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第8話 【ふたり目線】目に入れても 痛くない

父・桐本宗輔

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 小柄なサツキは2,900グラムの元気な女の子を生んだ。
 母子ともに元気である。

 すぐに五月の実家、俺の実家、ついでに姉にもメッセージを送ると、返信は「おめでとう!」の嵐である。
 俺の母親などは、すぐに電話をしてきた。
 「さつきちゃんに『お疲れさま』って伝えて!手が必要なときはいつでも行くからね。あ、でもそちらのお母さまもいるし、でしゃばるのもあれかな。どうしたもんだろう?」だそうだ。

 誰からも温かくてにぎやかなお祝いムードが伝わってきて、たまらない喜びと面映ゆさで、表情筋のコントロールが難しくなっている。

 俺は父親になった。
 小さくて、誰よりもかわいくて愛おしい、あの「さつき」が、俺を父親にしてくれたんだ。

◇◇◇

 その病院は日中だけ母子同室で、五月のベッドの脇に、キャスター付きの新生児用の小さなベッドが置かれていた。

「じゃ、市役所行ってくるよ」
「よろしくー!」
 名前は事前に決めていたので、出生届や保険の手続がすぐできた。

 命名、桐本かおる。俺たちの長女だ。

 新生児はほぼ眠っているが、ときどき目を見開いたときの顔は、俺にそっくりだとよく言われる。やはり顔の印象は目で決まるのだろう。
 俺としては、小さなかわいらしい唇が五月に似ていると思うのだが、「新生児の唇なんて、みんなこんなものでしょう?」と、当の五月にさえ笑われてしまう。

 違うんだ。俺にしか分からない独特の愛らしさがあるんだよ。
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