お江戸物語 才蔵とお艶

らんふぁ

文字の大きさ
8 / 15
三章 消えない傷痕

ー話

しおりを挟む
シトシトと雨が降る……。 

猫の額のような狭い庭先の紫陽花が、雨の中、薄紫の花を咲かせていた。

毎年梅雨のこの時期は、いつも明るいお艶の顔色が、何となくすぐれない。

「ああ、もう……!毎日毎日、こう雨続きじゃあ、クサクサしちまう。お天道様は何処で怠けてんだい!全く……!」

彼女らしくない物言いに、縁側で足の爪を切っていた才蔵が顔をあげた。
「……お艶姐さん、随分荒れてるじゃねぇか?お天道様にまで険屈喰らわせてよ。」


「……」

肩先を押さえる彼女に眉をひそめる才蔵「……例の傷が又痛むのか?」

「……こう湿気が多いとね……シクシク疼いて……つい八つ当たりしちまった。すまないね、お前さん」


お艶の古傷……


それは左の肩先から白い胸にかけた刀傷。


才蔵はお艶を抱く時、必ずその傷跡に唇を当てる。

……そうせずにはいられないのだ。


才蔵に取っては愛しい傷。

それはお艶が紙一重でこの世に留まった証。 

自分の手に残ったしるしだから……。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交錯

山田森湖
恋愛
同じマンションの隣の部屋の同い年の夫婦。思いの交錯、運命かそれとも・・・・。 少しアダルトなラブコメ

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...