【完結】異教(男)の聖女は監禁・強制労働エンドを迎えるはずでした。が、冷徹騎士がオレの手を掴んでいます

藍 雨音(アイ アオト)

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第二章 嘘をやめた騎士と、聖女をやめたオレ

13 傲慢な想い

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ゆっくり顔を離したシグルスが、オレを見下ろして、ふっと笑った。

「どんな顔だ」
「ど、え、なに?」

茹だった頭で、必死に言われた言葉を噛み砕こうとする。
青い炎のようだった双眸が今は凪いで、煙る青を湛えて美しい。

「クルククスみたいだ」

クルククス……クルククス? 笑みを堪えた声が脳内を一巡して、もう一巡しそうになった時、意味を把握した。

「…………はあ?!」
「赤いな」

どこがだ、なんてとても言えなくて、ただ睨みつけた。
クルククスってあれだろ! 赤いリスみたいなぽやっとした顔の!!
誰のせいだと……!!
なるに決まってるだろ、あんな!!

「うるさいな! 下ろせ!!」
「いや、しばらく抱いてる」

こ、この……! 
いや、じゃないわ! なにしれっとお断りしてんだよ!!
本当にこいつ、オレの意見聞かないな?!
一応無駄な抵抗をしてみたけれど、本当に無駄に終わった。

「……お前さ、知らないからな。後から後悔したって、どうにもならないんだぞ」

びくともしない腕に息を荒げながら、視線を逸らした。
もし、本当にお前がオレを……好き、であっても。それでも、代償が大きすぎるだろって……そう言ってんのに。

「後悔は、もうした」

声音とセリフが随分不一致だ。
どう聞いても……楽しそう。
見上げたシグルスは、やっぱり機嫌の良さそうな顔で。

「もっと、早くから攫っていればよかった。国、潰してくればよかった」
「は……?」

オレ、耳が変? こいつ、口角上げて何言ってる?
『……まあ、国は後からでも潰せる』って呟いた気がするのは、気のせいなのか。

「だから、もう後悔はしない」

そんなわけないだろ。
本当に、馬鹿じゃないのか。

「……もしずっと、お前の一方的な想いでも?」
「ああ」
「もしオレが、お前を、……好きじゃなくても?」
「ああ」

もう言い様がなくて、ぐっと詰まった。
そこで、ああ、って言えるのおかしくないか?! それでいいわけないだろ。

「ただ――」

言葉を切ったシグルスが、捕食者の顔で、面白そうな顔で、にやっと笑って顔を寄せた。

「……早めに惚れた方が、お前のためだと思うが」

耳に吹き込まれた、たっぷりと艶を含んだ低い声。
どうしようもなく跳ねる心臓が、燃えるような顔が、悔しくて、腹立たしくて。
だけど、やっぱりどうしようもない。

「――ッ、そもそも、惚れること前提なのがおかしいんだよ!」

シグルスは精一杯反論したオレをじっと見て、そして、満足そうに笑ったのだった。
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