16 / 73
【ルシャ視点】思いがけない提案
しおりを挟む
そんな事をぼんやり考えながら見上げていたら、レオニーはふと柔らかく微笑んだ。
王子様より王子様っぽい微笑みに、こりゃあ女達が騒ぐのも頷ける、と密かに納得する。僕ですらちょっとドキッとしたもんね。
無意識なのが余計にたちが悪い。
「それで、なんなの?」
一向に話し始めないレオニーに、僕は視線を逸らしつつそう促した。
「ああ、実は今日は君に……将来についてどう考えているかを聞きに来たんだ」
「将来って」
思いもかけない言葉に、僕の頭は一瞬白くなった。まさか昨日初めて話したばかりのレオニーから『将来』について聞かれるなんて思わなかった。
「あ、ええと……なんて言えばいいのかな」
言い淀んでいるみたいだけど、レオニーが何を話したいのかなんてさっぱり分からないから、とりあえず小首を傾げておく。こういう時は変に言葉を発するよりは、黙って相手の言わんとする事を聞いた方がいい。
「ルシャの作る薬は質がいいし、材料さえあれば定期的に作る事は可能なんだろう?」
「……うん」
「充分に商売にできるレベルだと思う」
「ありがとう」
「で、ルシャが望むなら私の父に紹介したいと思うんだけど、ルシャは将来についてどう考えているの?」
「待って」
いきなり意味が分からない。
「なんでそこでいきなりアンタの父親に紹介するとか、将来がどうとかいう話になるわけ!?」
聞き返したら、レオニーは一瞬キョトンとした顔をして、次いで困ったように笑った。
「ごめん、色々考え過ぎてちょっと上手に説明出来なかったみたいだ。座って落ち着いて話そうか」
「そりゃいいけど」
レオニーに導かれるまま、僕は薬草や本の合間を縫ってテーブルへと戻る。自分の部屋なのにエスコートされるとはこれ如何に。
座って紅茶に口をつけ一息つくと、レオニーはゆっくりと話し始めた。
「私の父が騎士団の団長なのは知っているよね?」
「もちろん」
この国に来たばっかりの時に、王宮で顔合わせした事がある。いかつくて無表情だから一見怖いけど、あの場にいた誰よりも心が静かで僕は結構好きだった。
「騎士団では今よりも質のいい薬を求めていてね、ルシャが望むなら父に定期的に薬を買い取ってもらえるように紹介することが出来ると思うんだ。私の父は堅物で不正や搾取が大嫌いだから、適正な価格で買い取ってもらえると思う」
「ああー……それは、そうかもね」
「でもルシャがもっと手広く作った物を売ったりしていきたいなら、父から善良な買取ができる商人を紹介して貰う事もできると思う」
「なるほど」
「他にも商業ギルドで買い取って貰うことも出来るだろうし、薬屋とか雑貨屋とかに直接売り込むこともできる。冒険者ギルドで売ったり露店の権利だけ買って自分で商売したっていい。私だってそれなりに顔がきくから、手助けができると思うんだ」
王子様より王子様っぽい微笑みに、こりゃあ女達が騒ぐのも頷ける、と密かに納得する。僕ですらちょっとドキッとしたもんね。
無意識なのが余計にたちが悪い。
「それで、なんなの?」
一向に話し始めないレオニーに、僕は視線を逸らしつつそう促した。
「ああ、実は今日は君に……将来についてどう考えているかを聞きに来たんだ」
「将来って」
思いもかけない言葉に、僕の頭は一瞬白くなった。まさか昨日初めて話したばかりのレオニーから『将来』について聞かれるなんて思わなかった。
「あ、ええと……なんて言えばいいのかな」
言い淀んでいるみたいだけど、レオニーが何を話したいのかなんてさっぱり分からないから、とりあえず小首を傾げておく。こういう時は変に言葉を発するよりは、黙って相手の言わんとする事を聞いた方がいい。
「ルシャの作る薬は質がいいし、材料さえあれば定期的に作る事は可能なんだろう?」
「……うん」
「充分に商売にできるレベルだと思う」
「ありがとう」
「で、ルシャが望むなら私の父に紹介したいと思うんだけど、ルシャは将来についてどう考えているの?」
「待って」
いきなり意味が分からない。
「なんでそこでいきなりアンタの父親に紹介するとか、将来がどうとかいう話になるわけ!?」
聞き返したら、レオニーは一瞬キョトンとした顔をして、次いで困ったように笑った。
「ごめん、色々考え過ぎてちょっと上手に説明出来なかったみたいだ。座って落ち着いて話そうか」
「そりゃいいけど」
レオニーに導かれるまま、僕は薬草や本の合間を縫ってテーブルへと戻る。自分の部屋なのにエスコートされるとはこれ如何に。
座って紅茶に口をつけ一息つくと、レオニーはゆっくりと話し始めた。
「私の父が騎士団の団長なのは知っているよね?」
「もちろん」
この国に来たばっかりの時に、王宮で顔合わせした事がある。いかつくて無表情だから一見怖いけど、あの場にいた誰よりも心が静かで僕は結構好きだった。
「騎士団では今よりも質のいい薬を求めていてね、ルシャが望むなら父に定期的に薬を買い取ってもらえるように紹介することが出来ると思うんだ。私の父は堅物で不正や搾取が大嫌いだから、適正な価格で買い取ってもらえると思う」
「ああー……それは、そうかもね」
「でもルシャがもっと手広く作った物を売ったりしていきたいなら、父から善良な買取ができる商人を紹介して貰う事もできると思う」
「なるほど」
「他にも商業ギルドで買い取って貰うことも出来るだろうし、薬屋とか雑貨屋とかに直接売り込むこともできる。冒険者ギルドで売ったり露店の権利だけ買って自分で商売したっていい。私だってそれなりに顔がきくから、手助けができると思うんだ」
4
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
恩知らずの婚約破棄とその顛末
みっちぇる。
恋愛
シェリスは婚約者であったジェスに婚約解消を告げられる。
それも、婚約披露宴の前日に。
さらに婚約披露宴はパートナーを変えてそのまま開催予定だという!
家族の支えもあり、婚約披露宴に招待客として参加するシェリスだが……
好奇にさらされる彼女を助けた人は。
前後編+おまけ、執筆済みです。
【続編開始しました】
執筆しながらの更新ですので、のんびりお待ちいただけると嬉しいです。
矛盾が出たら修正するので、その時はお知らせいたします。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる