25 / 37
24
しおりを挟む
アメリアは、結論に至った。
そんな事はありえないと一瞬思ったが、当時の彼の精神状態を察すれば無いとは言い切れなかった。
アメリアは本能的に理解した。
『おそらくセルヴィスは、あの薬を一度に全て摂取したのだ』と。
彼女が以前推測した通り、彼は確かに病にかかってなど居なかったのだ。
彼は別の目的の為に、それを摂取したのだ。
病の治療のためではなく、その薬の副作用だけを狙って、それを確実にするために・・・。
アメリアは医療書の但し書きを思い出す。
最後に禁忌として書かれていた一文の項目を。
『一度に大量摂取した場合、不可逆的な副作用をもたらす』
だから、彼の痣は死んだように黒化して、自分を顧みることもなかったのだと、悟った。
そして、はっきりと解ってしまった。
彼はもう二度と戻らないのだ、と。
彼はこれからも今のままで、ずっと変わることは無いのだ、ということも・・・。
他人はもちろん、アメリアも、彼自身でさえも、もう彼を変えることは出来ないのだということも。
薬の発注時期がすべてを物語っているような気がした。
愛する人を自分で死に追いやった自分に絶望した彼は、番を感じることなどもうこりごりだと、自暴自棄にも似た思いで一気に薬をあおったに違いない。
彼はどんな思いでそれを飲んだのだろう。
アメリアはセルヴィスの心境を思うと胸が詰まったが、想像を絶するような彼のその失意の深さを量りきることは、到底出来そうになかった。
謎を解き明かしたことに対する僅かな喜びは、感じる間もなく闇のような黒い失望に塗りつぶされた。
アメリアは真実に辿り着いてしまった。
番としての彼はアメリアと出会うよりも先に、すでに死んでいたのだ。
やはり、行き着くべきではなかった終着点だったのかもしれない。
そこには、ただ空虚で救いようのない事実が横たわっていただけだった。
アメリアが望んでいた場所には、今更何をしようとも辿り着けないのだということ。
自分は初めから不必要な存在だったという事が、ただ何よりも明らかになっただけだった。
彼女は、もう本当に、彼が自分のものになることは永遠に無いのだという、一方的な最後通告を言い渡されたような気がした。
アメリアは、目の前が真っ暗になったようだった。
考えがうまく纏まらない。
悲しくて、虚しくて、惨めでどうしようも無いはずなのに、彼女が涙を見せることはなかった。
その慟哭に揺れる心境とは裏腹に、長く続いた苦悩は、彼女の泉を既にに涸れ果てさせてしまっていた為だった。
そんな事はありえないと一瞬思ったが、当時の彼の精神状態を察すれば無いとは言い切れなかった。
アメリアは本能的に理解した。
『おそらくセルヴィスは、あの薬を一度に全て摂取したのだ』と。
彼女が以前推測した通り、彼は確かに病にかかってなど居なかったのだ。
彼は別の目的の為に、それを摂取したのだ。
病の治療のためではなく、その薬の副作用だけを狙って、それを確実にするために・・・。
アメリアは医療書の但し書きを思い出す。
最後に禁忌として書かれていた一文の項目を。
『一度に大量摂取した場合、不可逆的な副作用をもたらす』
だから、彼の痣は死んだように黒化して、自分を顧みることもなかったのだと、悟った。
そして、はっきりと解ってしまった。
彼はもう二度と戻らないのだ、と。
彼はこれからも今のままで、ずっと変わることは無いのだ、ということも・・・。
他人はもちろん、アメリアも、彼自身でさえも、もう彼を変えることは出来ないのだということも。
薬の発注時期がすべてを物語っているような気がした。
愛する人を自分で死に追いやった自分に絶望した彼は、番を感じることなどもうこりごりだと、自暴自棄にも似た思いで一気に薬をあおったに違いない。
彼はどんな思いでそれを飲んだのだろう。
アメリアはセルヴィスの心境を思うと胸が詰まったが、想像を絶するような彼のその失意の深さを量りきることは、到底出来そうになかった。
謎を解き明かしたことに対する僅かな喜びは、感じる間もなく闇のような黒い失望に塗りつぶされた。
アメリアは真実に辿り着いてしまった。
番としての彼はアメリアと出会うよりも先に、すでに死んでいたのだ。
やはり、行き着くべきではなかった終着点だったのかもしれない。
そこには、ただ空虚で救いようのない事実が横たわっていただけだった。
アメリアが望んでいた場所には、今更何をしようとも辿り着けないのだということ。
自分は初めから不必要な存在だったという事が、ただ何よりも明らかになっただけだった。
彼女は、もう本当に、彼が自分のものになることは永遠に無いのだという、一方的な最後通告を言い渡されたような気がした。
アメリアは、目の前が真っ暗になったようだった。
考えがうまく纏まらない。
悲しくて、虚しくて、惨めでどうしようも無いはずなのに、彼女が涙を見せることはなかった。
その慟哭に揺れる心境とは裏腹に、長く続いた苦悩は、彼女の泉を既にに涸れ果てさせてしまっていた為だった。
16
あなたにおすすめの小説
彼女は白を選ばない
黒猫子猫
恋愛
ヴェルークは、深い悲しみと苦しみの中で、運命の相手とも言える『番』ティナを見つけた。気高く美しかったティナを護り、熱烈に求愛したつもりだったが、彼女はどうにもよそよそしい。
プロポーズしようとすれば、『やめて』と嫌がる。彼女の両親を押し切ると、渋々ながら結婚を受け入れたはずだったが、花嫁衣装もなかなか決めようとしない。
そんなティナに、ヴェルークは苦笑するしかなかった。前世でも、彼女は自分との結婚を拒んでいたからだ。
※短編『彼が愛した王女はもういない』の関連作となりますが、これのみでも読めます。
【完結】有能外交官はドアマット夫人の笑顔を守りたい
堀 和三盆
恋愛
「まあ、ご覧になって。またいらしているわ」
「あの格好でよく恥ずかしげもなく人前に顔を出せたものねぇ。わたくしだったら耐えられないわ」
「ああはなりたくないわ」
「ええ、本当に」
クスクスクス……
クスクスクス……
外交官のデュナミス・グローは赴任先の獣人国で、毎回ボロボロのドレスを着て夜会に参加するやせ細った女性を見てしまう。彼女はパルフォア・アルテサーノ伯爵夫人。どうやら、獣人が暮らすその国では『運命の番』という存在が特別視されていて、結婚後に運命の番が現れてしまったことで、本人には何の落ち度もないのに結婚生活が破綻するケースが問題となっているらしい。法律で離婚が認められていないせいで、夫からどんなに酷い扱いを受けても耐え続けるしかないのだ。
伯爵夫人との穏やかな交流の中で、デュナミスは陰口を叩かれても微笑みを絶やさない彼女の凛とした姿に次第に心惹かれていく。
それというのも、実はデュナミス自身にも国を出るに至ったつらい過去があって……
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
番認定された王女は愛さない
青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。
人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。
けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。
竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。
番を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
嘘だったなんてそんな嘘は信じません
ミカン♬
恋愛
婚約者のキリアン様が大好きなディアナ。ある日偶然キリアン様の本音を聞いてしまう。流れは一気に婚約解消に向かっていくのだけど・・・迷うディアナはどうする?
ありふれた婚約解消の数日間を切り取った可愛い恋のお話です。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結済】春を迎えに~番という絆に導かれて~
廻野 久彩
恋愛
辺境の村から王都の星環教会へやってきた研修生アナベル・ウィンダーミア。
門で出会った王族直属騎士団副団長ルシアン・ヴァルセインと握手を交わした瞬間、二人の手首に金色の光が浮かび上がる。
それは"番"——神が定めた魂の半身の証。
物語の中でしか聞いたことのない奇跡的な出会いに胸を躍らせるアナベルだったが、ルシアンの口から告げられたのは冷酷な現実だった。
「俺には……すでに婚約者がいる」
その婚約者こそ、名門ルヴェリエ家の令嬢セレナ。国境の緊張が高まる中、彼女との政略結婚は王国の命運を左右する重要な政治的意味を持っていた。
番の衝動に身を焼かれながらも、決して越えてはならない一線を守ろうとするルシアン。
想い人を諦めきれずにいながら、彼の立場を理解しようと努めるアナベル。
そして、すべてを知りながらも優雅に微笑み続けるセレナ。
三人の心は複雑に絡み合い、それぞれが異なる痛みを抱えながら日々を過ごしていく。
政略と恋情、義務と本心、誠実さと衝動——
揺れ動く想いの果てに、それぞれが下す選択とは。
番という絆に翻弄されながらも、最後に自分自身の意志で道を選び取る三人の物語。
愛とは選ぶこと。
幸せとは、選んだ道を自分の足で歩くこと。
番の絆を軸に描かれる、大人のファンタジーロマンス。
全20話完結。
**【キーワード】**
番・運命の相手・政略結婚・三角関係・騎士・王都・ファンタジー・恋愛・完結済み・ハッピーエンド
つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?
宝月 蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ!
ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。
エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。
ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。
しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。
「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」
するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる