その愛は毒だから~或る令嬢の日記~

天海月

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2.その「愛している」は呪いで

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あなたはわたくしを愛しているとは一度も仰らなかった。

わたくしはあなたから愛されたくて、何度も愛していると告げました。

それは、数えきれないほど・・・。

けれど、そこまでしてもあなたからは一度だって言ってはくださらなかった。


だから、決めたのです。

わたくしもあなたに愛しているとはもう決して申し上げないと。


すると、あなたは急に「自分に対して愛がなくなってしまったのか?」と、不安そうに尋ねてこられるようになりました。

あそこまでして、言ってくださらなかったのだから、そもそもわたくしのことなど、どうでも良いのだと思っていましたが、そうではないのですか?

立場が逆になって、やっとわたくしの感じていたことが分かったということなのでしょうか。

けれど、今更遅いのです。

愛していると口に出さないと決めて、それを続けていくうちに、いつの間にか、本当にあなたへの愛も薄れていったのです。

きっとわたくしが口にしていた「愛している」は一種の自己暗示か何かだったのでしょう。

「愛している」と口にしているのだから、愛しているに違いないと思い込むための。

ある意味、移り気な自分をあなたへと縛り付けておくために、わたくし自身が考え出した呪いのようなものだったのです。


思えば、わたくしはあなたのことははじめからそれほど好きでもなかったのです。

その昔、あなたが今からでは想像もつかないような、純情そうな顔を赤らめながら、わたくしに婚約を申し込んできたことについ胸をうたれてしまったのが、全てのはじまりでした。

その時に、わたくしは自身に呪いをかけたのです。

あなたを愛し続けるという呪いを。

そして、「愛している」と口にしなくなったとき、その呪いは解けました。

やっと、正気に戻ったのです。

あなたはわたくしの愛しい人などではありませんでした。

呪いを本物の愛に変えてくださる方でもありませんでした。

一方的な享受を当たり前だと思って、つなぎとめるための努力も何もしないただの怠惰で平凡な男に過ぎませんでした。

わたくしが見誤ってしまったのです。



けれど、何も気にすることはありません。

愛という名の呪いは解けて、ただはじまる前に戻っただけなのですから。


fin.
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