温かくて気持ちいいし」
胸に抱いた弟を、兄に見せる。
「ママ······」
そのタイミングで、寝ぼけたクルシュが私のおっぱいを求めるように動き、ウィルシェの視線が私の胸へと注がれた。
「……」
彼は顔を赤くした後、直ぐに目を逸らしてしまう。
ウィルシェが道場の子供達みたいな悪戯っ子だったなら、私から「な~に?おっぱいに触りたいの?」みたいにイジりにいけるんだけど(実際それやっちゃったら大問題だからやらないけど!)、ここまで真面目に対応されると、ちょっとキュンとすると同時に、自分が汚れてるみたいに感じて、なんだか申し訳なくなった。
ヴィルシュカさんが治療院に送られたのは2年前くらいだって話だから、クルシユなんてまだ2歳とか、それくらいの頃に違いない。
それは······お母さんが恋しいよね。
ウィルシェだって、きっとそう。
彼が赤面した理由は、私の胸を性的に見たのではなく、母性の象徴として見つめてしまったことが恥ずかしかったから…なのかもしれない。
しっかり者の男の子は先に立って家に入って、私の足元のための灯り火をつける。
私が寝かされていた部屋の丁度隣の部屋に通されると、そこが二人の寝室だった。
粗末なベッドが一つだけ。
いつもこの兄弟は一緒に寝ているのでしょう。
クルシュ寝かして、ウィルシェを振り返る。
彼は、弟を寝かしつける私を通して、多分母親の姿を見ていた······そんな表情をしていた。
彼を抱きしめてあげようかと思ったけど、それは良くない事かもしれないと思い留まる。
おやすみのキスもしてあげたくなるけど、それも論外。
「おやすみなさい、ウィルシェ」
「おやすみなさい」
笑顔で言葉を交わして、隣の部屋······多分、ヴィルシュカが使っていた部屋に戻る。
ああ、お母さんの大事な部屋を私に使わせてくれてたんだ。
「ふう······」
ベッドに腰を下ろした。
独りになると、カルノヴァ宅であった出来事を思い出してしまう。
いや、私も思ってたよ?
この服透けちゃうんじゃないのとか。
私もしかしたら、この世界基準で発育状態ヤバいんじゃないかとか······。
ウィルシェの視線を思い出して、顔を覆ってベッドに仰向けに倒れ込む。
······ま、まあこの話は置いておくとして、ここに新たな疑問が浮かんできた。
私はこの世界に突然やってきた。
最初はここを死後の世界、死後に魂が行きつく世界なのだと考えた。
それこそ、私みたいに死んだ魂たちが突然この世界に着て、そこで生活しているのではないかと。
でも、ウィルシェ、クルシュ、エッチチカンヘンタイのカルノヴァ、あと話に聞いただけだけどヴィルシュカ、彼らはこの世界で産まれて、生きているのだ。
もしかして、この世界は「ある」のでは?と思えてくる。
······でも、それでは説明できない事もある。
私の日本語が通じてるとか、私の中のある程度の常識がそのままこの世界で通用しているとかって部分。正直、私に都合よすぎるというか、配慮しすぎている。
この世界は私の魂が作った、私の心中だけの世界だったりする可能性も否定できない。
となると、この世界にいる人たちは皆、私の心が作ってる?
えー、あのカルノヴァも私が作ったんだとしたらスンゴク嫌なんですけど······。
子供達と手を繋いでの、三人横並びで歩く夜道。
それは幼いクルシュにはあまりにも遅い時間。
よたよたと歩いていた幼子は、家に戻るまでに、道の真ん中にへちょんっと座り込んで寝てしまった。
弟を背負おうとした兄を制して、私が彼を抱っこする。
クルシュは驚くほどに軽かった。
この世界ではこれが普通なのかもしれないけど、栄養状態の悪さが原因に違いなかった。
「僕が抱きますよ」
ウィルシェは倒れた私を気遣ってくれているのでしょう。
実際、今また突然倒れたら、クルシュに怪我させちゃうし。
「遠慮しないで、もう大丈夫。それにほら、温かくて気持ちいいし」
胸に抱いた弟を、兄に見せる。
「ママ······」
そのタイミングで、寝ぼけたクルシュが私のおっぱいを求めるように動き、ウィルシェの視線が私の胸へと注がれた。
「……」
彼は顔を赤くした後、直ぐに目を逸らしてしまう。
ウィルシェが道場の子供達みたいな悪戯っ子だったなら、私から「な~に?おっぱいに触りたいの?」みたいにイジりにいけるんだけど(実際それやっちゃったら大問題だからやらないけど!)、ここまで真面目に対応されると、ちょっとキュンとすると同時に、自分が汚れてるみたいに感じて、なんだか申し訳なくなった。
ヴィルシュカさんが治療院に送られたのは2年前くらいだって話だから、クルシユなんてまだ2歳とか、それくらいの頃に違いない。
それは······お母さんが恋しいよね。
ウィルシェだって、きっとそう。
彼が赤面した理由は、私の胸を性的に見たのではなく、母性の象徴として見つめてしまったことが恥ずかしかったから…なのかもしれない。
しっかり者の男の子は先に立って家に入って、私の足元のための灯り火をつける。
私が寝かされていた部屋の丁度隣の部屋に通されると、そこが二人の寝室だった。
粗末なベッドが一つだけ。
いつもこの兄弟は一緒に寝ているのでしょう。
クルシュ寝かして、ウィルシェを振り返る。
彼は、弟を寝かしつける私を通して、多分母親の姿を見ていた······そんな表情をしていた。
彼を抱きしめてあげようかと思ったけど、それは良くない事かもしれないと思い留まる。
おやすみのキスもしてあげたくなるけど、それも論外。
「おやすみなさい、ウィルシェ」
「おやすみなさい」
笑顔で言葉を交わして、隣の部屋······多分、ヴィルシュカが使っていた部屋に戻る。
ああ、お母さんの大事な部屋を私に使わせてくれてたんだ。
「ふう······」
ベッドに腰を下ろした。
独りになると、カルノヴァ宅であった出来事を思い出してしまう。
いや、私も思ってたよ?
この服透けちゃうんじゃないのとか。
私もしかしたら、この世界基準で発育状態ヤバいんじゃないかとか······。
ウィルシェの視線を思い出して、顔を覆ってベッドに仰向けに倒れ込む。
······ま、まあこの話は置いておくとして、ここに新たな疑問が浮かんできた。
私はこの世界に突然やってきた。
最初はここを死後の世界、死後に魂が行きつく世界なのだと考えた。
それこそ、私みたいに死んだ魂たちが突然この世界に着て、そこで生活しているのではないかと。
でも、ウィルシェ、クルシュ、エッチチカンヘンタイのカルノヴァ、あと話に聞いただけだけどヴィルシュカ、彼らはこの世界で産まれて、生きているのだ。
もしかして、この世界は「ある」のでは?と思えてくる。
······でも、それでは説明できない事もある。
私の日本語が通じてるとか、私の中のある程度の常識がそのままこの世界で通用しているとかって部分。正直、私に都合よすぎるというか、配慮しすぎている。
この世界は私の魂が作った、私の心中だけの世界だったりする可能性も否定できない。
となると、この世界にいる人たちは皆、私の心が作ってる?
えー、あのカルノヴァも私が作ったんだとしたらスンゴク嫌なんですけど······。
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