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第2夜会 除け者の隠された答案用紙-ハイドペーパー(後編)
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デザートが出てから一時間半弱経過し、問題用紙と解答用紙と答案用紙の三種類が入ったボックスが小烏(こがらす)へと届いた。そのボックスは二階のみなせたちがいる部屋へと運び込まれた。
ボックスの横にロサナが立ち、ふぅ~……っと煙草を吹くと煙が鍵の形状に形が形成され、それを手に持ったロサナがボックスの鍵穴に差し込むと四角のボックスの一面が開いた。
「この中に生徒が利用した、見利用の【問題用紙】。生徒が見利用の空白の【解答用紙】。そして記入されている【答案用紙】ですわ」
「ほえ~……鍵はロサナの魔法になっているからロサナしか開けられないんだね」
鍵穴を覗き込むアーニャにチェルシーもボックスを叩きながら続く。
「しかし、これだと尚更アンズの答案用紙は何処へ消えたんだ? これだとやはり試験中じゃないとアンズの答案用紙を盗むことはできないだろ」
みなせはボックスに近づき答案用紙の束をロサナから預かる。しかし、みなせはその場から動かない。
「どうしました? みなせさん?」
ユアが不思議そうに訪ねるとみなせはロサナに手を伸ばした。
「みなせ? 答案用紙はそれで全てですわよ?」
「いえ……未記入の解答用紙にも混ざっている可能性がございますゆえ」
「私たちはもちろん調べましたわよ」
「まあまあ。ロサナさん。ここはみなせさんに任せましょうよ」
「そうだな」
「ロサナ~渡してやれよ~」
「……わかりましたわ」
少し不服そうにロサナは未記入の解答用紙をみなせに渡す……
「ありがとうございます。ロサナさま」
みなせはお礼をロサナに言うと解答用紙と答案用紙をパラパラとめくりチェックを始めた……
……
……
……
チェックを始めて数十分が経過したころ。
「皆様、見つかりました。アンズさまの答案用紙でございます……」
一枚の紙を全員に見えるように出す……
「えっ!? マジか!?」
「本当ですの!?」
「本当ですか!?」
「見つかったって~!?」
「みなせさんっ!?」
五人が驚き詰め寄りみなせの手に持った答案用紙を見つめる。
『!?』
五人は驚き言葉を失う……みなせの手に持った答案用紙は……
真っ白の白紙だった
名前すら書かれていない白紙をみなせは手に持ち語りだす。
「やはり私の思った通りにございます。アンズ様の答案用紙は未記入の解答用紙の中にございました」
「ばっ! バカにしないでよっ!」
アンズは激怒しみなせに掴みかかろうと飛びつく!
パシッ! その掴みかかろうとした手はみなせの目の前で止まった。チェルシーがアンズの手首を掴んでいたのだ。そのまま、アンズ手を後ろに捻りあげ拘束した。
「いっ! 痛い痛い! 離してよっ! 私をバカにしてっ!」
ギリッ……チェルシーは腕に力を込める。
「いづっ……」
「落ち着けよ……」
チェルシーの目は凍えるほど冷たい目をしていた。騎士として戦場に立つ者……容赦なく人を切り捨てるそんな姿を全員が想像して息を飲む。そしてそれは当然のごとく殺気を受けるアンズは特に汗をぶわっとかき怯えるように静かになった。それと同時にみなせも理由を話し出す。
「説明不足で申し訳ありません。これをご覧ください……」
みなせが胸ポケットから一本のペンを出し紙を優しく擦り出した……
『!?』
その場の全員がぎょっとした。なぜならペンで擦り出した所は真っ黒になったのだが、その真っ黒な部分を避けるかのように白い文字が浮きだし【アンズ】の名前が描かれていたのだ。
「どういうことですの!?」
「わっ私の名前が!」
みなせのペンが擦れる音がなる。空白の真っ白な解答用紙はみなせにより真っ黒な用紙になり、その代わりに白い答えが描かれた答案用紙へと生まれ変わった。
「みなせさん、どういうことでしょうか?」
みなせの隣にいたユアがみなせの袖をぎゅっと握りしめる。
「皆様の考えた【すり替えにより答案用紙が隠された】のではございません。隠されたのは【答案用紙】ではなく【文字】でございます」
「どういうことですか?」
アンズはまだ理解できていない。そしてチェルシーも驚愕している
。
「どうしてこんなことが……」
「まっ……魔法は掛けることができない。これは建物の構造や試験監督も魔法妨害をしているからですわ……しかしこれはどうして……」
「たしか、ヒルダという女子生徒がいましたよね!? その子が魔法を……」
「魔法は絶対に不可能ですわ……私と試験監督以外は! ということは……」
「犯人は試験監督か!?」
「いや! 実行犯は試験監督でヒルダが計画したんじゃ~!」
全員がガヤガヤする中、みなせの一言により注目の的が変わる……
「皆様……それはまた真犯人のミスディレクションに引っ掛かっております。事件が起きたのは王国随一の魔法学校……誰しもが【文字を消す魔法】を疑います。魔法学校で起きた事件でございますが、これはアーニャ様の専門分野でございますね。例えるならそうですね……私は小さい頃、勉強したことがございます。確か~ヨウ素……」
「ヨウ素デンプン反応! わかった~! 消えるインクを作り出したんだ~!」
「ヨウ素……なんだって?」
チェルシーのみならず全員が首を傾げる。
「詳しく説明してもわからないだろ~! ともかく、あたしはわかった! ざっくりというとデンプンを溶かした透明な液体に、消毒液とかに使われるこれまた透明のヨード液を入れると、透明な液体同士なのに紺色に変わるんだよ。そして熱を加えるとまた透明に戻るんだ!」
「そういうことですわね……」
「なんなんだ? ロサナまで? わからんぞ?」
「も~、チェルシーは脳筋だな~! いいかい? あたしらの話し合いで結論は出たと思うけど、途中で答案用紙を盗むことは不可能だ。だから、犯人は文字を消したんだ! 時間が経つと消えるようにね!」
「そういうことか! それでアンズの記入済みの答案用紙を白紙に変えて未使用の解答用紙に混ぜたのか」
「ですがそんなことできるの?」
「がっつりと混ぜた薬品だと消えるには結構な温度が必要だけど、量を調整すればあとで消えるなんて造作もないよ~! しかし、文字は消えたけど筆跡は残る! そこに目が着くとは流石みなせだね~! それによく化学反応まで知っていたね!」
「私の故郷では義務教育といいまして、ある一定量の知識は最低限身に付けないといけないという法がございまして、そこで得た知識でございます。そして、ロサナ様。この答案用紙で採点は可能でございますでしょうか?」
チェルシー、アーニャ、ユアの三人の視線がロサナに注ぐ。
「ええ……誰が何と言おうと私の権限をもって採点致しますわ」
「「「やったーーーー!」」」
ロサナの微笑みにチェルシー、アーニャ、ユアの三人は花のような歓喜の笑顔浮かべ、みなせに飛び付く。
「凄い! 凄いですよ! みなせさん!」
「いや~、みなせに化学の知識があるとは素晴らしいね! 今度あたしの研究室に遊びにくるかい~?」
「いやいや、なんていうか流石だ……よ……?」
「……」
全員がみなせを賞賛するがみなせの顔は全く嬉しそうではない。その様子に、はしゃいでいた三人と微笑んでいたロサナも気が付きその場は静かになる。
……カシャン
その静寂は食器のぶつかる音によって解かれる。音の方へと真っ青な顔をしたアンズがそこにいた。
「どっ……どうしたんだよ~アンズ~?」
「そっ、そうですよ。これでアンズさんの答案用紙は採点されることになったんですよ」
アーニャとユアが近づくとロサナが声を上げる。
「まっ……まさか……」
「そうです……必ずしも真実が幸せな結果とは限りません。これで真犯人もわかりました。アンズさんを陥れようとした人物でございますが……」
「……マリー?」
すとん……とアンズは崩れ落ちて床に膝立ちになる。目の光は失われてゆっくりと一粒の涙が頬を伝う。
同時にチェルシーが吠える。
「どうしてっ! マリーはアンズの親友のはずだろ!」
「………あたしたちはさ~。答案用紙の謎が解けて喜んでいたけど、もっとよく考えると酷いことだね……確かに消えるインクにより文字が隠された。そして、その状況を作り出したのは【消えるインクの入ったペン】を貸したマリーだとはね~……」
「……ひどい……こんなことってないです……」
ユアは泣きながら放心状態のアンズを抱き締める。
グシャ!
その音の方向を見ると煙草の箱を握り潰し、いつもの気品さが失われ憤怒の形相のロサナが立っていた。
「……絶対に許さない。マリーの奴はヒルダ一向もろとも退学どころじゃ済ましてやらない……人生を壊してやる……」
ロサナの一言を聞いた、放心状態のアンズ以外の全員が顔を青くする。若くして王国随一の魔法学校を設立した美人校長の面影はなく、その実績からは想像のつかないほどの厳しさを乗り越えてきたことがわかる一面である。
そして、ロサナはみなせに訪ねる。
「……みなせ……どこで気づいたの?」
「最初からでございます」
『!?』
全員が驚き、放心状態であったアンズもぴくりと体を震わせる。
「いっ……いくらなんでも流石に最初からは……」
「失礼ではございますが皆様は幼い頃にいじめられたご経験はございましょうか?」
「「「……」」」
チェルシー、ロサナ、ユアが黙る中。
「あたしはあるよ~」
「あっアーニャ!?」
「うん……あたしさ~見ての通り少し変人じゃん? これはさ~昔の学生時代から変わってないのよね。昔から実験ばかりしてて、みんなに気持ち悪がられて、物隠されたり、水かけられたり、暴力なんて日常茶飯事だったわけよ~」
「アーニャさん……」
「アーニャ! 教えてくれ! 誰にやられたんだ! 私がぶっとばしてやる!」
「あはは~。チェルシーあたしは29歳だよ? 昔の話だよ昔の話~」
「あっ……ああ……」
「でも、ありがとね~。そんな優しいチェルシー好きだよ~。……それでさ、みなせの言わんとしてることさ。あたしもわかっちゃったんだよね」
「何がわかったんですの?」
「アーニャ様……私の口から説明させて頂きます。まず疑問に感じた所はいじめについてでございます」
「いじめ?」
「はい……通常いじめが続くのには理由が二つございます【味方がいないため孤立している】そして【自分で動かない】……。今回私が話を聞いていてまず思ったことは、マリー様はヒルダのいじめを中断させる幼なじみであるにも関わらず、アンズ様のいじめが昔から続いていることです。学校全体からいじめられるならまだしも、マリー様の行動は周りから好感を持たれるはずで、王国随一のエリート校であるなら皆様頭が良く、どちらが悪で学校に相応しくないかは一目瞭然でわかるはずでございます。つまり、アンズ様は【自分では動かない】が【周りに味方がいた】にもかかわらず長きに渡りいじめが続いていることに対して、私は違和感を覚えました」
「あたしもさ~みなせの一言でそれがわかったんだよね……いじめを止めてくれる人……幼なじみがいるのにどうして昔からいじめられているのかってね」
「目立つヒルダ一向を囮(アンダーカバー)として隠れていた主犯でございます。私の経験上でございますが【いじめられているときは全てを疑う】……アンズ様の答案用紙を盗んだり、すり替えられたりする機会はなかった。すると残る疑うべき点は一つとなったわけにございます」
ガンっ!
チェルシーが壁を殴り、壁にヒビが入る……
「汚い手口にこっちまでムカついてきた」
「ええ……チェルシーの言う通りですわ」
「私がっ!」
ユアがアンズを抱き締めながら大きな声をあげる。
「私が味方になります! 何ができるかはまだわからないけど……でも!」
ユアとアンズの頭にアーニャがぽんっと手を乗せて撫でる。
「あたしも味方さね~……あたしも友達ができていじめられることもなくなった。そんで学校卒業したあと研究室でたくさんの結果を出してそいつら見返してやったんよ~。そう言うのってさ。自分で言うのもなんだけどカッコいいでしょ~。だから、アンズもさ頑張って見返してやろうよ」
アーニャはアンズにパチッ……と可愛らしくウインクをする。
二人の言葉を聞いてアンズは目を擦る。
「ユアさん、アーニャ先生……ありがとうございます」
「アンズに関わった生徒に対してはテストは無効はもちろんのこと、しっかりと罰は償わせるから安心してくださいね」
「ロサナ校長!」
「どうかなさいまして? 処罰について意見が……」
「今回のみんなには処罰はしないでください! それにテストも有効にしてください!」
『!?』
アンズの発言に全員が驚く。アンズは強い目して発言する。
「私は……今日の皆様のお陰で救われました。だから、自分から変わりたいんです! 私だけは正々堂々戦ってあいつらを見返してやりたいんです!」
「うおおおおおおおお!」
「えっ!?」
アンズに男泣きをしているチェルシーが抱き付く。
「良くいった! 私はアンズを応援するからな! ううっ……うわあああん!」
「チェルシーさん、ありがとうございます……みなせさん、とりみだして酷いことを言ってしまいごめんなさい!」
「いえいえ、私は全く気にしておりませんよ。アンズ様の決意を聞いて胸が熱くなりました。応援しております」
「私も校長としてアンズの決意は誇りに感じますわ。そして、卒業後は我が校の教員として迎えたいわ」
「ロサナ校長……嬉しいです!」
アンズの明るさが戻った所でみなせがゆっくりとつげる
「ところでチェルシー様……」
「んっ? どうしたみなせ? あっそうか! 飲み物か! みんな何飲む~? あっ! 私はもちろん緑茶がいいな! なんかこう落ちくというかなんというか……」
「それもそうでございますが、壁の修理費……このあと別途頂戴させて頂きます」
『あっ』
みなせの指差す方には先ほどチェルシーが殴ってヒビの入って欠けた壁があった。
「うあああああああああ! ごっごめんなさいいいいいいいい!」
チェルシーの叫びに全員の明るい笑い声が響き渡った……
……
……
……
ティアラ会が終わった部屋をみなせが片付けている。
「オーナーお手伝い致します」
「イズミさん……ありがとうございます」
「今回もお手柄でしたね」
「手柄だとは特に思っていませんよ」
「今回は【答案用紙】に始まり、【文字】【悪意】【友情】【犯人】沢山ことが隠されていましたね。話を聞きましたが酷い話ですね」
「はい。私もそう思います。ですがイズミさん今回一つだけ新しく隠されることになって、結果素晴らしいものが代わりに見つかりました」
「わかりかねます? オーナーの笑顔の理由はそれですか。聞かせてください」
「アンズ様は沢山のことを奴らに隠されましたが、奴らに対して【真相】を隠して、【決意】を見つけたことですよ」
……
……
……
~後日談~
「アンズさん、凄いね!」
「本当だよ!」
「首席に選ばれるなんて!」
「今度さ! 私たちにも勉強教えてよ!」
「みんな……ありがとう! うん! 私にわかることであれば協力させてね!」
アンズはクラスメイトに囲まれていた。成績は学校一位で職員の満場一致により首席を獲得した。その評価から隣のクラス学年問わず人が集まっていた。
そして……
「マリー……言われた通りにしたのにどういうことよ?」
「ちっ……あたしが知るわけないじゃない」
「あいつきっとズルしたのよ」
アンズたちより離れた入り口付近に溜まっていた、マリーとヒルダ一向の声を聞いたアンズの周りにいた生徒が反論する。
「言い掛かりはやめてよね?」
「そうよ。あなたたちいつもアンズさんに意地悪して!」
「あんたたちが何かしたんじゃないの? テストの結果発表遅かったしさ!」
「アンズちゃん……今まで見て見ぬ振りしててごめんね」
「これからはあたしたちがしっかり守ってあげるからね」
「みんな……ありがとう!」
「それにどうしてマリーがヒルダたちとつるんでるのよ?」
「確かに……」
「怪しいわね」
「べっ別にっ! あたしはこいつらを注意してただけだから! 今そっちに……きゃあっ!」
ヒルダ一向をよそに関係ないふりをして向かうマリーが何かにぶつかって転ぶ。
ぱしゃ……
「おいおい~。急に飛び出して来るなよ~あーあー、薬液溢しちゃったよ……はいはい~! みんな席ついて! ご好評につき、またしばらくだけどアーニャ先生の特別講義始めるよ~」
「アーニャ先生待ってたよ!」
「アーニャ先生の講義面白いから好き!」
「はーい席つきまーす!」
皆が席につく中、マリーが叫ぶ。
「何これ! 臭いっ!」
「あっ、ごめ~ん。あんたにかかった薬液なんだけどさ。友達のお祝いに香水作っててさ。それの失敗作……実はここだけの話なんだけどね。香水の殆どが動物の糞尿を少し使っててさ。片手間に作ってたら分量ミスってモロその匂いになっちゃった! でも、これに懲りたらちゃんと周りを確認するんだよ~」
「そんな~……」
「てなわけでしばらく、このマリーさんは臭いけどそれを理由にいじめとかしちゃダメだぞ~。そんなの見つけたらあたしが同じ薬液かけてやるからな~。まあ! 王国随一のエリートのあなたたちがそんなしょーもない幼稚なことしないよね~わははは」
生徒たちは鼻を摘まみながら苦笑いをした。
「さてさて~、今日の講義は面白いぞ~題して【魔法要らず! 書いた文字が消えちゃう不思議なペン】! 化学ってこんなことできるんだぞ~……まずはヨウ素デンプン反応っていうのがあってだなーーーーーーーーーーーーー……」
授業中、マリーとヒルダ一向は青ざめガタガタ震えていた……
ふと講義にアーニャが生徒たちに舌をペロッと出しウインクをした。
その可愛らしい仕草に生徒たちからの人気が上がった。
そして、可愛らしい仕草(サイン)の相手(アンズ)も思わずウインクを返したのだった……
除け者の隠された答案用紙(ハイドペーパー) 完
つづく
ボックスの横にロサナが立ち、ふぅ~……っと煙草を吹くと煙が鍵の形状に形が形成され、それを手に持ったロサナがボックスの鍵穴に差し込むと四角のボックスの一面が開いた。
「この中に生徒が利用した、見利用の【問題用紙】。生徒が見利用の空白の【解答用紙】。そして記入されている【答案用紙】ですわ」
「ほえ~……鍵はロサナの魔法になっているからロサナしか開けられないんだね」
鍵穴を覗き込むアーニャにチェルシーもボックスを叩きながら続く。
「しかし、これだと尚更アンズの答案用紙は何処へ消えたんだ? これだとやはり試験中じゃないとアンズの答案用紙を盗むことはできないだろ」
みなせはボックスに近づき答案用紙の束をロサナから預かる。しかし、みなせはその場から動かない。
「どうしました? みなせさん?」
ユアが不思議そうに訪ねるとみなせはロサナに手を伸ばした。
「みなせ? 答案用紙はそれで全てですわよ?」
「いえ……未記入の解答用紙にも混ざっている可能性がございますゆえ」
「私たちはもちろん調べましたわよ」
「まあまあ。ロサナさん。ここはみなせさんに任せましょうよ」
「そうだな」
「ロサナ~渡してやれよ~」
「……わかりましたわ」
少し不服そうにロサナは未記入の解答用紙をみなせに渡す……
「ありがとうございます。ロサナさま」
みなせはお礼をロサナに言うと解答用紙と答案用紙をパラパラとめくりチェックを始めた……
……
……
……
チェックを始めて数十分が経過したころ。
「皆様、見つかりました。アンズさまの答案用紙でございます……」
一枚の紙を全員に見えるように出す……
「えっ!? マジか!?」
「本当ですの!?」
「本当ですか!?」
「見つかったって~!?」
「みなせさんっ!?」
五人が驚き詰め寄りみなせの手に持った答案用紙を見つめる。
『!?』
五人は驚き言葉を失う……みなせの手に持った答案用紙は……
真っ白の白紙だった
名前すら書かれていない白紙をみなせは手に持ち語りだす。
「やはり私の思った通りにございます。アンズ様の答案用紙は未記入の解答用紙の中にございました」
「ばっ! バカにしないでよっ!」
アンズは激怒しみなせに掴みかかろうと飛びつく!
パシッ! その掴みかかろうとした手はみなせの目の前で止まった。チェルシーがアンズの手首を掴んでいたのだ。そのまま、アンズ手を後ろに捻りあげ拘束した。
「いっ! 痛い痛い! 離してよっ! 私をバカにしてっ!」
ギリッ……チェルシーは腕に力を込める。
「いづっ……」
「落ち着けよ……」
チェルシーの目は凍えるほど冷たい目をしていた。騎士として戦場に立つ者……容赦なく人を切り捨てるそんな姿を全員が想像して息を飲む。そしてそれは当然のごとく殺気を受けるアンズは特に汗をぶわっとかき怯えるように静かになった。それと同時にみなせも理由を話し出す。
「説明不足で申し訳ありません。これをご覧ください……」
みなせが胸ポケットから一本のペンを出し紙を優しく擦り出した……
『!?』
その場の全員がぎょっとした。なぜならペンで擦り出した所は真っ黒になったのだが、その真っ黒な部分を避けるかのように白い文字が浮きだし【アンズ】の名前が描かれていたのだ。
「どういうことですの!?」
「わっ私の名前が!」
みなせのペンが擦れる音がなる。空白の真っ白な解答用紙はみなせにより真っ黒な用紙になり、その代わりに白い答えが描かれた答案用紙へと生まれ変わった。
「みなせさん、どういうことでしょうか?」
みなせの隣にいたユアがみなせの袖をぎゅっと握りしめる。
「皆様の考えた【すり替えにより答案用紙が隠された】のではございません。隠されたのは【答案用紙】ではなく【文字】でございます」
「どういうことですか?」
アンズはまだ理解できていない。そしてチェルシーも驚愕している
。
「どうしてこんなことが……」
「まっ……魔法は掛けることができない。これは建物の構造や試験監督も魔法妨害をしているからですわ……しかしこれはどうして……」
「たしか、ヒルダという女子生徒がいましたよね!? その子が魔法を……」
「魔法は絶対に不可能ですわ……私と試験監督以外は! ということは……」
「犯人は試験監督か!?」
「いや! 実行犯は試験監督でヒルダが計画したんじゃ~!」
全員がガヤガヤする中、みなせの一言により注目の的が変わる……
「皆様……それはまた真犯人のミスディレクションに引っ掛かっております。事件が起きたのは王国随一の魔法学校……誰しもが【文字を消す魔法】を疑います。魔法学校で起きた事件でございますが、これはアーニャ様の専門分野でございますね。例えるならそうですね……私は小さい頃、勉強したことがございます。確か~ヨウ素……」
「ヨウ素デンプン反応! わかった~! 消えるインクを作り出したんだ~!」
「ヨウ素……なんだって?」
チェルシーのみならず全員が首を傾げる。
「詳しく説明してもわからないだろ~! ともかく、あたしはわかった! ざっくりというとデンプンを溶かした透明な液体に、消毒液とかに使われるこれまた透明のヨード液を入れると、透明な液体同士なのに紺色に変わるんだよ。そして熱を加えるとまた透明に戻るんだ!」
「そういうことですわね……」
「なんなんだ? ロサナまで? わからんぞ?」
「も~、チェルシーは脳筋だな~! いいかい? あたしらの話し合いで結論は出たと思うけど、途中で答案用紙を盗むことは不可能だ。だから、犯人は文字を消したんだ! 時間が経つと消えるようにね!」
「そういうことか! それでアンズの記入済みの答案用紙を白紙に変えて未使用の解答用紙に混ぜたのか」
「ですがそんなことできるの?」
「がっつりと混ぜた薬品だと消えるには結構な温度が必要だけど、量を調整すればあとで消えるなんて造作もないよ~! しかし、文字は消えたけど筆跡は残る! そこに目が着くとは流石みなせだね~! それによく化学反応まで知っていたね!」
「私の故郷では義務教育といいまして、ある一定量の知識は最低限身に付けないといけないという法がございまして、そこで得た知識でございます。そして、ロサナ様。この答案用紙で採点は可能でございますでしょうか?」
チェルシー、アーニャ、ユアの三人の視線がロサナに注ぐ。
「ええ……誰が何と言おうと私の権限をもって採点致しますわ」
「「「やったーーーー!」」」
ロサナの微笑みにチェルシー、アーニャ、ユアの三人は花のような歓喜の笑顔浮かべ、みなせに飛び付く。
「凄い! 凄いですよ! みなせさん!」
「いや~、みなせに化学の知識があるとは素晴らしいね! 今度あたしの研究室に遊びにくるかい~?」
「いやいや、なんていうか流石だ……よ……?」
「……」
全員がみなせを賞賛するがみなせの顔は全く嬉しそうではない。その様子に、はしゃいでいた三人と微笑んでいたロサナも気が付きその場は静かになる。
……カシャン
その静寂は食器のぶつかる音によって解かれる。音の方へと真っ青な顔をしたアンズがそこにいた。
「どっ……どうしたんだよ~アンズ~?」
「そっ、そうですよ。これでアンズさんの答案用紙は採点されることになったんですよ」
アーニャとユアが近づくとロサナが声を上げる。
「まっ……まさか……」
「そうです……必ずしも真実が幸せな結果とは限りません。これで真犯人もわかりました。アンズさんを陥れようとした人物でございますが……」
「……マリー?」
すとん……とアンズは崩れ落ちて床に膝立ちになる。目の光は失われてゆっくりと一粒の涙が頬を伝う。
同時にチェルシーが吠える。
「どうしてっ! マリーはアンズの親友のはずだろ!」
「………あたしたちはさ~。答案用紙の謎が解けて喜んでいたけど、もっとよく考えると酷いことだね……確かに消えるインクにより文字が隠された。そして、その状況を作り出したのは【消えるインクの入ったペン】を貸したマリーだとはね~……」
「……ひどい……こんなことってないです……」
ユアは泣きながら放心状態のアンズを抱き締める。
グシャ!
その音の方向を見ると煙草の箱を握り潰し、いつもの気品さが失われ憤怒の形相のロサナが立っていた。
「……絶対に許さない。マリーの奴はヒルダ一向もろとも退学どころじゃ済ましてやらない……人生を壊してやる……」
ロサナの一言を聞いた、放心状態のアンズ以外の全員が顔を青くする。若くして王国随一の魔法学校を設立した美人校長の面影はなく、その実績からは想像のつかないほどの厳しさを乗り越えてきたことがわかる一面である。
そして、ロサナはみなせに訪ねる。
「……みなせ……どこで気づいたの?」
「最初からでございます」
『!?』
全員が驚き、放心状態であったアンズもぴくりと体を震わせる。
「いっ……いくらなんでも流石に最初からは……」
「失礼ではございますが皆様は幼い頃にいじめられたご経験はございましょうか?」
「「「……」」」
チェルシー、ロサナ、ユアが黙る中。
「あたしはあるよ~」
「あっアーニャ!?」
「うん……あたしさ~見ての通り少し変人じゃん? これはさ~昔の学生時代から変わってないのよね。昔から実験ばかりしてて、みんなに気持ち悪がられて、物隠されたり、水かけられたり、暴力なんて日常茶飯事だったわけよ~」
「アーニャさん……」
「アーニャ! 教えてくれ! 誰にやられたんだ! 私がぶっとばしてやる!」
「あはは~。チェルシーあたしは29歳だよ? 昔の話だよ昔の話~」
「あっ……ああ……」
「でも、ありがとね~。そんな優しいチェルシー好きだよ~。……それでさ、みなせの言わんとしてることさ。あたしもわかっちゃったんだよね」
「何がわかったんですの?」
「アーニャ様……私の口から説明させて頂きます。まず疑問に感じた所はいじめについてでございます」
「いじめ?」
「はい……通常いじめが続くのには理由が二つございます【味方がいないため孤立している】そして【自分で動かない】……。今回私が話を聞いていてまず思ったことは、マリー様はヒルダのいじめを中断させる幼なじみであるにも関わらず、アンズ様のいじめが昔から続いていることです。学校全体からいじめられるならまだしも、マリー様の行動は周りから好感を持たれるはずで、王国随一のエリート校であるなら皆様頭が良く、どちらが悪で学校に相応しくないかは一目瞭然でわかるはずでございます。つまり、アンズ様は【自分では動かない】が【周りに味方がいた】にもかかわらず長きに渡りいじめが続いていることに対して、私は違和感を覚えました」
「あたしもさ~みなせの一言でそれがわかったんだよね……いじめを止めてくれる人……幼なじみがいるのにどうして昔からいじめられているのかってね」
「目立つヒルダ一向を囮(アンダーカバー)として隠れていた主犯でございます。私の経験上でございますが【いじめられているときは全てを疑う】……アンズ様の答案用紙を盗んだり、すり替えられたりする機会はなかった。すると残る疑うべき点は一つとなったわけにございます」
ガンっ!
チェルシーが壁を殴り、壁にヒビが入る……
「汚い手口にこっちまでムカついてきた」
「ええ……チェルシーの言う通りですわ」
「私がっ!」
ユアがアンズを抱き締めながら大きな声をあげる。
「私が味方になります! 何ができるかはまだわからないけど……でも!」
ユアとアンズの頭にアーニャがぽんっと手を乗せて撫でる。
「あたしも味方さね~……あたしも友達ができていじめられることもなくなった。そんで学校卒業したあと研究室でたくさんの結果を出してそいつら見返してやったんよ~。そう言うのってさ。自分で言うのもなんだけどカッコいいでしょ~。だから、アンズもさ頑張って見返してやろうよ」
アーニャはアンズにパチッ……と可愛らしくウインクをする。
二人の言葉を聞いてアンズは目を擦る。
「ユアさん、アーニャ先生……ありがとうございます」
「アンズに関わった生徒に対してはテストは無効はもちろんのこと、しっかりと罰は償わせるから安心してくださいね」
「ロサナ校長!」
「どうかなさいまして? 処罰について意見が……」
「今回のみんなには処罰はしないでください! それにテストも有効にしてください!」
『!?』
アンズの発言に全員が驚く。アンズは強い目して発言する。
「私は……今日の皆様のお陰で救われました。だから、自分から変わりたいんです! 私だけは正々堂々戦ってあいつらを見返してやりたいんです!」
「うおおおおおおおお!」
「えっ!?」
アンズに男泣きをしているチェルシーが抱き付く。
「良くいった! 私はアンズを応援するからな! ううっ……うわあああん!」
「チェルシーさん、ありがとうございます……みなせさん、とりみだして酷いことを言ってしまいごめんなさい!」
「いえいえ、私は全く気にしておりませんよ。アンズ様の決意を聞いて胸が熱くなりました。応援しております」
「私も校長としてアンズの決意は誇りに感じますわ。そして、卒業後は我が校の教員として迎えたいわ」
「ロサナ校長……嬉しいです!」
アンズの明るさが戻った所でみなせがゆっくりとつげる
「ところでチェルシー様……」
「んっ? どうしたみなせ? あっそうか! 飲み物か! みんな何飲む~? あっ! 私はもちろん緑茶がいいな! なんかこう落ちくというかなんというか……」
「それもそうでございますが、壁の修理費……このあと別途頂戴させて頂きます」
『あっ』
みなせの指差す方には先ほどチェルシーが殴ってヒビの入って欠けた壁があった。
「うあああああああああ! ごっごめんなさいいいいいいいい!」
チェルシーの叫びに全員の明るい笑い声が響き渡った……
……
……
……
ティアラ会が終わった部屋をみなせが片付けている。
「オーナーお手伝い致します」
「イズミさん……ありがとうございます」
「今回もお手柄でしたね」
「手柄だとは特に思っていませんよ」
「今回は【答案用紙】に始まり、【文字】【悪意】【友情】【犯人】沢山ことが隠されていましたね。話を聞きましたが酷い話ですね」
「はい。私もそう思います。ですがイズミさん今回一つだけ新しく隠されることになって、結果素晴らしいものが代わりに見つかりました」
「わかりかねます? オーナーの笑顔の理由はそれですか。聞かせてください」
「アンズ様は沢山のことを奴らに隠されましたが、奴らに対して【真相】を隠して、【決意】を見つけたことですよ」
……
……
……
~後日談~
「アンズさん、凄いね!」
「本当だよ!」
「首席に選ばれるなんて!」
「今度さ! 私たちにも勉強教えてよ!」
「みんな……ありがとう! うん! 私にわかることであれば協力させてね!」
アンズはクラスメイトに囲まれていた。成績は学校一位で職員の満場一致により首席を獲得した。その評価から隣のクラス学年問わず人が集まっていた。
そして……
「マリー……言われた通りにしたのにどういうことよ?」
「ちっ……あたしが知るわけないじゃない」
「あいつきっとズルしたのよ」
アンズたちより離れた入り口付近に溜まっていた、マリーとヒルダ一向の声を聞いたアンズの周りにいた生徒が反論する。
「言い掛かりはやめてよね?」
「そうよ。あなたたちいつもアンズさんに意地悪して!」
「あんたたちが何かしたんじゃないの? テストの結果発表遅かったしさ!」
「アンズちゃん……今まで見て見ぬ振りしててごめんね」
「これからはあたしたちがしっかり守ってあげるからね」
「みんな……ありがとう!」
「それにどうしてマリーがヒルダたちとつるんでるのよ?」
「確かに……」
「怪しいわね」
「べっ別にっ! あたしはこいつらを注意してただけだから! 今そっちに……きゃあっ!」
ヒルダ一向をよそに関係ないふりをして向かうマリーが何かにぶつかって転ぶ。
ぱしゃ……
「おいおい~。急に飛び出して来るなよ~あーあー、薬液溢しちゃったよ……はいはい~! みんな席ついて! ご好評につき、またしばらくだけどアーニャ先生の特別講義始めるよ~」
「アーニャ先生待ってたよ!」
「アーニャ先生の講義面白いから好き!」
「はーい席つきまーす!」
皆が席につく中、マリーが叫ぶ。
「何これ! 臭いっ!」
「あっ、ごめ~ん。あんたにかかった薬液なんだけどさ。友達のお祝いに香水作っててさ。それの失敗作……実はここだけの話なんだけどね。香水の殆どが動物の糞尿を少し使っててさ。片手間に作ってたら分量ミスってモロその匂いになっちゃった! でも、これに懲りたらちゃんと周りを確認するんだよ~」
「そんな~……」
「てなわけでしばらく、このマリーさんは臭いけどそれを理由にいじめとかしちゃダメだぞ~。そんなの見つけたらあたしが同じ薬液かけてやるからな~。まあ! 王国随一のエリートのあなたたちがそんなしょーもない幼稚なことしないよね~わははは」
生徒たちは鼻を摘まみながら苦笑いをした。
「さてさて~、今日の講義は面白いぞ~題して【魔法要らず! 書いた文字が消えちゃう不思議なペン】! 化学ってこんなことできるんだぞ~……まずはヨウ素デンプン反応っていうのがあってだなーーーーーーーーーーーーー……」
授業中、マリーとヒルダ一向は青ざめガタガタ震えていた……
ふと講義にアーニャが生徒たちに舌をペロッと出しウインクをした。
その可愛らしい仕草に生徒たちからの人気が上がった。
そして、可愛らしい仕草(サイン)の相手(アンズ)も思わずウインクを返したのだった……
除け者の隠された答案用紙(ハイドペーパー) 完
つづく
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