必要なのはAIと愛と

転生新語

文字の大きさ
2 / 5

2000年過ぎ、宇宙の旅

しおりを挟む
 この宇宙うちゅうせんが、どれほどのおおきさなのかはらない。私がいる船内せんない区画くかくは、さっきまで私がいた21世紀せいき日本にほんにあった、自宅じたく全体ぜんたいおなじくらいのひろさである。ちなみに私の服装ふくそうわってなくて、宇宙うちゅうふくなんかは着用ちゃくようしていない。あつくもなくさむくもなく、快適かいてき室温しつおんたもたれているのはいつもどおりだ。

 しろあお銀色ぎんいろが、やさしいバランスでかべ計器類けいきるい配色はいしょくされていて、私は宇宙うちゅうせん操縦そうじゅうしつにいる。コクピットといってもせましつないではなく、前述ぜんじゅつしたとおり、地球ちきゅう自宅じたく程度ていどのスペースだ。ひろさも、たかさも。

 感覚かんかくとしては立方体りっぽうたい内部ないぶに私はいる。コクピットの前方ぜんぽうにはモニターがあって外部がいぶ状況じょうきょううつしているが、宇宙うちゅう空間くうかんがあるだけなので意味いみはない。私はモニターまえけられた椅子いすすわっている。重力じゅうりょくなので、固定こていしないと椅子いすいてしまうのだ。

AIエーアイ適当てきとう音楽おんがくをかけて」

 どうせ操縦そうじゅう自動じどうおこなわれるので、私は椅子いすからがる。らないきょく船内せんないながれて、たぶん23世紀せいきくらいの楽曲がっきょくなのだろう。ひと作曲さっきょくしたのかもあやしい。音響おんきょうくて、さすがは未来みらい技術ぎじゅつだとおもいながら私はジャンプした。

 ゆっくりした速度そくど天井てんじょうまでがっていって、でタッチしてから空中くうちゅう宙返ちゅうがえりする。天井てんじょうって、船内せんないゆかまで逆戻ぎゃくもどりして、今度こんどおくかべまでボールのように私はねる。水泳すいえいみたいなたのしさがあった。

 この宇宙うちゅうせん高速こうそく(もしくは光速こうそく?)で移動いどうちゅうらしいのだが、その船内せんないで、こんなに優美ゆうび空中くうちゅう遊泳ゆうえいって本当ほんとう可能かのうなのだろうか。宇宙うちゅう理屈りくつなんからないので、きっと未来みらいのテクノロジーがなんとかしているのだろう。私がつじつまわせをかんがえても仕方しかたがない。そもそも、ここが現実げんじつ世界せかいなのかもわからないし。



 この宇宙うちゅう船内せんないはじめておとずれたのは、地球ちきゅう日本にほんで、私の現実げんじつかん希薄きはくになっていってからだった。現実げんじつから遊離ゆうりする、というとこのましくない病気びょうきみたいだけど。そういった症状しょうじょうともちがうんじゃないかとおもう。むしろ、ほか世界せかいとのつながりがつよくなってきたというのが私のじっかんだ。

 ある日本にほん自宅じたくの、作業さぎょうスペースで椅子いすすわってじていると。この船内せんない光景こうけいえた。るよりもはっきりとしたじっかんがあって、ああ私はここにいるんだ、という納得なっとくがあって。そしてけたとき、私は船内せんないへと移動いどうをしていた。

 操縦そうじゅうせきすわって、そなけのAIエーアイがあったのではなしかけてみると、私は運送業うんそうぎょう途中とちゅうなのだと説明せつめいをされた。私はこのふねで、べつ宇宙うちゅうせんまではこぶのが仕事しごとであるらしい。ちなみに目的地もくてきちまでは数十年すうじゅうねんかかるんだとか。

『そんなにぃ?』と私がったら、『いまみな貴女あなたふくめて寿命じゅみょうびているので問題もんだいありません』とAIエーアイから回答かいとうされた。そういう問題もんだいなのか。問題もんだいないならしたがうしかない。さすがに数十年すうじゅうねん、ここにすわりっぱなしでごすはないから、適当てきとうに私は宇宙うちゅう船内せんないごしてから21世紀せいき日本にほんかえ日々ひびおくっている。

AIエーアイ、私をゆっくりゆかろして」

 何回なんかいかの遊泳ゆうえいターンをえて、私はAIエーアイ指示しじをする。ちゅういて移動いどうしていた、私の身体からだ減速げんそくしていく。重力じゅうりょく発生はっせい装置そうちとか、そういう作用さようなのだろう。ゆっくりとした速度そくどで、モニターまえまで遊泳ゆうえいしていって、そのモニターを靴底くつぞこみつけてからゆかへと着地ちゃくちした。AIエーアイ従順じゅうじゅんなので文句もんくなどはわれない。

 モニターもふくめて、船内せんない頑丈がんじょうなので私がなにをしようと故障こしょう心配しんぱいもほとんどない。たぶん私が本気ほんき反抗はんこうしたら、このAIエーアイは私を抹殺まっさつしてべつのパイロットにえるのではないか。ためはないけど。私がはこぶという使命しめい拒否きょひしないかぎり、AIエーアイちゃんは私に従順じゅうじゅんで、せいぜい関係かんけいきずいていこうとおもう。

「ボレロをかけてよ、AIエーアイ

 操縦そうじゅうせき腰掛こしかけて、リクライニングチェアじょうもたれにあずける。重力じゅうりょくなので、シートベルトで身体からだ固定こていしないと、反発はんぱつ椅子いすからがってしまうのはムードがないが。音響おんきょうがいい空間くうかんで、クラシックの管弦かんげん楽曲がっきょくたのしめるのはわるくなかった。

 アニメの銀河ぎんが英雄えいゆう伝説でんせつで、戦闘せんとうちゅうながれていた楽曲がっきょくだから、宇宙うちゅう空間くうかんわないわけがない。よくSFエスエフ映画えいがでは宇宙うちゅう海賊かいぞくなんかがてくるけれど、実際じっさい宇宙うちゅうひろすぎて、そんなものに遭遇そうぐうする確率かくりつはゼロだそうだ。一応いちおう自衛用じえいよう武器ぶき船内せんないにあるけど、使つか機会きかいもなく私はこうして音楽おんがく鑑賞かんしょう没頭ぼっとうしている。

 たときと同様どうように、じてねんじれば私は地球ちきゅう日常にちじょうへともどることができる。ただ、いそいでかえ必要ひつようもない。ここで何日なんにちごしても、もと日常にちじょう世界せかいでは時間じかん経過けいかしていないのだ。ここは未来みらいなのだから当然とうぜんかもしれない。未来みらいなん時間じかんろうしようが、過去かこすでっているのだから。

 じたまま、ボレロを堪能たんのうする。まっすぐ日常にちじょうもどはなかった。すこし、みちをしていこう。私はふたつの世界せかい同時どうじねんじて、それからけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【時代小説】 黄昏夫婦

蔵屋
歴史・時代
 江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。  そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。  秋田藩での仕事は勘定方である。  仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。 ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。   そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。  娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。  さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。    「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。  今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。  この風習は広く日本で行われている。  「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。  「たそかれ」という言葉は『万葉集』に 誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」 — 『万葉集』第10巻2240番 と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。  「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に 「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」 — 『源氏物語』「夕顔」光源氏 と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。  なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。  またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。 漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。  「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。  この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。  それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。  読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。  作家 蔵屋日唱    

処理中です...