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五十一話
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右京は、褌1つの外記を冷たく見やった。「……こやつはウチの家老での。兄から命じられ連れ戻しに参ったのだ。外記、屋敷に帰ったら覚悟せよ」
右京は忠広が書いた、大人しく彼に従い沙汰があるまで蟄居せよとの上意の手紙を外記に読みあげる。
上意即ち藩主の意向。
逆らえば、それは謀反と同じ事。
家禄召し上げ、お家は断絶でも文句は言えない。
外記はむっつりと黙り込んだ。
あっけに取られた鈴代屋藤兵衛と白雪太夫。
鈴代屋の前に手を付いた右京は頭を下げる。「…鈴代屋殿、白雪太夫、我が家の不始末、重々お詫びする。これから、こやつを連れに藩の者が押っつけ来るでな」
彼は、太夫の事が気になって、家臣も待たず先に馬をスッ飛ばし来たのだった。
とりあえず褌一つの外記には着物を着せ、一室に押し込め、首尾は如何と別の座敷にいた山城屋も鈴代屋の者達に捕らえられた。
その時、多少手荒な扱いになったのは致し方ない。
いきなり部屋に雪崩れ込んだ見世の男達に叩かれ、小突かれ、蹴られ、突き飛ばされ着物はヨレヨレ、鬢はグチャグチャのボサボサに成りはてた山城屋は泣きわめいた。
「て、手前が一体何をしたと言うんですか!?」
「何を?こうして外記と結託しておるだろうが。そちにも、ちと訊きたい事がある……すまぬが、こやつも頼む」
「へい」
山城屋も迎えが来るまで左平が責任を持って見張る事になった。
まだ混乱気味の藤兵衛はノロノロと事実確認。「え……?貴方様の兄上様が、ご家老に上意を出せる……って事は…お殿様……?そ、それに確か甥御様が亡くなられ、実家の跡をお継ぎになられると……」
「さよう。致し方なく、な」
話が頭にようやく染み込ん藤兵衛は驚愕した。「 ま、松永様、ではお殿様に!?」
頷いた右京だが、それがちっとも嬉しそうでは無い。
彼はざっと説明をする。「実は某は藩主の兄とは双子での。赤子の時に養子に出された身であった。松永は養い親の名で、本当は鳥山右京と言う。外記は死んだ甥の外祖父での。それを良いことに目にあまる所業を重ねておったのよ。……まことに申し訳ござらん」
「……いや、全く先ほどは驚きました……。不幸があったからと明日の宴をお断りになられた貴方様が、血相変えて突然見世に飛び込んでおいでになって……」
その話は初耳だった白雪太夫がそっと聞く。「……親父様?」
鈴代屋は彼女に頷いてみせた。「松永、いや鳥山様が家をお継ぎになる為、来られないとは聞いていたが、明日を楽しみにしていたお前には、言えなくてな。特に今日は難しい客だったからね」
「そうでありんしたか……」
外記の前で失態がないように、との藤兵衛の配慮だったのだろう。
彼女は右京をひたと見つめた。
右京は忠広が書いた、大人しく彼に従い沙汰があるまで蟄居せよとの上意の手紙を外記に読みあげる。
上意即ち藩主の意向。
逆らえば、それは謀反と同じ事。
家禄召し上げ、お家は断絶でも文句は言えない。
外記はむっつりと黙り込んだ。
あっけに取られた鈴代屋藤兵衛と白雪太夫。
鈴代屋の前に手を付いた右京は頭を下げる。「…鈴代屋殿、白雪太夫、我が家の不始末、重々お詫びする。これから、こやつを連れに藩の者が押っつけ来るでな」
彼は、太夫の事が気になって、家臣も待たず先に馬をスッ飛ばし来たのだった。
とりあえず褌一つの外記には着物を着せ、一室に押し込め、首尾は如何と別の座敷にいた山城屋も鈴代屋の者達に捕らえられた。
その時、多少手荒な扱いになったのは致し方ない。
いきなり部屋に雪崩れ込んだ見世の男達に叩かれ、小突かれ、蹴られ、突き飛ばされ着物はヨレヨレ、鬢はグチャグチャのボサボサに成りはてた山城屋は泣きわめいた。
「て、手前が一体何をしたと言うんですか!?」
「何を?こうして外記と結託しておるだろうが。そちにも、ちと訊きたい事がある……すまぬが、こやつも頼む」
「へい」
山城屋も迎えが来るまで左平が責任を持って見張る事になった。
まだ混乱気味の藤兵衛はノロノロと事実確認。「え……?貴方様の兄上様が、ご家老に上意を出せる……って事は…お殿様……?そ、それに確か甥御様が亡くなられ、実家の跡をお継ぎになられると……」
「さよう。致し方なく、な」
話が頭にようやく染み込ん藤兵衛は驚愕した。「 ま、松永様、ではお殿様に!?」
頷いた右京だが、それがちっとも嬉しそうでは無い。
彼はざっと説明をする。「実は某は藩主の兄とは双子での。赤子の時に養子に出された身であった。松永は養い親の名で、本当は鳥山右京と言う。外記は死んだ甥の外祖父での。それを良いことに目にあまる所業を重ねておったのよ。……まことに申し訳ござらん」
「……いや、全く先ほどは驚きました……。不幸があったからと明日の宴をお断りになられた貴方様が、血相変えて突然見世に飛び込んでおいでになって……」
その話は初耳だった白雪太夫がそっと聞く。「……親父様?」
鈴代屋は彼女に頷いてみせた。「松永、いや鳥山様が家をお継ぎになる為、来られないとは聞いていたが、明日を楽しみにしていたお前には、言えなくてな。特に今日は難しい客だったからね」
「そうでありんしたか……」
外記の前で失態がないように、との藤兵衛の配慮だったのだろう。
彼女は右京をひたと見つめた。
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