お江戸物語 藤恋歌

らんふぁ

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十六話

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辺りに響き渡った女達の悲鳴。


秋にしてはポカポカと穏やかな日差し故に、釣り糸を垂らした儘、舟着場の杭に繋いだ小舟の中でうたた寝をしていた右京がガバッと跳ね起きる。


傍らの刀を取り、悲鳴があがった方向を探した。


見れば、少し離れた場所に何時の間にか慢幕が張られていた。


浅草に程近い川辺の近く、景色の良い方向を開けて、そこで宴か何かをしていたのだろうか。


見事な紅葉に染まった川辺で、風流を楽しもうというお大尽がいるのだろう……。



だが、野卑な男の声が聞こえる。

どうやら招かれざる客が来たようだ。



全く無粋な奴らめ……!



右京は、軽やかに舟から岸に飛び移ると、風のように走り出した。






確かにとんだ招かれざる無粋な客達だった。



美しく赤や黄色に染まった木々。


穏やかな日差し。


一流料理屋の板前が腕を振るった弁当が広げられ、せっかくの和やかな雰囲気をぶち壊したのは、数人の荒んだ様子の浪人達。


並べられた料理を蹴り飛ばし、刀を抜いた。


悲鳴があがる。


「クックックッ……見れば大層なお大尽のようだ。こんな贅沢な宴を張れるのなら、我らに少し寄進して頂こうかのぅ。それに良い女を何人も侍らせているではないか。ちょうどいい、貸して貰おうか。たっぷりと可愛がってやるわ」


仲間から同意の下卑た笑いが沸き上がった。


しかし宴の主が、その理不尽な言いぐさをキッパリと跳ね付け、屈強そうな若い衆が浪人達に立ち向かい、乱闘になった。


悲鳴が響き渡って、ますます騒ぎが大きくなる。


「死ね!」一人の浪人が主に斬りかかろうとした時、

その顔に、バシャッ!と湯呑みの茶がかかった。


まだ淹れたてでかなり熱い。


「あぢぢ!この……!」慌てて顔を拭う山犬浪人。



茶をぶっかけたのは、一際美しい女だった。


彼女は主を後ろに庇い「やめなんし!」と睨みつける。


「この……!」


血迷った浪人が刀を振り上げ……



次の瞬間、頬桁を吹っ飛ばされていた。


一陣の風のように駆けつけ、広い背中に女を庇い囁いたのは、一人の待。

「……相変わらず、無茶な性格だの。雪菜、いや白雪太夫」

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