仔狐さくら、九尾を目指す

真弓りの

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選び直しの利点とリスク

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亀殿によると、神様のお使いというのはどうやらこうしてランクアップするときに、使える能力が増えるらしい。狐霊の場合は尻尾が増えるときに能力も増えるっていうから、次に能力が増えるのはさくらの尻尾が三本に増えるときだ。

蘇芳さんの例で考えると、それってもう何年とか何十年とかいう先の話になるんだろう。気が遠くなるようなスパンだよな。

で、その増える能力ってのがいくつかの候補の中からランダムで決まるらしい。狐霊なら二尾の時には人語や変化、人化、物質化あたりが獲得しやすいとか言われてしまって、俺はもう目を丸くするしかない。


「スキルツリーかよ。まるでゲームみてぇだな」


そんな聡のつぶやきに、ただただコクコクと頷いた。


「で? 選び直しって言うからには、その獲得しやすい能力の中から、選び直すって意味?」

「そうじゃのぅ、話が早くて助かるのぅ」


聡の質問に、亀殿がゆっくりと答える。話が早くて助かるって言うけど、そりゃあまぁ、ゲームとかでそのシステム、慣れてるし。こっちも分かりやすくて助かるよ。


「それにしても暑いのぅ。甲羅が灼けてかなわん」


ぼやく亀殿の甲羅を見れば、確かにもう随分と水気がなくなっていた。俺は滝壺の淵に膝をついて、水を掬っては亀殿の甲羅や頭に水をかけてやる。


「ああ~気持ちいいのぅ。陽にあたりながら浴びる水は格別じゃのぅ」


あれか。こたつで食べるアイスとか、あんなイメージか。

そう思うとなんとなく面白い。神様に近しい存在といっても、幸せを感じる部分は似通ったところもあるのかも知れない。あんまり幸せそうに首を伸ばして目を細めるから、俺は亀殿の気が済むまで水をかけてやることにした。

それにしてもこの滝壺の水、山奥にあるだけあってめちゃくちゃ澄んでる。


「水、飲めるのかな」

「当たり前じゃぁ~……ここらの水は神水じゃ~……」

「へー、水キレイだもんなぁ。雅人、あとで水汲ませてもらって帰ろうぜ」

「いいですか? 亀殿」

「減るモンじゃなし、持って帰るが良かろう~……」


たっぷり水を浴びてすっかりごきげんになった亀殿は、またゆっくりとしたペースで俺たちに色々とアドバイスをしてくれる。その中で一番ぎょっとしたのは、選び直しで一度失った能力は、三尾になった時には選べず、次に選べるようになるのは四尾以後ということだった。



「一度賜った能力を要らぬ、と捨てる行為じゃからのぅ」

「それなりのリスクは仕方ないんじゃないか?」


亀様も蘇芳さんも、そんなもんだと口をそろえた。これは、思ったよりもずっと重要な決断だ。
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