初恋ガチ勢 if設定編 こんな出会いもまた一興

あおみなみ

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美人ライターとクールな中学生【千弦と聡二】

千弦のもうひとつの仕事

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 彼を知つてゐるだらうといふ質問は決して見当外れではない。
 どこかで必ず会つてゐていいはずだと自分でもさう思ふ。

 佐藤春夫『新詩社と石川啄木――一つのおぼえ書き』

◇◇◇

 娘の芽久美めぐみが英明大附属中に入学し、間もなく2カ月になろうという頃、義兄が店を訪れた。

 義兄はアスリートやeスポーツのプレーヤーなどを取材した記事を扱うメディアを運営しているので、私とは親戚というより仕事上の結びつきが強い。
 というのも、義兄の奥様――私から見ると2つ年下の義姉は、どうも私にあまりよい感情を持っていないことがうかがわれるので、親戚付き合い的な顔合わせを避けているからだ。
 例えば芽久美が義兄宅のクリスマスパーティーに招かれることがあっても、私は「仕事の都合で」欠席するのがお決まりになっている。
 とてもよくできた奥様だし、芽久美のこともかわいがってくれるようだが、まあ年齢の近い女同士、あるのだ。

 断じて諸悪の根源は「人たらしな義兄」だと、私としては主張したいところなのだが、何しろ人たらしなので、私としても憎めないし、大切なクライアントであることは否定できない。
 義姉にしてみると、たとえ仕事上でも私と接触があるのは愉快ではないのだろうが、そこは目をつぶっていただくしかない。

 義兄は「コーヒーちょうだい」と言いながらカウンター席に着き、まずは出されたコップの水を一口飲むと、私にこう言った。

「今度、千弦にインタビューに行ってほしいんだ。英明大附属の硬式テニス部」
「テニス部?私にスポーツの取材をしろと?」

 普段あれだけ人をスポーツ音痴だの見当違いなことを聞きそうだからインタビューはさせられないだの言っておきながら、どういう風の吹き回しだろう。

「いや、スポーツの取材じゃない。テニス部の副部長と話をしてきてほしいんだ」
「どういうこと?」

 義兄によると、今大会の戦歴とか注目選手とか意気込みやらは、アンケート用紙に回答してもらっても用が足りるし、英明大附属中が強豪校であることを前提に記事を読む人が多いだろうから、周知の話ばかりで終わってしまう可能性も高い。
 そういったものとは一線を画す記事にしたいので、スポーツ記事の巧者というよりは、人の話を聞き慣れている人間に、話者インタビュイーの人となりが分かるようなエピソードを引っ張ってきてほしいというのだ。
 インタビューシートは形だけ用意するが、アドリブで聞いてもかまわないし、何ならテニスのテの字も出てこないようなインタビューでもいいという。

「ま、下手なバイアスをかけずに中3男子の本音を聞く、みたいな感じでさ」

 仕事には変わりないし、そういうことなら引き受けないでもないんだけれど。

「でも何で私に?義兄さんならもっといいライターいっぱい知っているだろうに」
「いやいや、ここは君が最適なんだって」

「どうして?」
「まず、家が英明から超近いから交通費が省ける」
「そこかっ」
「それに相手は男子中学生だ。美人が行った方がしゃべってくれるかなーと」
「ちょっと、バカにしてんの?」
「心外だなあ。君の手腕を見込んだ上で美人だと褒めているんだよ。武器は多い方がいいだろう?」

 まあ初対面で呼ばわりされた頃からすれば、大分進歩ではある。
 日程的にも何とかなりそうだし、引き受けることにした。
 娘が通っている学校に、そういう形でアクセスするというのにも興味がある。

「分かったわ。私でお役に立つなら」

 副部長は檜聡二君という3年生の男子とのこと。

「かなり読書家の文学好きらしいから、そういう話から攻めてもいいかもね。頼りにしてるよ、短大国文科卒」

 四大社会学部卒の義兄は、からかい口調で言った。
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