~異世界女子会~ 蒼い花(ティアラ)は誰が為に……

げんげんだの

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第3夜会 救済と奪取の裏切り者たち-アヴェンジャーズ(後編)

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「殺人が続いているだって!?」

 みなせの発言にメンバーがざわつく……

「みなせ……後二人殺害されると言いましたわね? その二人は誰ですの?」

「サラ様とドイル様にございます」

「どっどうしてですか?」

 ユアは恐怖のあまり顔を青くしていた。

「リリーナだね。二人が死ねば自分の所に帰ってくる遺産も増える」

「なるほど~」

「私はリリーナ様がギャスパー氏殺害の犯人とは一言も申し上げてはございません」

『!?』

 リリーナではない? という衝撃が全体を包んだ。

「じゃあ、ゼパールということですの!?」

「いいえ。ゼパール様でもございません」

『!?』

 更なる衝撃が全員を襲う。

「今回の事件のキーは復讐だと思っております。黒服の男=復讐者(アヴェンジャーズ)たちでございます」

「回りくどいな! 犯人は誰なんだ!? みなせはこの後ドイルとサラも殺されると言った。そして残りの容疑者はゼパールにリリーナ! しかし、それも違うとすると一体誰がその復讐者(アヴェンジャーズ)たちなんだ!?」

 みなせにチェルシーが詰め寄る。

「まさか……ギャスパーさん?」

 ユアのボソっとした声に全員が反応する。

「はい。私はそのように思っております」

「ま……待って。ギャスパーは死んでいるんだよね~」

「そうだね」

「ではどうしてギャスパーであるとみなせは思ったんですの?」

「はい。まずはシルビア様がお持ちになったこの写真たちでございます」

 みなせはそう言うとシルビアが持って来た複数の写真が貼ってあるコルクボードを指さした。

「この一枚の写真の上部中心より少し左側をご覧ください」

 全員が席を立ち写真へと詰め寄る。そうしてみなせの指示する写真を見て最初に気づいたのはユアだった。

「……ひぃっ」

 ユアの小さな悲鳴に全員が反応する。ユアは青醒めて腰を抜かし尻餅をその場についてしまった。

『ユアっ!?』

 全員がユアを見る。チェルシーがユアを支えて立たせて上げながら。

「ユアどうしたんだ。この写真に何があるんだ!?」

 写真はなんの変哲の無いただのパーティの写真だった。その写真はやや高い位置から撮影されたもので、パーティの軽い全体が見渡せるような写真であった。

「この写真がどうしたんですの?」

「み……みなさん……っここを……ここを見てください」

 ユアが声と指を震わせながら写真の一部を指さす。そこにはサラに言い寄るドイルの姿があった。

「サラとドイルだね」

「こ……ここからここを見て下さい」

「指をどかしてくれ……っつ!」

 ユアが指をズラすとチェルシーが最初に驚愕した。

「まっ待ってよこれ!」
「なんですの!?」
「……ギャスパー」

 この衝撃的な写真はスキャンダルとしてそこだけにインパクトがありただそれだけとしか言えない内容だったのだが、みなせが気が付き、ユアが続けて見つけた……二人の少し離れた人集りから、二人の逢瀬を眺めるギャスパーの姿を……
 ただ眺めている訳では無い。血管が写真でもわかるほどに浮き出るくらいに目を見開いているのだが憤怒の形相では無い無表情なのである。どれほどの怒りで人間はこんな顔になるのであろうか? 目を見開いた無表情であるがこれほどの悍ましい顔を見た全員が凍り付いていた。
 みなせは続ける。

「ギャスパー氏は気付いておりました。そして絶望したのでございましょう。そして生きる希望を失って自ら命をたったのでございます」

「ちょっちょっと待ってくれ! そうしたらギャスパーは自殺じゃないか!?」

「はい。愛した女性と後継者の様な愛弟子に裏切られたからでございます。しかし、ただ自殺した訳ではございません。裏切りものたちに復讐をする死に方を考え他のでは無いかと思います」

「復讐……」

「まずはギャスパー氏自身が謎の黒服の人間を装って屋敷の敷地をうろついて発見されます」

「どうしてその様なことをするのですか?」

 タバコの灰が落ちロサナは気が付いたように呟く。

「まさか……他殺を演じるためですの」

「その通りでございます。シルビア様は仰いました。『事件当日ギャスパーの部屋で三人は喧嘩をした』と恐らくですが」


……

……


『サラ! お前も部屋にこい!!』

『おい! ギャスパーさんどうしたんだ!?』

『あなた!?』

『来たか! これで裏切り者が揃ったな! このクソ女が! やはり貴様は金目当てだったか!』

『あなた! 何をいうの!? 私はあなたを!』

『じゃあ何故まだこのゴミと肉体関係を持っているんだ!』

『私とドイルの関係は昔に終わっています!』

『どうだかな! 若い男の体の方がいいんだろうが!』

『ひっひどいです! 私は別れてから彼に体を許した日はございません!』

 ブワッとサラの目から涙が溢れる。横で聞いていたドイルが割って入る。

『ギャスパーさん! あんたどうしたんだ!? おかしいぞ!?』

『オカシイだと!? オカシイのはお前の頭だ! いいかお前はただの街のゴロツキ! クズでゴミカスな人間をまともな仕事に導いた! 救済してやったのは俺だろうが! 違うか!?』

『ああ! あんたには感謝しているさ!』

『じゃあ人の最愛の妻に手を出すとはどういうことだ! 恩を仇で返しやがってお前らは屑だ! 消えろ! 俺の前から消えろ! 死んでしまえ!』


……

……


「というやり取りがあったのでは無いでしょうか? それでその罵詈雑言に耐え切れなくなりサラは飛び出すことがギャスパーには分かっていた。そして、ドイルだけは逃さない時間を稼ぐために……」

「ドイルを犯人に仕立て上げるためですね」

「それだけじゃないですわ。一人だけ泣きながら飛び出せばメイドのリリーナも心配して追いかけますわ。そうすれば、屋敷にはギャスパーとドイルの二人きり。ドイルを殺人犯に仕立て上げるには証拠・動機・アリバイ全てにおいて言い逃れできない状況が作り出される。ギャスパー自身の罪滅しのリリーナには決定的な情報を残さない。アリバイもゼパールを呼び出すことによりピッタリの環境を作り上げてから自殺したのですわ。自身が黒服の男と言う不審人物を装い他殺の可能性を匂わせ全ての人間を舞台にあげたのですわ」

「ってことはギャスパーの自作自演だったということなの」

「そうなるね~」

「……いや、それだけじゃない」

 バキッ!
 音に全員がシルビアが怖い顔をして爪を噛んでいた。その爪は割れていて血が流れていた。みなせはそっとシルビアの手を取り彼女の手をハンカチで包むと後ろの引き出しから救急セットを取り出して手当てを始めた。

「はい。この私の説明が事実でも事実じゃなくてもこの事件の犯人はどう足掻いてもドイルとなります。私の推測は恐らく真実により近いでしょう。しかし、証明する手立てもない。ドイルは実刑のみならず自ら命をたつでしょう。そして、残されたサラも後を追う……いや、サラの方が先かもしれませんね。この推測を二人に告げても結局は自責の念で自らという状態を作り上げたのでございます」

「そ……それじゃあ」

「はい。ギャスパー氏の思惑は見事に成功したのでございます。自身の命と引き換えにして……復讐者を演じる事によって……」

 夜会の場は静まりかえってしまう。各々思うことがあったからである。静寂を破ったのはシルビアだった。

「うん……そうだね。みなせの推理を聞いて僕もその内容に納得かな。実際にサラとドイルの言い争った内容は、みなせの予想に近い浮気を問い詰めるような内容だって聞いていたからね」

「シルビア~……これどうするのさ」

「一応依頼だからね。依頼者には説明するさ。しかし、どう説明したらいいものか」

「非常な言い方になってしまいますが、これはもうどうにもならないのですわ」

「打つ手なしと言うことか……二人ともギャスパーの後を追っていくのか」

「一つだけ……」

 みなせの一言に全員が振り向く。

「この推測を伝えてもらい開き直って頂く他にございません。人は本来死を恐れます。ギャスパー氏は年齢も年齢ですが二人はまだまだ若い……ドイルは逮捕されてしまいますが死刑は免れるかもしれません。どちらも死なないと言う講演に付き物のアクシデントにかける他ございません。私はそう思います」

「なんか済まないね。綺麗に解決をする様な話ではなくて」

「物語の様に全ての事が綺麗にまとまることはないですよね」

「やはり一つの事柄での成功者というものは強いと言うことだな」

「それでも僕はやはりみなせに話を聞いてもらって良かったと思っている。どうだろうか……本当に僕のパートナーになってもらえないだろうか? ……チュッ」

『あーーーーーっ!』

 シルビアはみなせの手を取り、その手の甲にキスをした。その動作に対しメンバー全員が驚愕した。

「さっきからちょこちょこみなせに色目を使っていると思っていたら何をしている!」

「シルビア~今のはちょっと見逃せないよね」

「私もどうかと思いますわ」

「みっ皆様、これはシルビア様のいつものことでして……」

「いつもされているのか!?」

「ちょっとみなせさん……詳しくお話をお伺いさせていただきたいですわ……」

「あ……あの……その……」

 みなせの顔は真っ赤に染り普段の冷静さはなく慌てふためいていた。そんな中ユアがテーブルをバンっと叩き立ち上がり。

「シルビアさん! ずるいです! 私だってみなせさんにそうしたいです!」

『……』

 全員の視線がユアに集中してユアはその視線の意味を知る。

「あーーーーーーーーー!」

 ユアは顔が真っ赤になりテーブルに突っ伏し部屋中に笑い声が響き渡ったのであった。



……


……


 その夜会からしばらくたったある日、みなせの店のバーカウンターで一人の女性が酒を嗜んでいた。その女の片手には新聞がおいてありその新聞には

『ドイル死刑判決』
『講演家ギャスパーの妻自殺』

という大きな見出しが書かれていた。
 新聞をパサッとカウンターにおいた女は従業員であるイズミに声をかける。

「オーナーのみなせさんは出勤していますか? 少し世間話がしたいのですが」

「はい。ただいまお連れ致します」

 女は自分が営業妨害の様な提案をしていることは承知していて断られる覚悟もしていたため、あっさりとオーナーを連れてくると言う対応に驚いた。

「お待たせいたしました……」

 ほどなくしてみなせがカウンターの向かいに立つ。女は話出す。

「こんなにも早くご対面できるとは思いませんでした」

「いえ……私は呼ばれる気がしておりましたよ。従業員3名にも事前に私を呼ぶ様に伝えておりました」

「今回のギャスパー家での事件について結果が出ましたがどう思われました」

「チェックメイトの状態で盤面を渡されても逆転は難しく思います。今回は完全な料理の様に【謎の黒服の男】と言う下準備をしっかりと口裏を合わせて下準備も行われておりましたから、あなた様がいたからこそギャスパー氏の計画はしっかりと遂行されたのでしょうね。育てられた恩義に報いたのか……それとも愛がもたらした結果なのか……」

 女は納得したかの様に溜息を吐きながらそれに答えた。

「だから貴方は言ったのですね……復讐者(アヴェンジャーズ)たちと……」



第3夜会 救済と奪取の裏切り者たち-アヴェンジャーズ 完
つづく
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