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親子教室【終】
しおりを挟む次のミーティングで「4年2組保護者の意見」として出した動物絵付けは、「いいんじゃない?」「へえ、あの店ってこういうことやっているの?」的な反応を得て、親子教室で行われることになった。
当日は、美術学校で勉強の経験もあるという「サラタボウル」のミサトが、幾つかの自分で絵付けしたものをデモンストレーション用に貸してくれた。
色といい模様といい、正統派から個性派までさまざまだが、子供たちのいいヒントになりそうだ。
学年委員を代表し、発案者のアイはみんなの前で挨拶をするように促された。
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「色の塗り方にも模様の入れ方にも
ルールはありません。
どんどんユニークな作品を
作ってください。
【見本を手に取って】こういうオーソドックスなのも
もちろんすてきだと思います。
あ、オーソドックスというのは
昔からあって、誰が見ても分かりやすいもの、みたいな感じですね。
ほかの人と同じように仕上がったとしても、
色の塗り方に個性があったりして、
全く同じものは一つもありません。
その人が作ったというだけで、その人の個性が出ているはずです。
お友達の作品があまりにもユニークで、
笑っちゃうこともあるかもしれませんが、
そのときは笑い合いましょう。
でも、バカにして笑うのはよくありません。
人をバカにしたら自分もバカにされるという覚悟が要ります。
覚えておいてくださいね」
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アイの挨拶は短くシンプルだったが、いろいろな意味で特定の人の心に刺さった。
キリンの人形にシマウマ柄を入れたり、異常に精緻な花柄を描き入れたりする子も、ゾウを水色で塗るかグレーで塗るか茶色で塗るか迷っているような子も、そもそも動物選びの段階で悩んだ子も、小学4年生なりに個性や独創性について考えるが、「その人が作ったというだけで個性」という言葉に、少し気が楽になっていた。
和気あいあいと、時々騒々しく、時々神妙に、限られた時間の間で児童と保護者は個性をいかんなく発揮し、親子教室は成功裏に終わった。
+++
後日、レイコがアイを誘ってランチを食べにいったとき、
「千堂さんの最後の一言、結構ぐさっと来た人いるかもね」
「ふふ。私だってディスられっぱなしではいないわよ♪」
という、少し意味深な会話を交わしたようだ。
【了】
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