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十一話
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四人の侍が素早く右京を取り囲み、刀を抜いた。
いづれも彼と同じような年頃だった。
端正な顔をしかめた右京は、油断なく己の刀の鯉口を切る。
「……伊織、俺は跡を継ぐ気は無いとあれほど……。これは、お美代の方の差し金か?それとも外記か?」
伊織と呼ばれた侍は刀を構えながらも、律儀に軽く頭を下げてよこした。「……誠にお気の毒ながら……貴方様が生きておいでになれば、必ずや貴方様を擁立する者達が……それでは家中が割れまする……これもお家の為…死んで頂きましょう」
非情な宣告に、思わず右京は舌打ちをした。「……又、勝手な事を……双子を畜生腹と忌み嫌って、弟の俺を養子に出し、次には兄上と同じこの顔を利用し、挙げ句に今度は邪魔だと命を狙うか……。お家の事など俺は知らぬ。お美代の方の産んだ千代菊丸に継がせれば良いではないか」
伊織はうっすらと笑った。
「そうしたくは山々なれど、赤子に国が治められる筈はなし、と頑固に反対する者達がおりますでな。殿のお命、来年の夏までは保たぬとか……早よう跡継ぎを決めねば、お家は断絶致しまする」
兄の寿命が後僅かと聞いた右京の顔が曇った。「……兄上が……だったら尚更だ。千代菊丸がおるだろう。さっさと、お主らの望み通りにすれば良かろうが」
「その為にこそ、後顧の憂いは絶ちまする。……御免!」
右京は、襲いかかる刃をギリギリで見切ってかわした。
危うく仲間を斬りそうになり、たたらを踏む伊織。
伊織は冷徹に他の3人に命じる。「やれ……!」
右京も身構えた。
月明かりに刃が冷たく反射し、右京の長身がしなやかに躍動した。
一跳びで真っ正面の侍に襲いかかると二の腕に、サッと浅手を負わせた。
あまりの早さに対応できない。
「ああっ!」悲鳴が上がり、刀を取り落とす。
次に左の侍のやはり腕と見せて、慌てて刀を合わせようとしたところの裏をかき、足を軽く斬った。
「ぎゃっ!」たまらずに転がる。
次は右手の侍....…に行くと見せ、思わず相手が怯んだ所を、すたこら逃げ出した。
逃げながら右京は怒鳴った。「伊織!早く二人を医者に連れて行け!俺は跡は継がん!外記にそう伝えろ!」
右京に言われるまでもなく、伊織は仲間に血止めを施した。
(……右京様。私は貴方様を決して嫌いではない。だが、貴方様のこの腕……無駄に家臣達を殺すまいとするお人柄……頭の良さ……それこそがお命を絶たねばならぬ理由でござる……幼い千代菊丸様に取って、貴方様はあまりにも有能な叔父上でありすぎる……)
伊織は怪我人を無事だった一人が呼んで来た二丁の籠に乗せ、屋敷の近くで下ろすと、それぞれが一人づつ支えながら屋敷に戻り、極秘に医者の手当を受けさせた。
全てが終わると伊織はある部屋の前に行き、平伏し声をかけた。
「....…内藤様。申し訳ございませぬ。不首尾に終わりました」
いづれも彼と同じような年頃だった。
端正な顔をしかめた右京は、油断なく己の刀の鯉口を切る。
「……伊織、俺は跡を継ぐ気は無いとあれほど……。これは、お美代の方の差し金か?それとも外記か?」
伊織と呼ばれた侍は刀を構えながらも、律儀に軽く頭を下げてよこした。「……誠にお気の毒ながら……貴方様が生きておいでになれば、必ずや貴方様を擁立する者達が……それでは家中が割れまする……これもお家の為…死んで頂きましょう」
非情な宣告に、思わず右京は舌打ちをした。「……又、勝手な事を……双子を畜生腹と忌み嫌って、弟の俺を養子に出し、次には兄上と同じこの顔を利用し、挙げ句に今度は邪魔だと命を狙うか……。お家の事など俺は知らぬ。お美代の方の産んだ千代菊丸に継がせれば良いではないか」
伊織はうっすらと笑った。
「そうしたくは山々なれど、赤子に国が治められる筈はなし、と頑固に反対する者達がおりますでな。殿のお命、来年の夏までは保たぬとか……早よう跡継ぎを決めねば、お家は断絶致しまする」
兄の寿命が後僅かと聞いた右京の顔が曇った。「……兄上が……だったら尚更だ。千代菊丸がおるだろう。さっさと、お主らの望み通りにすれば良かろうが」
「その為にこそ、後顧の憂いは絶ちまする。……御免!」
右京は、襲いかかる刃をギリギリで見切ってかわした。
危うく仲間を斬りそうになり、たたらを踏む伊織。
伊織は冷徹に他の3人に命じる。「やれ……!」
右京も身構えた。
月明かりに刃が冷たく反射し、右京の長身がしなやかに躍動した。
一跳びで真っ正面の侍に襲いかかると二の腕に、サッと浅手を負わせた。
あまりの早さに対応できない。
「ああっ!」悲鳴が上がり、刀を取り落とす。
次に左の侍のやはり腕と見せて、慌てて刀を合わせようとしたところの裏をかき、足を軽く斬った。
「ぎゃっ!」たまらずに転がる。
次は右手の侍....…に行くと見せ、思わず相手が怯んだ所を、すたこら逃げ出した。
逃げながら右京は怒鳴った。「伊織!早く二人を医者に連れて行け!俺は跡は継がん!外記にそう伝えろ!」
右京に言われるまでもなく、伊織は仲間に血止めを施した。
(……右京様。私は貴方様を決して嫌いではない。だが、貴方様のこの腕……無駄に家臣達を殺すまいとするお人柄……頭の良さ……それこそがお命を絶たねばならぬ理由でござる……幼い千代菊丸様に取って、貴方様はあまりにも有能な叔父上でありすぎる……)
伊織は怪我人を無事だった一人が呼んで来た二丁の籠に乗せ、屋敷の近くで下ろすと、それぞれが一人づつ支えながら屋敷に戻り、極秘に医者の手当を受けさせた。
全てが終わると伊織はある部屋の前に行き、平伏し声をかけた。
「....…内藤様。申し訳ございませぬ。不首尾に終わりました」
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