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美人ライターとクールな中学生【千弦と聡二】
聡二は動じない
しおりを挟む他校テニス部の連中から勘違いされているであろうことの1つに、「うちの部には顧問がいない」というのがあると思う。
確かに部長の高田礼一郎は、中3とは信じがたい威厳のある男で、下級生を指導する姿は鬼コーチそのものだし、細々した事務作業などは、俺が生真面目な金澤の手もかりながらこなしている。だからいわゆる管理者としての顧問は、いたとしても有名無実なのだ。
当テニス部の場合、八鍬という教師がその任に当たってくださっている。
俺たち3年生には、数学担当としておなじみの、いかにも優しそうなおじさん先生だ。
◇◇◇
とある昼休み、その八鍬先生が珍しく教室まで俺を訪ねてきた。
「檜君はさ、『Dramatic Sports』ってWebサイト知ってる?」
「はい。対象が割と広範囲で面白いサイトですよね」
通称ドラスポ。その名のとおりスポーツがメインではあるのだが、eスポーツ、囲碁将棋、百人一首の名人・クイーン、クイズプレーヤー、変わったところでは投扇興など、何らかの競技で競う人をみんな「アスリート」と呼び、積極的に紹介している。
「そこから取材の申し込みがあったんだけど、インタビューに来るライターが、テニスを全く知らない人らしくてね」
「え?それでどうやって取材をするつもりなんですか?」
「まあ、テニスのこと何も知らない僕が顧問やってんのと変わんないよ。檜君自身がキャラを前面に出したり、ほかの部員について話してくれたりすればいいらしい」
「取材というから、てっきり関東大会優勝絡みかと思いましたが…」
「そういうのはほかにも受けたじゃない?全国への意気込みとかさ。だから「そうじゃない」のがいいんじゃないかな?差別化ってやつ?」
「はあ…」
ひょっとして、お涙ちょうだいみたいな美談系でも欲しがっているのか?
そう考えたら、“Dramatic”という名前まであやしく見えてきた。
しかし残念ながら、思い当たる節はないし、あっても提供する気はない。
もしそれで記事が盛り上がらないとしても、ライターの手腕の問題だ。
俺は最低限失礼のないように、無難に答えておこうと考えた。
◇◇◇
当日、八鍬先生が押さえた北校舎2階の一番東端、「相談室B」で待っていると、5分ほどでライターさんが来た。
「初めまして。『Dramatic Sports』の方から来ました、桜井千弦と申します」
年齢は多分俺より10歳かもう少し上。若く見えるが、明朗さの中にも落ち着いた雰囲気のある感じのいい人だ。
俺のような子供にも、背筋をすっと伸ばし、美しい所作で名刺を渡してくれる。
時間はマックスで1時間ほど取られているが、話が尽きたら切り上げて練習に戻ろうと思っていた。美人と適当に話をして2、30分過ごすのも悪くない。悪いが俺は、相当になめてかかっていた。
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