お江戸物語 藤恋歌

らんふぁ

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三十一話

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「何だと?儂の座敷を断っておきながら、白雪は四日後に宴を張ると言うのか?」苛立った声を男は上げた。


癇性の質でこめかみに青筋が浮かび、山城屋は必死で機嫌取りをする。


鈴代屋と同じく、この男を気に食わないのは山々だが、今、彼が家老として藩の実権を握っている以上、這いつくばって足の裏も舐めようと言うものだ。


「ご家老様、全く左様で。不届き千万も極まると言うものです。聞き及んだところによれば、長崎屋と太夫の命の恩人を招いての宴のやり直しだとか……。前に座敷で倒れてしまった詫びだそうです」


イライラと家老は爪を噛んだ。「……面白うないのう……で、身請けの話はどうだ?したのか?」


「はい。鈴代屋には話を通しておきました。ご家老様……手前がここまで肩入れするのです。例の話お願いしますよ」


持ちつ持たれつをシッカリと確認した。


家老はうるさそうに手を降り、「分かっておるわ。太夫を身請けした暁には、藩の物産を一手にそなたに任せよう。……何としても儂は、白雪太夫を思うままにしてみたい……あの肌理の細かやかな白い身体をな」


山城屋は揉み手し阿諛追従。「ご家老様もお好きですなぁ。まあ、あの太夫では無理もありませがね」と笑う。


家老もニンマリと「ふふふ……しかし、儂を蔑ろにしたのは許せんのう……長崎屋の方を大事にするとは……」


「全くで」



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