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電話口でおやすみ
おやすみボーイ
しおりを挟むある朝、同じクラスの佐久間に、「お前の姉ちゃん、ちょっと変じゃねえ?」と言われた。
いくらぼーっとしていても、家族のことを悪く言われるのはムッとするものだ。大体、姉に会ったこともないくせに。
「何が変なんだ?」
俺の声が少しとがっていたらしく、佐久間は慌てて言い直した。
「いやその、昨日お前んちに7時頃電話して…」
「ああ、そう言ってたな」
「で、お前いなかったから伝言頼んだんだけど、電話切るときさ…」
「切るとき?」
「『せっかく電話くれたのにごめんね。おやすみ』って言ったんだよ」
「は?おやすみ?お前何時に電話したって言ったっけ?」
「だから7時だって。まだお休みじゃねーしって思ってさ」
「ああ…それはちょっと変だな…」
しかし、ぼーっとしている姉がやりそうなことだ。
親の知り合いとかじゃなく、10代男子の声だから、彼氏(生意気なことにいるらしい)とかと同じ感覚で、そんなこと言っちまったのだろう。
「カノジョでもないのに気持ち悪いよな、すまん」
「いや、その…まあ、いいや」
「?」
▽▽
しかし、悪くしたことに、刺激の少ない田舎の中学校じゃ、この程度のことが面白おかしくうわさになったりする。おかげで俺の呼び名はしばらく「おやすみボーイ」になった。
お察しのとおり、「あいつの姉ちゃんは、彼氏でもない男におやすみとか言うおっちょこちょい(あるいは勘違い女?)→おやすみガール(笑)→その弟だからおやすみボーイ」という、実にしょーもない派生だ。
ほんとしょーもねえと思いつつ、新しい話題が出てくるまでの辛抱だと思ってやり過ごしていたのだが、その後また変化があった。
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