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倉餅家(くらもちけ)の歴史、秘密の能力
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「狙いは私でしょう。その子を解放してくれる?」
「いいだろう。どうせ何も出来やしない」
椅子に座らされて、私の自由を奪っていた拘束バンドを彼が外した。動けるようになっても、私が静止せざるを得なかったのは、男性が内側の胸ポケットから拳銃を取り出したからだ。
「心配いらないわ。そのまま、動かずにいてね」
万里愛さまが恐れげもなく、私に笑いかける。今すぐ、お姉さまに室内から出て逃げてほしいのに、私は怖くて声が出ない。
「度胸があるのか何なのか、わからねぇな。お前はここで死ぬんだぜ?」
「貴方は壊滅した暴力団の一員かしら。こんなことをしないで、国外にでも逃げれば良かったのに」
男性の言葉など気にも留めず、万里愛さまが声を掛けている。私は何もできず座ったままだ。
「ふざけるな、倉餅家に復讐もせずに逃げるかよ。暴力団と裏で繋がって、これまで美味い汁を吸ってきたくせに、警察に情報を流して裏切りやがった。俺らの事務所を燃やしたのも、倉餅家だろ!」
「今の時代、ドローンでの襲撃に対応できないようじゃ、争いに勝てないわよ。時代は変わって、役割は変わったの。貴方たちの時代は終わり。世を良くするために退場してちょうだい」
話が、私の理解力を超えている。ただただ圧倒されていた。
「そうは行くかよ。負けるにしても、復讐だけはさせてもらう。倉餅家の娘を殺せば、少なくとも俺の気は晴れるってもんさ。あの家が、お前の死を悲しむかは知らねぇがな」
「その子を誘拐したのは賢かったわね。私が絶対に来ると、わかっていたのかしら。そして彼女を傷つけなかったのも褒めてあげる」
「友だちがいないんだろ、お前。孤独なお嬢さまが屋敷に招く、唯一の下級生がコイツって訳だ。何か、遺言があれば聞かせてやりな」
万里愛さまが、私に顔を向ける。笑いかけてくれて、こう言った。
「銃声で鼓膜を痛めると、いけないわ。耳を塞いでなさい、私は大丈夫だから」
「お姉さま……」
かすれ声しか私は出ない。男性は拳銃を万里愛さまへと向けた。
「六発全弾、ぶちこんでやる。コンクリート壁での跳弾が怖ぇが、それで俺が死ぬなら受け入れるさ」
撃つ、という気配がわかった。咄嗟にお姉さまから言われたように、両手で耳を塞ぐ。轟音が連続して、私はお姉さまの姿を目で追って────そして私は奇跡を目撃した。
「それで全弾? じゃあ終わらせましょうか、貴方の命を」
万里愛さまが青い光に包まれている。六つの弾丸がお姉さまの前で空中に止まっていて、ややあって床へと落ちた。男性が呆然としていて、私は理解する。これは──パリィだ。
「何だ……何なんだよ、お前……」
悪魔を見たような声音で、男性が呟く。お姉さまが彼に話しかけ始めた。
「倉餅家の歴史を教えてあげる。その昔、江戸時代には気の作用で、相手を動けなくする剣術の一派があってね。超能力みたいなもので、倉餅家はその能力を持った人材を養子に迎えて、力を発展させていったの」
能力を持った人間って、調べればわかるのよ。例えば戦に出ても、かすり傷を一つも負わないとか。普通なら死ぬような事故に遭っても、何のダメージも受けない。そういう人はバリアを発生させて、自分の身を守っていたの。今の私みたいにね。──そう、話は続いた。
「私の名前である万里愛って、バリアに響きが似てるでしょう? そういう家系の娘だからってことで名づけられたみたい。私の家は、能力を活用して、この国を良い方向へ導いていくと決めた。だから暴力団との繋がりは、もう不要なのよ」
お姉さまが私を手招きする。呪縛が解けたように足が動いて、私は万里愛さまに抱き着いていた。
「ここから先は見なくていいわ。部屋の外で待ってて」
「……はい、お姉さま」
「は……ははは! 本物のバケモノって訳だ! 俺は用済みで消される。気を付けろよ、下級生の嬢ちゃん! お前さんも用が済んだら始末されるぜ! 先に、あの世で待ってるからよ!」
振り返らず、部屋から出てドアを閉める。薄暗い廊下があって、室内から声は聞こえなかった。防音が優れているのか、男性が悲鳴をあげることを拒んだのか。さほど時間は掛からず、万里愛さまが部屋から出てきた。
「済んだわ。帰りましょうか」
「いいだろう。どうせ何も出来やしない」
椅子に座らされて、私の自由を奪っていた拘束バンドを彼が外した。動けるようになっても、私が静止せざるを得なかったのは、男性が内側の胸ポケットから拳銃を取り出したからだ。
「心配いらないわ。そのまま、動かずにいてね」
万里愛さまが恐れげもなく、私に笑いかける。今すぐ、お姉さまに室内から出て逃げてほしいのに、私は怖くて声が出ない。
「度胸があるのか何なのか、わからねぇな。お前はここで死ぬんだぜ?」
「貴方は壊滅した暴力団の一員かしら。こんなことをしないで、国外にでも逃げれば良かったのに」
男性の言葉など気にも留めず、万里愛さまが声を掛けている。私は何もできず座ったままだ。
「ふざけるな、倉餅家に復讐もせずに逃げるかよ。暴力団と裏で繋がって、これまで美味い汁を吸ってきたくせに、警察に情報を流して裏切りやがった。俺らの事務所を燃やしたのも、倉餅家だろ!」
「今の時代、ドローンでの襲撃に対応できないようじゃ、争いに勝てないわよ。時代は変わって、役割は変わったの。貴方たちの時代は終わり。世を良くするために退場してちょうだい」
話が、私の理解力を超えている。ただただ圧倒されていた。
「そうは行くかよ。負けるにしても、復讐だけはさせてもらう。倉餅家の娘を殺せば、少なくとも俺の気は晴れるってもんさ。あの家が、お前の死を悲しむかは知らねぇがな」
「その子を誘拐したのは賢かったわね。私が絶対に来ると、わかっていたのかしら。そして彼女を傷つけなかったのも褒めてあげる」
「友だちがいないんだろ、お前。孤独なお嬢さまが屋敷に招く、唯一の下級生がコイツって訳だ。何か、遺言があれば聞かせてやりな」
万里愛さまが、私に顔を向ける。笑いかけてくれて、こう言った。
「銃声で鼓膜を痛めると、いけないわ。耳を塞いでなさい、私は大丈夫だから」
「お姉さま……」
かすれ声しか私は出ない。男性は拳銃を万里愛さまへと向けた。
「六発全弾、ぶちこんでやる。コンクリート壁での跳弾が怖ぇが、それで俺が死ぬなら受け入れるさ」
撃つ、という気配がわかった。咄嗟にお姉さまから言われたように、両手で耳を塞ぐ。轟音が連続して、私はお姉さまの姿を目で追って────そして私は奇跡を目撃した。
「それで全弾? じゃあ終わらせましょうか、貴方の命を」
万里愛さまが青い光に包まれている。六つの弾丸がお姉さまの前で空中に止まっていて、ややあって床へと落ちた。男性が呆然としていて、私は理解する。これは──パリィだ。
「何だ……何なんだよ、お前……」
悪魔を見たような声音で、男性が呟く。お姉さまが彼に話しかけ始めた。
「倉餅家の歴史を教えてあげる。その昔、江戸時代には気の作用で、相手を動けなくする剣術の一派があってね。超能力みたいなもので、倉餅家はその能力を持った人材を養子に迎えて、力を発展させていったの」
能力を持った人間って、調べればわかるのよ。例えば戦に出ても、かすり傷を一つも負わないとか。普通なら死ぬような事故に遭っても、何のダメージも受けない。そういう人はバリアを発生させて、自分の身を守っていたの。今の私みたいにね。──そう、話は続いた。
「私の名前である万里愛って、バリアに響きが似てるでしょう? そういう家系の娘だからってことで名づけられたみたい。私の家は、能力を活用して、この国を良い方向へ導いていくと決めた。だから暴力団との繋がりは、もう不要なのよ」
お姉さまが私を手招きする。呪縛が解けたように足が動いて、私は万里愛さまに抱き着いていた。
「ここから先は見なくていいわ。部屋の外で待ってて」
「……はい、お姉さま」
「は……ははは! 本物のバケモノって訳だ! 俺は用済みで消される。気を付けろよ、下級生の嬢ちゃん! お前さんも用が済んだら始末されるぜ! 先に、あの世で待ってるからよ!」
振り返らず、部屋から出てドアを閉める。薄暗い廊下があって、室内から声は聞こえなかった。防音が優れているのか、男性が悲鳴をあげることを拒んだのか。さほど時間は掛からず、万里愛さまが部屋から出てきた。
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