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第8話 【ふたり目線】目に入れても 痛くない
母兼プレ母・桐本五月
しおりを挟む薫は宗輔さんにそっくりで、賢くてしっかり者だ。
第1子が育てやすいというのは、本当にラッキー以外の何物でもないと思う。
何がいいって、2人目以降の出産や育児にも積極的な気持ちになれるもんね。
彼女が4歳の誕生日を迎える頃、生理が遅れ気味になった。
もしやと思って検査薬を買うと、「大当たり」。
すぐに病院に行き、週数や予定日を確定してもらった。
2人目かあ…。
薫の妊娠のときもだったけど、今回も報告が結構照れくさい。
でも、一刻も早く伝えたい。
「これから帰るよ。今コンビニにいるけど、何か(買っていくもの)ある?」
という趣旨のLINEが来たので、「特にないけど、妊娠したよー」と返したら、思いのほか早く帰ってきた。
手には、たまたま店にあったらしいプチフールの入った袋を提げていたので、薫が「けーき、けーき!おたんじょうび?」と大喜びだった。
これから先、困りごとや大変なこともたくさんあるだろう。
だけど宗輔さんと結婚したおかげで、妊娠や出産みたいな「一大事業」すら自然体で受け入れられるのがうれしい。
私がのんきなので、私の分まで頑張って心配してくれるからね。
ちょっと過保護かなと感じるときは、「先生、うざい!」と声を張ると、しょげながら「…ごめん。でも心配で…」ってぼそっと言う。
8歳も年上なのに、こんなところが本当にかわいい。
ただ、最近は薫までが宗輔さんを「せんせい」と呼ぶことがあるので、名前で呼ぶなり、パパ呼びを促すなりした方がいいようだ。一応のけじめです。
◇◇◇
そうして私たちの長男・誠は予定日より3日遅く生まれた。
もちろん実際に因果関係はないだろうけれど、「3日早く生まれた活発でせっかちな薫」と「3日遅く生まれた、のんびりおっとりの誠」って、そこからして個性が出ているなと思う。
誠は生まれたときからくっきりの二重で黒目の主張が激しいから、私に似ていると言われる。
悪気ゼロの親戚から、「性格といい顔といい、男女逆だったらよかったのにね」と言われたこともあるけれど、2人ともそんじょそこらの子よりずーっとカワイイのに(親の欲目)、何でそんなつまんないこと言うんだろう。
「男の目に鈴を張って、女の目に糸を引いたっていいじゃないですか」と言ったら、きょとんとされてしまった。やっぱり最近はあまりしない言い回しなのかな。
でも、“桐本先生”が、「五月は俺の歴代の教え子の中で最も優秀な生徒ですよ」って言いながら頭をぽんぽんしてくれたので、ま、いろいろどうでもいいや。
【了】
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